こんにちはサカウエです。突然ですがコレをご覧ください。
あの映画「マトリックス」だって全てはリミックス!
純粋に独自性のあるものというのは稀有であり、作品というのはすべてが過去に生み出されてきたものに影響されていると語っています。*1
音楽に関しても同じようですね。
リミックスだからパクリということではなく、歴史的な背景を説明しているのですが、パクリとインスパイアの境界は確かに微妙ではあります。
ここけっこう有名なサイトです。
他にもあのタランティーノ監督の「キルビル」も分析していたりして非常に面白いですね
このサイト。
でも確かにタランティーノ・ムービーは全編他の映画のオマージュだらけですが、だからといってその作品の価値が損なわれると言うことではないと思います。
ワタクシも耳コピしてるといつも感じるんですが、耳コピが単なる「パクリ」で終わらないように、常に意識していく必要があるなあと思いました。
「全ての芸術は模倣に始まる。しかし模倣の芸術は模倣に終わる。
今日はようこそいらっしゃいモホウ」 清水ミチコ
ボサノバとテンション
さて前回はsus4、4度堆積和音といった少々マニアックな路線でございましたが、今回は耳コピに役立つ知識の続きとして「テンション」に付いてもう少々お話ししたいと思います。
「過度のテンション使用は、スパイス入れすぎと同じ」というお話を前にしましたけれども、テンションがないとそれっぽく聞こえない音楽ジャンルがジャズ以外にもありますね。
それはボサノバです。
ボサノバの大家アントニオ・カルロス・ジョビンの曲にはテンションとコードトーンの関係を説明する場合に最適な曲*2がございまして、それがかの有名なワン・ノート・サンバ「One Note Samba」です。
この曲にかぎらずジョビンの曲はとにかく多数のアーティストがカバー
しておりますが、一番好きなバージョンはやはり本家のこれ。↓
(埋め込みできませんがお許しください)
洗練の極みと申しましょうか、余計なものが一切ないという珠玉のアレンジです。
ちなみにストリングス・アレンジはクラウス・オガーマンという人なんですが、
クレア・フィッシャー、ドン・セベスキーと並んでワタクシの尊敬する
超有名作・編曲家の一人です。
メロディーがたった一音で
この曲の一番の特徴はタイトルが表しているように、「メロディーがたった一つの音でできている」ってことですね。
(正しくはAメロは2つの音、Bメロでは音階が使われています)
オリジナル・バージョン(キーG)のAメロではOne Note(一音)は、
D音とG音、すなわち「レ」と「ソ」の音となります。
最初の8小節は「ンレッレ、レッレッレッッレッレー」、と確かに一音の
メロディーしか出て来ません。
でもすごくおしゃれでかっこいいですよね?
なぜかというとその理由はコード進行にあります。
ベースラインを耳コピしてみるとAメロは
|B |Bb|A|Ab|B|Bb|A|Ab|D|Db|C| F|
となっており、ルート音は基本半音進行ですね。
次にジョビンのピアノのメロのボイシングを耳コピしてみましょう。
(原曲では左手のベース音は弾いていません)
おーっオシャレな響きですねー。少々コードネームが複雑ですが、
前半レ、後半ソが一番上(トップノート)になっています。
さてメロディーの「レ」と「ソ」の音がそれぞれのコードの中で
どういう立場なのかを表したのがコレ。
ペダルポイント
この持続音を使いながらバックのハーモニー(コード)を変える
ことで変化をつけるという手法は、ペダルポイントといって様々な
音楽で使われています。(低音と高音の場合があります)
バッハ G線上のアリア BWV 1068(ソプラノ・ペダルポイント応用)
Earth, Wind & Fire – September(イントロのギター:ずっとトップAですな)
Van Halen - Jump (ベース・ペダルポイント)
この曲はイントロだけでできてる曲ですねえ、歌はあとからとってつけた感じです。
Stravinsky Conducts Firebird(7:00から)
最後のジャンの圧倒的カタルシスは筆舌に尽くし難いですね。
オイシイ音を選択するのが重要
さて、ソプラノ・ペダルポイントの場合
保持音が個々のコードにとって「オイシイ」音になると効果的
ですね。
「One Note Samba」の場合のように、各コードのテンションだったり3rd、5thなどになるようなコード付けをするんです。
保持音がルート音になっちゃう配置は一般的には効果ないようです。
というわけで名曲「One Note Samba」はおそらくジョビンがピアノでコード進行を色々いじくっているうちに、自然にひらめいたんだと
思いますが、まさにコロンブスの卵のような曲ですね。
(最初にやったもん勝ちかもしれませんね)
最後にボサノバの耳コピのコツですが、ボサにはだいたいナイロン弦ギターのバッキングが入っています。
ボサギターのバッキングは、ルート、3rd、7th、あとはテンション(大抵一つだけ)は大抵演奏しますから、そのあたりを念頭にコピーしていくのが良いと思います。
ボサの神様 João Gilberto !
というわけでそれではまた。
おまけ
ペダルポイントとは真逆の例ですが、ビートルズ、ヘイ・ジュード(3:45付近から)
ブラスセクションがルート音とまんまユニゾンで被っております。
後半ストリングスがC音を持続してはおりますが、非常に思い切った「男らしい」アレンジではないでしょうか。
音楽力をアップする「耳コピのすゝめ 」他の記事はこちら
*1: http://japan.digitaldj-network.com/archives/51933020.html
*2:Newton Mendonとの共作という説もある