島村楽器公式ブログ

全国展開している総合楽器店のスタッフが、音楽や楽器の楽しさや、楽器店にまつわるお話をお伝えします。

Propaganda(プロパガンダ)の「PPG Wave」 シンセサイザー温故知新 #006

こんにちは、担当のサカウエです。

シンセの名演をたずね新しきを知る「シンセサイザー温故知新」、第6回目です。
今回は4人組のシンセポップ、ニューウェーブバンド、”Propaganda”でフィーチャーされている、「PPG Wave」というシンセサイザーについてご紹介します。

Propaganda / A SECRET WISH

A Secret Wish-25th Anniversary

A Secret Wish-25th Anniversary

ドイツの男2女2の4人組ニューウェーブバンド” Propaganda “(プロパガンダ)は、
一般的にはシンセポップ、ニューウェーブにカテゴライズされるようですが、
自分は勝手にプログレだと思っております。

1985年にZTTレーベルより発表されたアルバム「A SECRET WISH」は、
Propagandaのデビュー作。
当時はとにかく「音が凄い」と(一部で)評判になりました。
シンセを中心とした最先端のサウンド、
おどろおどろしい雰囲気の中にかいま見えるポップセンス、
クラシック的素養の溢れる楽曲・・・今聞いてもしびれます・・

トレヴァー・ホーン(元バグルス、イエス、アート・オブ・ノイズ)、
デヴィッド・シルヴィアン、ポリスのスチュアート・コープランド(Dr)や
イエスのスティーヴ・ハウ(Gt)らがちらっと「参加」しています。

“ Duel “(track4)、” p:Machinery “(track6)は日本車のCMや、TV番組でも使われていましたので、ご存知の方もいらっしゃると思います。

なお”Duel”ではスチュアート・コープランドのドラムフレーズをサンプリングし、素片として再構築しているということですが、スネアの音はめちゃくちゃ良いですね。


” p:Machinery ” 1:15~のブラス・フレーズのところがCMで使われておりました。
・・・ライブはもちろん「当て振り」です。

「PPG Wave」

さて本アルバムでフィーチャーされているのが「PPG Wave 2.3」(ピーピージー・ウェイヴ・ツーポイントスリー)というシンセです。
PPG(Palm Productions GmbH)はWolfgang Palm氏が創立した、「WALDORF」(ウォルドルフ)の前身ともいえる企業(GmbH=有限会社)です。


この「PPG Wave」は同氏が開発した、
世界初のデジタル方式のウェーブテーブル・シンセサイザー

(Photo by wikipedia

私は数回ほど触った程度しかないのですが、
オシレーターはウェーブテーブル(サンプリング波形のこと)方式、VCF(フィルター)とVCA(アンプ)はアナログ・・というハイブリッド・サウンドが特徴です(8音ポリフォニック)。

「Wave 2.2」は2,000種類のウェーブフォーム(8ビット)のオシレーターを搭載、「Wave 2.3」から12ビット、MIDI対応、マルチティンバーになりました。

1985年の国内価格ですが、Wave2.2は198万円、2.3は250万円・・車の値段です。

PPGのサンプリング・レコーディング・システム「WAVE TERM」(348万)と組み合わせることで、Fairlight CMI( フェアライトCMI*1=1200万円)っぽいことができたと言われております・・・

シンセで音楽やるのは金かかったんですね・・まあ昔の話ですが・・

プラグインソフト

「PPG WAVE」をエミュレーションしたプラグインでは、
waldorf社の「WALDORF PPG Wave 3.V」が発売されております。

1985年当時600万円くらいのシステムが、
現在ではパソコン込みで100分の1の値段で買えるわけですね。

INTEGRA-7で打ち込み

今回はRoland音源モジュールINTEGRA-7」を使用して
アルバム1曲目の「Dream within A Dream」をサクッと打ち込んでみました。
(耳コピ&制作時間30分)

こちら原曲

パート構成としては、

  • ドラム
  • シェーカー
  • コンガ
  • ベース
  • ギター
  • マリンバ
  • トランペット
  • シンセストリングス1 (Hi)
  • シンセストリングス2 (Mid)
    • アルペジオのシーケンスパートは面倒なので省略

以上の9パートです。

「Dream within A Dream」はエドガー・アラン・ポーの詩を引用した
ポエトリーリーディング。

All that we see or seem Is but a dream within a dream.

「この世は夢のまた夢・・」みたいな詩の通り、耽美的で神秘的な楽曲です・・・
インセプション思い出しました。

この曲は8分間ベースはずーっと「C」で、
和声部はFsus4、F#(b5)、F#(#5)、Fm、EbM7、Dm7、Dsus4といった
変なコードが使われていますが、非常にスリリングな展開で惹きこまれますね。

同じ音をルート保持するこうした手法をベダル・ポイント*2と呼びますが、
オープニングがいきなりこの曲というのは
「ポップバンド」としてはかなりの冒険ではなかったかと思います。
トランペットはサンプラーではなく生。(by Allen L. Kirkendale)

コードは2種類のシンセパッドで演奏されていると思われますが、
非常に重厚なハーモニーを奏でております。
今回はオクターブレイヤーされたキラキラ系のシンセ・ストリングスを高音部に、
中域にはモワっとしたパッド系サウンドを配置してみました。

ところで本作ではやはりFairlight CMIは使用されていたのでしょうか?
・・・クレジットには無いのですが・・諸説あるのでどなたかご教示いただければ幸いです。


関連商品は島村楽器各店、島村楽器オンラインストアで購入できます。

シンセサイザー温故知新」の最新号は「Digiland」でチェック!

島村楽器株式会社のデジタルガジェット情報配信サイト「Digiland」
「Digiland」は島村楽器株式会社のデジタルガジェット情報配信サイトです。

デジタル関連商品、DTM、MIDI、シンセサイザー、レコーディング等に関する最新ニュース、役に立つ情報等を随時お伝えいたします。
島村楽器の専門スタッフが、新製品、各種イベント、コラム等、日々更新してまいります。

*1:サンプラー&ワークステーションの元祖、「ジャン」というオケヒットで有名

*2:バロック音楽等で行われる「通奏低音」は、低音の旋律に伴奏をつける演奏形態のこと。ペダル・ポイントとは違います。

© Shimamura Music All rights reserved.