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ライル・メイズのパイプ・リード Oberheim 8 Voice シンセサイザー温故知新 #005


(photo by wikipedia

こんにちは、サカウエです。
今回のシンセサイザー温故知新は、ウォームでナチュラルなパット・メセニー・サウンドを彩るライル・メイズの笛系シンセ・リードを取り上げることにします。

ファースト・サークル

ファースト・サークル

CDタイトル:ファースト・サークル/First Circle
アーティスト:パット・メセニー・グループ(以降PMG)
発表:1984
アルバムで使用されたシンセサイザー:オーバーハイム8ヴォイス、シンクラビアなど

アルバムについて

へたくそハイスクール・ブラスバンドをシンクラビア・ギター(※)で再現するという一曲目の「Forward March」(これは半分冗談だったのでしょうか?)。この曲だけ聴いてCD買うのをためらい後悔した人をたくさんしっています・・・それほど名曲ぞろいの歴史的アルバムです。

シンクラビアによるシーケンス・フレーズ、ギター・シンセ(Roland GR-300)等々、当時最先端のテクノロジーが作曲のアプローチに及ぼした影響も大きいと思いますアルゼンチンのスーパースター、ペドロ・アズナールはこのアルバムから参加し、メロディーラインを歌詞無しで歌う「ヴォイス」を多用するスタイルは以後PMGサウンドの定番ともなりました(それ以前もナナ・ヴァスコンセロスが歌ってたりもしておりましたが)。

※シンクラビア
New England Digital社が1970年代後半から販売したデジタル・ワークステーション。FM合成、最大100KHzのサンプルレイト、(当時としては)巨大なストレージデバイス等々、まさに究極のシステムだったが価格も( 数千万)と究極のマシン。

参考動画

10分あたりからパットの打ち込みも見れます。

Roland GR-300

さて今回はこのパット・メセニー・グループのシグネチャー・サウンド、アルバムのタイトル曲の主旋を奏でるライル・メイズの笛系音色に挑戦してみます。

First Circleの楽曲構造については下記記事をご参照ください。

音色について

さてこの音色は元々オバーハイム8(あるいは4)ヴォイスと思われますが(さすがに重たいしメンテも大変でしょうから)90年代あたりはローランドのSuperJX(JX-10)に差し替わり、その後も色々なシンセに変遷はあったようです。とてもナチュラルで温かい音色ですね。

(photo by wikipedia

その名前の通り4ボイスだと4音まで同時に和音を鳴らすことができるわけです。上の写真では4つのモジュールで構成されているのがお分かりいただけると思います。

ところでワタクシ1992年頃の大昔、キー◯ード・マ◯ジンのインタビュー仕事でライル・メイズご本人様にお会いする・・という貴重な経験をさせていただいたのですが、その際、このシグネチャーサウンドについて尋ねると

「小学校の音楽の時間、子供たち全員がリコーダーで同じメロディーを吹くときって、必ず何人かは音程の合わない子がいて面白い感じになるでしょ?この音色はそれをイメージしたんだよ。」とのこと(口調はあくまでそんな感じだったということで・・)

1995年のライブ2'22あたりから


ちなみにライル大先生はワタクシが勝手に思いこんでいたイメージとは違って、すごく陽気な方でして、
「”Are You Going with Me?”のチャンチャンとかいう単純フレーズなんて、あんなの退屈で弾いてられないだろう?だから機械(シンクラビア)に任せときゃいいんだよ〜わっはっは」・・・みたいなノリでした・・・

Camel(煙草の銘柄)吸いながら「コレは悪い癖ってのはわかってるんだけど・・ついつい・・でもやめたいんだけどね〜」とおっしゃっておりましたが、はたしてその後、禁煙は成功したのでしょうか?

この曲でもオバーハイムは大活躍。良い曲だなあ〜 
It’s For You — As Falls Wichita So Falls Wichita Falls

ローランドINTEGRA-7で再現

というわけでシンセで再現する場合は「ヘタクソな子」をかならず入れるというのがポイントになります。必ず2つ以上のオシレーター(INTEGRA-7はPCM音源のためパーシャルという名称)を使用し、一方のオシレーターにピッチEGをかけて音痴にする。基本はこれだけなのですが、非常にナチュラルなサウンドとなるから不思議。

今回はGR-300とかSuperJX等が話に出てきたこともあるので、ローランドのフラッグシップ音源「INTEGRA-7」を使用してみました。最近Mac版のエディターがリリースされましたがコレ非常に重宝しております。

実はプリセットには「OB Lead」というまさにクリソツ音色が内蔵されているのですが、これはPCM波形(Oberheimのサンプリング)を使用しているので、似ているのは当たり前・・というわけであえてイニシャライズ(初期化)してSuperNATURALのシンセオシレーターで作成してみました。

セッティングはシンプル。パーシャル(オシレーター)1、2はともに矩形波、ピッチEGで音程をしゃくりあげるセッティングです。少々デチューンをかけ、ローパスフィルターでハイをカットし丸みを帯びたサウンドにし。最後にモジュレーションディレイと浅いリバーブで完成。

コレはINTEGRA-7 Editor for Macで見たパーシャル1のセッティング

こちらはパーシャル2


サウンド

演奏するときは装飾音を多用してアコーディオン、ピアニカ風に弾くと雰囲気出ると思います。

というわけでまた次回

TEDxCaltech – Lyle Mays and Friends 13:20〜のBefore You go カコイイですね。

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