島村楽器公式ブログ

全国展開している総合楽器店のスタッフが、音楽や楽器の楽しさや、楽器店にまつわるお話をお伝えします。

新連載!! ピアノ再生物語「ピアノはこうして生まれかわります」第1回「バフがけ!!」

はじめまして。島村楽器ピアノセレクションセンター(以下PSC)調律師のハラキと申します。
初めての登場となりますが、これからよろしくお願いいたします。

私事ですが、以前、美容室に行ったときにお店の方から「お仕事は何をされているんですか?」と尋ねられたことがありました。

当然のように「調律師です」と答えると‥‥

美容師さんの表情は(゜゜)こんな風にぽかーんって感じでした(笑)

「そんな職業があるなんて、初めて聞いた」と言われることも少なくありません。

ご自宅にアコースティックピアノがある方は、調律師の存在はもちろん、どんな作業をしているのかもおぼろげながらご存知ですね。

調律師の仕事には、大きく分けて「調律」と「修理・整調」と「整音」の3つがあります。
みなさんのお宅で行なっているのは主に「調律(音程を正しく整える)」ですが、今回のシリーズは、普段みなさんが見ることのない「修理(楽器として再生する)・整調(弾きやすいタッチに揃える)」作業にスポットを当ててみたいと思います。

PSCきっての美人ピアノ技術者(?)、ハラキとカワイの調律女子(調女(?))2人が、ピアノ整備を通して、PSC内で働く調律師の仕事をご紹介していきます。

なんだこの作業!こんなことまでやっているの!?という様な作業もございます。ちょっぴりマニアックなシリーズになりそうですが、よろしくお付き合いください!

PSCに運ばれてくるピアノ

さいたま市にありますPSCの建物は、1階がピアノの整備・整調作業を行う工房、2階がお客様にピアノをご選定いただくショールームとなっております。
ショールームにはアップライト・グランドそれぞれたくさんのピアノが展示されており、その数なんと120台以上! いや〜、圧巻でございます。

そして、新品から中古まで、国内外メーカーを問わず、年代や使用頻度も様々なピアノが運ばれてきます。
それらを、全国にある島村楽器の各店舗やお客様宅へお届けする前に、整備や整調・調律という作業を行なっているんです。

ここがPSCの1階にある私たちの工房です。作業しやすいよう整頓を心掛けています。自分の部屋よりきれいかしら……

ピアノ1台に掛ける時間は1日〜1日半
(修理が入ると2〜3日、それ以上かかることも多々あります。)
具体的にどんなことをしているのかといいますと。

  • 外装チェック
  • 外装磨き
  • 鍵盤磨き
  • 掃除
  • 修理
  • 整調
  • 調律

たくさん項目が出てきました。。。
これらを全て行いますので、毎日、時間があっという間に過ぎていきます。

ではでは、前置きが長くなりましたが、〜ピアノ再生物語〜スタート!です。

第1回「バフがけ!!!」バフってなんですかー!

バフがけ

バフがけとは、専用の道具を使って外装磨き・鍵盤磨きを行なう作業のことです。

外装チェックをすると、打傷や筋傷が付いていることがあります。時には割れていたり、欠けてしまっていることもあります。
一見綺麗に見えていても光の反射や角度を変えて見ると、意外と細かい傷が付いているものでして、傷を見つけた時はいやはや、悲しいものです。

この細かい筋傷を、主に「バフ」と呼ばれる機械を使って磨いていきます。




これがバフと呼ばれる機械でございます。何十にも重ねられた布が高速で回転します。
(上)が手持ち用のバフ、(下)が固定されているバフです。
磨くものが大きい時は手持ちバフ、磨くものが小さい時は固定バフと使い分けます。手に持てる小さいもの、例えば白鍵盤を磨くときなどは固定バフを使います。


