皆さん、こんにちは。開発担当フジモトです。
今回は、日頃より多岐に渡りお世話になっているギタリスト「洪 栄龍」氏にお願いし、エージングのなんたるかを紹介していただこうと思います。
洪さんとはかれこれ長いお付き合いになりますが、音楽に対する情熱とギターへの愛は、衰えることを知らず年々深まっているようにさえ感じる、いわば「音楽の鉄人」のような人です。
全国の島村楽器におけるギターセミナーやバンドクリニックの講師~録れ録れコンテストとHOTLINEの審査員まで、、、島村楽器のイベントにおいて欠かせないギタリストの一人です。
それではさっそく洪さんにバトンタッチして、今回のお題であるギターのエージングについて伝授していただこうと思います。
ギタリスト【洪栄龍(こう えいりゅう)】プロフィール
1947 年東京生まれ。1971 年に伝説のロックバンド「乱魔 堂」を結成。日本語のロックを啓示したこのバンドにより一 躍オーバーグランドに。1972 年アルバム「乱魔堂」、1975 年ソロアルバム「目覚まし時計」を発表。その後サポートプ レーヤーとして数多くのアーティストのバッキングに参加、 1994 年創作活動を再開。アイデンティティの模索が新しい 音楽の創造と結びつき、1997 年「天地洪荒」、2000 年「大 河滔々」でインストのソロアルバムを発表し、2009 年 3 月 には「IN MY LIFE」というタイトルで久々の歌曲入りの ソロアルバムが発売される。2009 年 7 月にはインストアル バム「IN MY LIFE Instrumental」発売。
第1回目のテーマは
皆さんこんにちは、そしてはじめまして洪栄龍です。
僕がプロデビューをしてから、早40年が過ぎました。
その間、音楽作品を発表する傍ら音楽(ギター)に関係する様々なイベントやセミナーを行ってきました。
その中でも、一番気になったのが、参加者の方々のギターの状態です。
セミナーでは、参加される方に実際に弾いてもらうことが多いのですが、、、
ある時
「何かヘンだな?」
「ちょっとギター見せて」
・・・かわいそうな事に、ネックがハンパなく反り返っているではありませんか!
こうしたことは、ギターに限らず、ベースでも当然あります。バンドクリニックでも、電気系統のトラブルを抱えているギターやエフェクターをお持ちの方も少なくありません。
・・・というわけで、記念すべき第1回目の今回は「ギターのエージング」にテーマをあててお送りしたいと思います。
エージングは修理ではなく、ギターをいわゆる「鳴る」状態にして、それを保つことに主眼を置いています。上記のようなネックの反りなどの症状はメンテナンスまたは修理が必要です。
エージングとは?
まず、エージングとはナンナノカ?について・・・洪の語り、動画にてご覧ください。
それでは実際にエージングをしていきましょう。
ちなみに、私がいつも常備しているメンテナンスキットはこんな感じです。もちろんその時々で中身は移り変わっていますが・・・。
また、エージングに入る前に、今回エージングをするアコースティックギター”James:Eternal Series”のエージング前のデモサウンドを動画にてご覧ください。
エージング1:弦止めピンのセット方法
まずはじめの一歩としてチェックしてほしいのが、弦止めピンの取り付け具合です。エンドピン側からピンの高さを確認してみてください。おそらくは凸凹しているんじゃないかと思います。もしも、真っ直ぐ均等に揃っているなら、あなたはエージングの第一歩をすでに身につけているといえます。素晴らしいですね!
真っ直ぐにセットする際、弦止めピンの取り外しを素手で何度も行うのは、指を痛める恐れがありますので、できればピンピラー(ピン抜き)を使ってください。オススメですよ!
それでは一連の流れを映像でどうぞ♪
エージング2:弦のストレッチの方法
エージングの2として次に行うのは、弦のストレッチです。日頃チューニングが狂いやすい方は、このストレッチによって改善される場合が多々ありますので、ぜひ行ってみてください。
言葉で説明するよりも映像の方がわかりやすいと思いますので、さっそくご覧ください。
エージング3:弦の鳴らし方
最後に行うエージングは、弦の鳴らし方です。ギターは押させるポジションによって音程が変わりますが、ポジションの違いは実は弦の鳴りにも影響するのです。
Emコードを基本に、ローポジションとハイポジションの両方を使って鳴らしていきます。
ポイントは、1~6弦すべての弦を均一に鳴らすことです。4分音符で構いませんので、ゆっくり確実に弾きます。この時、音の鳴り方のバランスに注力してください。
ありがちなのが、3弦の音量が他の弦に比べて大きかったり、1弦が聞こえなかったり、といったバランスの悪さです。
1本1本が聞こえるようにしっかり鳴らすことがエージングになります。また、ハイポジションのEmでは一番パワーのある6弦の開放と1弦の開放をバランスよく鳴らすことが重要です。
保管方法について・・・
さて、弾き終わったギターは皆さん、どうしていますか?
大切なギターですから、やっぱりケースに入れてしまう方が多いのではないでしょうか?
ちょっと待ってください!・・・その前に、まずはクロスでその日の汚れを落としてくださいね。
ケースにしまうのはその後で、、、ですが、私からひとつ質問があります。皆さんのそのケースの状態はどんな感じですか?
人間で例えれば、もしも寝るときの布団が湿っていたならどうですか?
ギターにとってのケースとは、人でいう布団と同じなのです。ですから乾湿剤などを使用するのは、ギターにとってというよりも実はケースの湿度を取る効果があるのです。
ギターを拭くのもしまうのも、エージングの一環です。
ギターは人と同じだと思っていたわることで、より鳴るようになります。
最後の最後まで、ちゃんと手をかけて面倒をみることが「究極のギターエージング」なのです。
お待たせいたしました!・・・それでは、エージング後の音をお聴きください。
ぜひ一度トライしてみてください!
エージングは基本的に弦を鳴らすというギター本来の構造にのっとった形で行います。
ただ単に弾いているだけでは、ギターは鳴り難いのです。もちろん音は出ますが、どのような鳴り方をするのかがポイントなのです。
エージングを行うことで、きっと今までとは鳴り方が変わってくると思います。
一度にすべてを行う必要はありませんので、できるところから少しずつやってみてください。
次回はエレキギターのエージングを予定しています。
またしばらく後にお会いしましょう!
お楽しみに♪
洪栄龍がお送りしました。
それでは、また!
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