島村楽器公式ブログ

全国展開している総合楽器店のスタッフが、音楽や楽器の楽しさや、楽器店にまつわるお話をお伝えします。

2015年春 弦楽器ヨーロッパ買い付け日記 3月9日号 その1

「真実はワインの中にある。」

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いいえ、ワインではなくバイオリンの中を見ましょう・・・、マイスター(笑)


皆様Buon giorno!
島村楽器福岡クラシック店:楽器アドバイザーの間藤です。

突然ですが、ブログ原稿作成以外にも様々な脅威に追われている糸山編集長にかわりまして(笑)、本号は編集長指導のもと、間藤がご案内致します。
買い付けチームはフランス・パリ、ベルギー・ブリュッセルから1日の移動日を挟みまして、次なる目的地イタリア・モデナへと到着しました!
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モデナ駅から街の中心へと徒歩で移動します。

モデナはエミリア=ロマーニャ州の中部に位置する都市で、街の郊外にあのフェラーリの本社があることでも有名です。

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街の中心、世界遺産「モデナ大聖堂」とランドマークとなっている鐘楼「ギルランディーナ」。

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ピアッツァは人々の憩いの場でもあります。

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黄色とオレンジ色の壁面の家屋が可愛らしい町並みには、石畳が延々と続く。

我々は、ここモデナを拠点に楽器製作を行なっている、1人の天才メーカーに会いにやって参りました。
それではご紹介します。マエストロ・マルチェロ・ベッレイ氏です!

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ベッレイ氏の工房入り口にて、ご本人の登場です。

昨年、島村楽器三田バイオリン専門店・新宿PePe店・グランフロント大阪店にて来日イベントを行ないましたので、お馴染みのお客様も多いかと存じます。
この旅では、異彩を放つ飛びぬけた楽器を作り出す彼のルーツを探りに、ありのー♪ままのー♪ベッレイ氏をお届け致します(笑)

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ベッレイ氏が下積み時代を過ごした、モデナのLorenzo Frignani氏の元アトリエ跡にて。上の小窓の部分にポツンと居たのだとか。

モデルのようなルックスに、スマートなプロポーション。生粋のモデナっ子ながら、爽やかな彼は誰が見ても惚れ惚れします。通りを一緒に歩いていると、老若男女問わず様々な人から「Ciao Marcello!」と声をかけられては挨拶話が行なわれ、街全体がまるで彼の家族のようでした。

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駆け出し時代20歳の頃の写真を発見したので公開しちゃいます(笑)

ベッレイ氏は、祖父が家具職人だったことで木工製作に興味を持ち、バイオリン職人の道を夢見ますがご両親に大反対され、一度は建物の測量士として就職したそうです。しかし、彼の夢は諦め切れず僅か6ヶ月で退職。パルマにあるバイオリン製作学校の門をくぐり、パルマ派の巨匠Renato Scrollavezza(レナート・スクロラベッツァ)氏のもとでバイオリン製作を学びました。

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ベッレイ氏のアトリエにはセンスの良い絵画が沢山飾られていました。

今では信じられない話ですが、初めて製作したバイオリンをスクロラベッツァ氏が見て『こんな酷い作品を私は今だかつて見たことがないっ!』とかなり手厳しく酷評されたそうです・・・。傷ついたベッレイ氏は、記念すべき処女作を木っ端微塵に粉砕してしまったそうです(笑)

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パソコン専用のデスク。世界各国から彼の元にオーダーが入ってくる。

卒業後、モデナのバイオリン&クラシックギター製作家・研究家・鑑定家であるLorenzo Frignani(ロレンツォ・フリニャーニ)氏の工房で働き始めました。当時フリニャーニ氏の元には900挺ものモダンイタリアンバイオリンが収集されており、それに従ってベッレイ氏も優秀なイタリアンメーカーの作品を研究する機会に幸運にも恵まれました。

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使えなくなった表板はこのようにして壁掛けオブジェに。お店の飾り付けの参考にさせて頂きます!

数年間の研究の末、ベッレイ氏は故郷のモダンイタリー名器Ansaldo Poggi(アンサルド・ポッジ)にアプローチしようと決心し、モダン・ボロネーゼの主要な二人のメーカー(ポラストリ&ポッジ)の研究を続け、Raffaele Fiolini(ラファエレ・フィオリーニ)が再興したボローニャ・スクールの起源を辿ることを決心しました。

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壁にかけられたベッレイ氏のモルド。内枠方式と外枠方式の両方で製作できる技術を持つ。

また、ジェノバのAlberto Giordano(アルバート・ジョルダーノ)氏の工房で数ヶ月働く機会にも恵まれ、そこでは前述のイタリアンメーカーとは違った楽器を、主にPaolo de Barbieri、Giuseppe LecchiやEugenio Pragaなど(いずれもジェノバのモダン・イタリーヴァイオリン)、リグーリア州(州都:ジェノバ)の製作家を中心に、それまでとは異なった観点で研究を行っていたそうです。
(リグーリア州では、ほとんどの製作家がガルネリモデルを製作していたそうです。パガニーニが使用していたGuarneri del Gesuの名器「Cannon」が、ジェノバ市議会が管理・所持していることにも関係があるかもしれませんね!)

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バルカン半島で採れた30年物の材料を保管している。

その後、ベッレイ氏は2001年よりコンクールで受賞を幾度と重ね、その作風は世界に驚きを持って迎えられました。

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2001年 第8回バヴェーノ楽器製作コンクール(イタリア)ヴァイオリン部門第2位と最優秀音響特別賞を受賞。

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2011年 第5回ピゾーニェ楽器製作コンクール(イタリア)プロ部門 チェロ部門第1位、
ヴィオラ部門第1位と特別賞を受賞。

偉大な先人達へのリスペクトをベースに、自身のオリジナリティを融合させた驚異的な作品を生み出しています。
次号では、気になるベッレイ氏の製作中の様子と、郷土モデナで入手した極上のモダンイタリー作品をご紹介致します!

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ベッレイ氏のワークベンチに並べられた4枚の木材。

それでは、今回はこの辺で。
Ciao!

今回買い付けた楽器は、楽器フェスタでお披露目します

今回マイスター茂木と糸山が買い付けを行った楽器は、5月〜7月各地(新宿・横浜みなとみらい・大阪・福岡・船橋・仙台泉・札幌・レイクタウン・広島)の島村楽器で開催される、島村楽器楽器フェスタにて展示・お試しいただくことが出来ます。
楽器フェスタページもあわせてご覧ください。

2015年春 楽器ヨーロッパ買い付け日記はこちら








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