これがバフ粉(下)とコンパウンド(上)というものです。研磨剤です。バフ「粉」といっても石鹸のような大きな塊でして、粉末ではありませんので念のため‥‥

そのバフ粉を回転しているバフにつけて、磨いていきます。
では、実際に磨いていきましょう。





えっと。。。こんな格好をしてバフとやらをかけるのですか?
そうでございます。

ツナギとタオルとマスク、PSC内では(特に女子にとっては)3種の神器でございます。
何故こんな格好をしなければならないのかといいますと、外装や鍵盤をバフで磨いていると先ほどご紹介しましたバフ粉があたり一面に飛び散って、磨いている本人にも思いっきり降りかかってくるからなのです。(何の防御もせずそのまま作業しちゃうと、それはもう髪の毛バッキバキでございます。ひぇぇ〜!)
とはいいましても、スーツ姿のままで淡々とこなす男性スタッフもいます(笑)ですので、各々作業のしやすい格好で取り組んでいるというわけです(スーツがバッキバキ(?))。

そもそも傷を磨くとはどういうことなのかといいますと、外装(黒艶出しの場合)は

木材→サーフェイサー(下地)→ポリエステル(orラッカー)

の順番に塗装されています。

みなさんが日頃手に触れているのは、このポリエステル(orラッカー)という部分です。そのポリエステル塗料に傷が付いているわけですね。
作業としては、その塗料のわずかな厚みを大切に、傷が付いている箇所を含めその一面全体を薄く削りとり、新しく平らできれいな表面を作り出してしまおうということなのです。

しかし厚みといっても数ミリの世界でございます。
傷がなかなか取れずバフを当てすぎてしまうと、下地が出る!という大いなる恐怖と常に隣り合わせの作業なのです。
そして、バフの力はとても強いので、ずっと同じ方向から掛けていくと「THEバフがけ!」的なバフ跡が残ってしまいます。美しくありません。
そうならないように、方向を変えながら“良〜い感じ”に掛けていくのです。
この“良〜い感じ”に掛けるというのが大変でして。。。日々勉強でございます。

そんなことを考えながら慎重にバフに取り組んでいるのですが、なにせバフが重たい。。。
お米を抱えている気分です。もはや戦いでございます。(PSCには筋トレ!ダイエット!といってポジティブに取り組むスタッフが多数おります)

バフ粉を使って傷を取った後は、先程写真にあったコンパウンドという、より細かい研磨剤と柔らかいネル生地のバフに持ち替えて、仕上げを行ないます。

そして戦いに打ち勝つと、

こんな風に、ピカピカになるのでございます。
美しい〜(^^)

おしまい

これがバフがけの一連の流れでございます。
かけ終わった後は手が痙攣していることもしばしば。傷一つ修復するのも実に大変なのでございます。

ですから、「みなさんもお持ちのピアノは、大切に使ってくださいね♪」

な〜んていいたい所ですが、どんなに丁寧に大切に使っていようと、傷は付くもの!そういうものです!
だからこそ、こういった作業があるのでございます。
大変な作業ではありますが、調律師も全て磨き終えたピアノを見ると気分爽快ルンルンです。
店舗やお家に届いたピアノをご覧になって、みなさんも私どもと同じように少しでもルン♪となっていただければ幸いでございます。

ということで、〜ピアノ再生物語 第1回〜 終了でございます。

第2回は私ハラキに代わって、もうひとりの美人調律師カワイがピアノクリーニングについてご紹介させていただきます。しかもしかも、PSCに職業体験に来てくれた中学生の皆様とのクリーニング体験記!これはおもしろそう!
それではまた(・ω・)

島村楽器ピアノセレクションセンターについて

ピアノセレクションセンターは、専用工房を併設したアコースティックピアノ専門のショールームです。
フロアには、新品・中古ピアノ、アップライト・グランドピアノを合わせて常時100台以上を展示しております。また、専用工房ではピアノの調整・点検・修理を行い、アフターフォローにもお応え致します。

© Shimamura Music All rights reserved.