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ピンクフロイド「狂気」EMS VCS3 & Synthi AKS シンセサイザー温故知新 #004

こんにちは担当サカウエです。シンセサイザー温故知新4回目。
moog、Arpとくれば、お次はプロフェット・・ではなく、なぜかEMSのVCS3とSynthi AKSです。
だんだんシンセが好きでもついてこれない方もいらっしゃる場合は申し訳ありません(笑)。

今回のお題:「On The Run」(走り回って)/ Pink Floyd

  • アルバム: The Dark Side Of The Moon (邦題:狂気)
  • シンセ:EMS(Electronic Music Studios) VCS3 & Synthi AKS

The Dark Side of the Moon

The Dark Side of the Moon


お題のアルバムは、ピンクフロイドの歴史的名盤「The Dark Side Of The Moon」(1973)から「On The Run」。

本アルバムで使用されているシンセは、クレジットではEMS社のVCS3となっているのですが、
この曲のメイン・シーケンスは、VCS3のシーケンサー内蔵後継機種「EMS Synthi AKS」を使用していたようです(VCS3も後からダビングで使用したらしいですが)
なお、EMS(Electronic Music Studios)社は今でも現役バリバリのイギリスの企業で、ビンテージ・シンセもまだ買えるみたいですね・・

A面の3曲目に当たるこの曲は、オープニングから次の「Time」へのインタールード的な曲です。

Pink Floyd - On The Run

曲は8ステップのシーケンスを延々繰り返し、フィルター、レゾナンスのツマミををグリグリ回し、LFOモジュレーションをかけたりしているようです。
これにホワイトノイズによるハイハット風のサウンド、ギターやシンセ(VCS3)、テープエフェクト等が加えられているようですが、なんとも言えない緊張感が漂う曲でございます。


こちらはVCS3

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/02/EMS_VCS_3.jpg
(Photo by wikipedia

こっちは シーケンサーとフィルム状キーボード付きのSynthi AKS

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/a9/EMS_Synthi_AKS_%28opened%29.jpg
(Photo by wikipedia

VCS3とSynthi AKSの外観の特徴としては、美しいルックス、そしてマトリックス・ボードではないでしょうか。
このマトリックス・ボードは、横軸(入力)と縦軸(出力)の交点にピンを挿すことによって、VCO、VCF等のモジュールを自由に接続し、音色を作成する仕組みになっています。
そーいえば昔こういう感じのゲームありましたね(古)

8ステップのシーケンス・サウンドを打ち込み

さて、今回はこの8ステップのシーケンス・サウンドに挑戦してみました。
なお原曲では途中で音程が変化して聞こえる箇所がありますが、これはフィルターの発振音によるもので、シーケンス・フレーズ自体は全く変化していないと思われます。

英語版wikipediaでは下記メイキング動画のリンクとともに「C3, C2, E♭2, G2, F2, E♭2, F2, B♭2」という記載があります。

これがメイキング・・というか回想ですけど(デヴィッド・ギルモアが触っているのがSynthi AKS)

David Gilmour - Dark Side of the Moon on the run Synthi A

この音列(シーケンス)ですが、動画では確かにwikipedia記載のとおりですが、あくまで「こんな感じだったんだよ」という回想の様ですね。
原曲とは明らかに異なるシーケンスです(本人も記憶は曖昧だろうし)。あと細かくて恐縮ですが実際に鳴っている音は長三度上です・・・

原曲を耳コピしてみたら「E-G-A-G-D-C-D-E」という感じに聞こえましたので、今回はこのシーケンスを打ち込んで行って見ることにしました。

あいにくVCS3はたまたま手元に無かったので(ウソ)、使用したシンセはRob Papenの「BLUE」。
RopPapenプラグイン専用のスタンドアロンプレイヤー「RP-Dock」で立ち上げています。

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BLUEにはステップシーケンサーが内蔵されていますので、本物と同じく8ステップのシーケンスを作成し、オシレーターを2種使用しました。
ホワイトノイズでハイハット、スクエア波でシーケンスフレーズを演奏させています。

Pink Floyd " On The Run " by Rob Papen " BLUE"

フィルターとレゾナンスは、MIDIキーボード側のモジュレーションでもコントロールしております。

・・・非常に良い感じですが、でも少々フィルターの感じが実機とは違い「今風」ですね。そりゃあたりまえか・・・

ということでVCS3のエミュレーション・ソフトシンセを探していたら、なんとドイツの音楽雑誌社「Beat Magazin」がキャンペーンでXils Labの「Xlis 3」というソフトシンセを無料公開しておりました。
さっそくダウンロードして試して見ることに。

Xlis 3にはシーケンサーはついていないようなので、DP8で2台のXlis 3を立ち上げ、シーケンスとハイハットパートを打ち込んで鳴らしてみました。
DAWはDP8です。

おー、さすがの雰囲気、良いですね〜・・これ無料ってちょっと気前良すぎ。
マトリックス・ボードもしっかり再現されてるしこれハマります^^;

おわりに

というわけで、今回は少々マニアック路線でお届けして参りましたが、「The Dark Side Of The Moon」に関しては、ロック史上、いや人類史上、特筆すべき名盤中の名盤でございますので、コンセプト、音楽性、等々についてはワタクシは何も申しません・・いや申し上げられません。

もし万が一聴いたことがないという方は、ぜひこの機会にお聞きいただきたく存じます。

ところでアルバム後半「Any Colour You Like」のエコー処理(実際はアナログテープのループ)されたシンセソロは何度聴いても素晴らしいですね・・
このトラック作るのには相当手間かかっていると思います。
他にもテープ切り貼りで作ったコラージュとか、「Money」の「チーンジャラジャラ」ループとか、サンプラーなんて無い時代によくまあここまで作りこんだものです。

それではまた次回お会いしましょう

これ半音低いですけど・・

Pink Floyd - Any Colour You Like

※前曲の「Us and Them」からこの「Any Colour You Like」に切り替わる瞬間(CからDm)が、ワタクシはこのアルバムで一番好きな箇所です。

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