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島村楽器公式ブログ

全国展開している総合楽器店のスタッフが、音楽や楽器の楽しさや、楽器店にまつわるお話をお伝えします。

音楽力をアップする「耳コピのすゝめ 」第15回 耳コピテスト「ニューヨーク・シティー・セレナーデ」と「First Circle」

こんにちはサカウエです。

前回のインタープレイでひとまずリズムの話はひとやすみ。

皆さん!突然ですが、今日は耳コピ抜き打ちテストです!

楽器以外はしまっていただき、スマホ&携帯は電源をお切りください。

さて、これまで耳コピに役立つ機材やコード、テンション、リズムについてお話して参りましたが、今回はその知識を総動員してチャレンジしていただきたいと思います。

面倒くさいなあ〜という方は、解説を読んでいただければ、もしかしたらそのうち何かの役に立つかもしれません。ではなにとぞよろしくお願い申し上げます。

では

第一問(10点)

以下の曲のキーとコード進行を記し、なぜ「胸キュン」となるか理由を述べよ。
(イントロとAメロは同じコード進行です)

Christopher Cross - Arthur's Theme (Best That You Can Do)

ライブ版はこちら(ギターのポジション見てもコピーできるかと)


サビで「あ、この曲、聞いたことある!」という方も多いと思いますが、小田和正氏も真っ青なハイトーン。人を見た目で判断してはいけないのです、名曲です。

この曲は映画「ミスター・アーサー(Arthur)」の主題歌で、邦題は「ニューヨーク・シティー・セレナーデ」。唐突ですが「Theme」の英語発音は本当は「シーム」です。豆知識です。

感動的なサビの部分・・・

“ When you get caught between the moon and New York City “
「月とNYCに囚われてしまったら(中略)恋に落ちるべきだよ(ベタ訳)」

・・ですが、かの小椋佳氏はこう表現されております。

「月のひかりと君とNew York City、奇跡だね愛は・・・」(できればリバーブ深めでお願いします)

まさかの倒置法。さすがです。
関係無いですが、かの夏目漱石「I love you ⇒ 月が綺麗ですね」を思い出し、ワタクシ思わず目頭押さえました(※出典には諸説あり)。

で、コード耳コピいかがでしたでしょうか?

正解はこちら(ボイシングは実際の演奏とは異なります)。

簡易バージョンを弾いてみます

※キーボードはLine6さんのMOBILE KEYS46使用させていただきました。

この曲のキーはシャープが3つの「Aメジャー」ですね。

いきなりAのサブドミナント・マイナー(Dm)ではじまり、G-C-F-Bb-Eと絶妙な4度進行でトニックのAに戻ってきます・・う、うまいです。

なお「サブドミナント・マイナー」⇒「トニック」進行は、(気分にもよりますが)少々センチな印象をあたえます。これと4度進行が「胸キュン」現象の主要因といえるでしょう。

4度進行とメロディーの特徴

実はこの曲は以前紹介した、「メロディーが、コードの3rdを中心に構成されている、4度進行の曲」でもあるのです。
ルートと3rdを中心に抜き出すとこんな感じです。

再生する Download


最低限の音でコード機能が成立していることがお分かりいただけると思います。

興味ある方は下記リンクもお読みいただければ幸いです。

サビのコード進行について

サビは明るい「D」メジャーコードですね。感動的です。そしてDのペダルポイントのままコードはA-EときてAへ帰ります。

Aメロはマイナーだったけど、ここではメジャー。これがポイントですね。

出だしのサブドミナントDマイナーの「胸キュン」が、サビでDメジャーになり、秘めていた感情が一挙に開放されるという感じかなあと。この対比が、この曲の素晴らしいところではないかと思います。あーほんといい曲だ。


さて続いて

第二問(90点)

次の曲のイントロの手拍子を耳コピし、気づいたことを述べてください。
(ヒント:頭から2分あたりまでは拍子パターンは変わりません)

First Circle / Pat Metheny Group

スタジオライブ版


またメセニー様かというご指摘まことにありがとうございます、でもメセニー様はホントお勉強ネタの宝庫なんでどうかお許しください。第二問の配点が多いのはお気になさぬよう。

・・でもホントまじめな話、これだけ古今東西の音楽を吸収、昇華し続け、でもあくまで主体はインプロビゼーション。しかし商業的にも成功している・・というジャズ・アーティストは稀有だと思います。

