皆さま、こんにちは。
ギターリペア工房の本田です。
今回はWeb担当のサトウがお送りしている連載記事「Web担当も自分の楽器をリペアに出してみた」の第2弾、修理レポート編になります。
前回のレポートは、ストラップ落ちしたギターをお店に持ち込み、後日見積連絡を受けたサトウが修理を正式に依頼するところまででしたね。
果たしてあのギターはどう生まれ変わったのか!?
一部始終をお見せしたいと思います。
まずは「修理品到着〜見積作成」
じらすようで申し訳ないのですが、時計の針を少し戻して、ギターが工房に届いたところからお話をはじめたいと思います。
都内某所。ギターリペア工房には、毎日たくさんの楽器が届きます。
もちろん全国の島村楽器店頭でお預かりした修理品です。
ある日の修理品の中にサトウのギターはありました。
届いた楽器は、まず受付店舗やお客様のお名前、依頼内容などの基本情報を管理台帳に記録し、担当するリペアスタッフを決めます。
ギターリペア工房では、基本的に分業は行いません。
見積作成〜修理作業、梱包発送に至るまで全て同じスタッフが責任を持って対応しています!
さて、サトウのギターは誰が修理するのか?
実はサトウとはリペア総合案内サイトの立ち上げ時に一緒に仕事をした仲。
そういった縁もあり、工房長の阿部から指令を受けて私が修理を担当する事になりました。
さあ見積作成!といきたいところですが…
その前に、とても重要なステップがあります。
モデル名やシリアルナンバー、付属品の有無、傷が付いている場所、欠品しているパーツ、ネックの状態、弦高・・・・などなど。
まずは依頼品について事細かに記録をとります。
リペアという仕事において、最初に受け取った時の状態を、後々もきちんとわかるようにしておく事は非常に大切な作業なんです。
ようやく見積スタート!
お待たせしました!ここでようやく見積作成開始です。
実際にギターを弾きながら・・数値を測ったり・・・時には分解し・・・
想定される修理工程をもとに工賃を算出、パーツもセレクトしていきます。
これは内部の状況を確認する為、ジャックプレートを外したところ。
上のほうに塗装の欠けた箇所がありますが、今回は修理希望ナシとお店で確認しているので、見積には含めません。
他の箇所もどんどんチェックを進めていきます。
そんな中、フレット周りをチェック中、左手に違和感が・・・
浮いてる!
一部の指板インレイで、接着が剥がれてプカプカ浮いている状態でした。
依頼内容にはありませんでしたが、今回ここの修理も見積に加えておきます。
このように、依頼された内容だけでなく、楽器全体の状態をチェックして、修理が必要な箇所があれば、ご提案していきます。
見積内容をお店へ連絡
最後にパソコンに向かい、見積書を作成し、受付店舗へメールで連絡します。
14時2分、送信!
その後・・・
翌日、早速お店から返信がありました!
お客様(サトウ)に確認したところ、私が提案した内容どおりで修理を進めて欲しいとの事。
今回は一部パーツの取り寄せが必要でしたので、すぐに発注。入荷次第の作業開始となります。
と、ここまででようやく前回のレポートに追いつきました。
一言で見積連絡と言っても、実際に裏ではこんなことをやっていたんです。双方の視点でみるとおもしろいですね。
いざ、修理作業へ!
さて、後日パーツも入荷したところでここから本題の修理作業レポートに入ります!
一気にいきますよ〜
まずは「ジャック交換」
落下によってかわいそうな状態に。
プレート及び半田付けによってジャック本体を交換します。
プレートは取り寄せたオリジナル品を、ジャックは定番高信頼性のスイッチクラフト#11をセレクト。
陥没のないきれいな状態へ蘇りました。
続いては「エスカッション交換」
こちらも見事に割れています。
前回の記事で「工房ではエスカッション自体をギターに合わせて削りだしをする」という話がありました。
確かにその通りなのですが、実は今回はほとんど削らずに取付をしています。
エスカッションは意外と奥が深くて、例えば同じアーチ付き商品でも各メーカーから様々なサイズの商品が販売されています。
たくさんのエスカッションの山、これらは全部違う商品なんです。
今回は見積作成の時点で、ほとんど加工がいらないものをセレクトしていました。
修理工賃とは基本的に手間賃なので、加工が大変になればなるほどどうしても高くなってしまいます。
実際に作業を行う技術力はもちろん大事ですが、それ以前に楽器、お客様にとってベストな作業アプローチ、最適なパーツをセレクトするという部分もリペアマンの腕の見せ所です。
(例えるなら、タクシーも最短ルートを安全運転で乗りたくないですか?)
というわけで、早速セレクトしたパーツを取り付けたのがこちら。
もう1つのエスカッションも交換完了。
どちらもぴったりとボディのアーチに沿ってハマっているのがわかりますね。
お次は「ストラップピン交換」
二度と落下させない為に、こちらのストラップピンをロックピンに交換します。
右がオリジナルのストラップピン、左が今回取り付けるヘネシーのロックピンです。
ネジの径が同じで、長さも少し長くなる為、今回はボディへの加工は行わずにそのまま交換しました。
パーツによっては一旦穴を埋めたり、逆に拡張加工が必要な場合もあります。
そして、提案した「インレイ浮き」の修正
まだ軽症なので、押さえながら粘度の低い接着剤を流し込んで固定していきます。
放置すると完全に外れて、最悪の場合紛失してします事もありますので、病気と同様、早期発見、早期治療が大事です。
ばっちり修正できました。
最後に「全体調整」で仕上げへ!
さてさてパーツ関連の作業を終えたところで、最後に調整作業に入ります。
そもそも「全体調整」とは何をするのか?という疑問については、名古屋ギター&リペア店の長谷川が以下の記事でお答えしていますので、ぜひ読んでみてください。
まずはクリーニング作業
調整に入る前に、まずブリッジの下やノブの下、ヘッドなど、普段弦が張ってある状態ではクリーニングしにくいところをまずは重点的にクリーニングします。
ちなみに先程エスカッションを交換した時も、ちゃんとピックアップの側面やザグリの中などをクリーニングしました。
フレットもきれいに。今回はスチールウールで磨いていきます。
右2本が磨いたフレット、光沢がでました。
実際に弦を張って調整へ
いよいよ作業も大詰め!弦を張った状態で調整を進めていきます。
トラスロッド調整や弦高調整なら自分でできるよ〜という方もいらっしゃると思いますが、リペアマンの行う調整なので、当然それだけではありません。
ナット溝やサドル溝の切り直しで微妙な弦高バランスや、音の響きを整えたり、細かい部分もしっかりセットアップしていきます。
最後に全体のチェックを行って、ついに完成!!!
指紋など綺麗にふき取って、しっかり梱包。ちゃんと外したパーツも同梱します。
受付店舗へ発送!!
これでギターリペア工房での修理は完了となります。
今回の修理内容
合計金額*1 | ¥13,313(税抜)+送料 |
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到着〜修理〜発送と、最初から最後までお伝えした修理レポート、いかがでしたか?
ギターリペア工房のリペアマンは日々こうしてリペア業務にあたっています。
みなさんと直接お会いする機会はなかなかありませんが、全国各地の島村楽器を通して楽器をお預かりできますので、何か困ったことがあったらぜひお近くのお店で相談してみてくださいね。
次回は「店頭でのリペア品受取レポート」
次はいよいよ最終回、サトウの元にリペアを終えたギターが戻ります。
どんな反応をするんでしょうか。お楽しみに!
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この記事を書いた人
*1:修理費用は同じ症例でも楽器の種類や形状・仕様によって異なる場合があります。