この曲はエモーショナルで、ダイナミックレンジの広い演奏が特徴ですね。「同期モノ」というのが全く信じられないですが、テンポはずーっと変わらずBPM=160。ライブだと、シンセのメロや後半のアルコ・ストリングスが打ち込みというのがよくわかります。ピアノソロ最高です。

さて正解です。

手拍子は、4分の11拍子(6/4+5/4)もしくは8分の22拍子。
メロと手拍子はパラディドルの関係。

「???」の方ももうしばらくお付き合いください。

正解見ちゃうと「ふーん」で終わっちゃうんですが、昔これをはじめて聞いて耳コピしたときは悩みましたね。

6拍子と5拍子の組み合わせというのはわかったんですが、問題は譜割り。最初はこう思いました

でピアノが入ってくるところがウラかと。でも後半どうもしっくりいかない・・・で、しばらく耳コピしているうちにやっと気づきました、

「実はこれウラ始まりじゃあ???」

で、譜面書きなおしていくとすべてが腑に落ちました。「おーコレが正解」

|ウタタンタンタタウタウタ|ウタタンタタウタウタ|

なおここでは「6/4+5/4」と表記しておりますが、これは「12/8+10/8=22/8」でもOK。パットは後者で表記しているみたいですね。

「メロと手拍子はパラディドル」というのは、メインのテーマのリズムと手拍子が

|○××○×○××○×○×|○××○××○×○×|
|RLLRLRLLRLRL|RLLRLLRLRL|

R(○)がテーマのリズム、L(×)が手拍子、という関係になっているという意味です。

実演してみました(左手がハンドクラップ、右手がピアノ)

いかがでしょう?まさに「王様のアイデア」といえるでしょう(古いなあ)。そういえばベートーベンの「運命」も「ウ・ダダダターン」のウラ始まりでしたね。

ところで、昔のメセニー・グループのライブでは、このFirst Circleのイントロの手拍子は観客も一緒に行うのがお約束となっていました。冷静に考えるとちょっとあやしい世界です。

いつぞやの日本公演では、この変拍子を観客とステージが完璧シンクロ。パットが演奏後に「エクサレント!今日のお客さんの手拍子は今までで一番スゴイ」と絶賛しておりました。

世界各地で同じ事言っているのではないと信じたいと思います。


※パラディドルは下記を参照してください。

スティーブ・ライヒの影響

ところでメセニー様はミニマル・ミュージックの大家Steve Reichスティーブ・ライヒ)に大きな影響を受けております。この曲にはその片鱗が現れている感じもしますね。

Steve Reichスティーブ・ライヒ)って?

Steve Reich  Clapping Music

Steve Reich - Tehillim (これが一番近い気も・・・)

Steve Reich - Electric Conuterpoint (w / Pat Metheny)



いかがでしたでしょうか?残念ながら今回80点以下だった方の追試はありません、これまでの記事をまたお読みいただければ幸いです。

というわけで抜き打ちテストは今後も続きます。ではまたお会いしましょう。

関連情報・参考CDなど

Very Best / Christopher Cross

Very Best of Christopher Cross

Very Best of Christopher Cross

風立ちぬ」「セイリング」「オール・ライト」といったヒット曲めじろ押し。” Arthur's Theme ”は1981年の映画「ミスター・アーサー(Arthur)」の主題歌。主演のダドリー・ムーアはピアニストとしても有名です。
アカデミー歌曲賞バート・バカラックキャロル・ベイヤー・セイガーピーター・アレンとともに受賞しました。

Dudley Moore - A Gershwin Medley

Pat Metheny Group / First Circle

ファースト・サークル

ファースト・サークル

メセニーファンならずとも必携の一枚。アルバム1曲目の「Forward March」は下手くそ学生ブラバンのパロディー(?)なので、ここでこのアルバムを拒否してはいけません。
first circleでのメセニーのソロは皆無。ひたすらアコギの書き譜アルペジオ、後半は鬼気迫る16分のストローク。この曲に対するメセニーの気概と決意を感じます。ライル・メイズのピアノ・ソロはベストテイクだと思います。何度聴いてもイントロからラストの「ジャン!」に至るまでの高揚感は筆舌しがたいです。
タイトルは、アレクサンドル・ソルジェニーツィンの著書「煉獄のなかで(in the first circle)」にちなんだものかどうかは不明。

このライブ・オープニングはびっくりですよね。

Pat Metheny Group - Forward March - 1985

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