島村楽器公式ブログ

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2016年春 弦楽器ヨーロッパ買付レポート プラハ編 その2

皆様こんにちは!島村楽器みなとみらい店 楽器アドバイザーの石井と申します。
この春、弊社マイスター茂木顕、島村楽器シマムラストリングス秋葉原 リペアマン鍵主有三と3人で、皆様にご紹介する楽器を買い付けて参りました。
今回は、プラハ、パリ、ブリュッセル、フランクフルト、そしてクレモナと各所を訪れ、たくさんの楽器・弓・人と出会うことが出来ましたので、報告させていただきます!


今回はプラハでの買付け二日目。この日はマンションの一室を工房にしている職人さんを訪ねました。
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13年前、筆者が卒業旅行でプラハを訪れたときもこんな感じの楽器屋さんに飛び込みで入ろうとしましたが、その時はまったく相手にされず門前払いを受けた記憶が蘇りました。もちろん今回はアポを取っていましたのでスムーズに入室。
親父さんから譲り受けたという広々としたマンションに通されました。しばらくして、キッチンに次々と運びこまれる楽器たち。
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つい昨日まで風邪で寝込んでいたという職人さん。
かなり具合悪そうにしながらも、ひとつひとつ丁寧にセットアップして持ってきてくれました。
ボヘミアン楽器の造詣の深さは、マイスターも感服!思わず聞き入ってしまいます。
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ここでのミッションも、昨日同様、チェコ・ドイツ系の良質な楽器を出来るだけたくさん仕入れることです。
達筆すぎてほとんど読めないリストと楽器を何とか照合しながら、ひとつひとつチェックしていきます。
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焦茶色のニスが特徴的なウィーン系のオールド楽器もチェコでは多く見られます。今回もたくさんのオールドウィーンスクールを見させてもらいました。
中にはこんな個性的な楽器も!
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ありえないほど膨らんだボディは、つまみ上げられるほど!
マイスター茂木も困惑の表情を隠せないこちらの楽器は、今回のフェスタの目玉商品として登場・・・することはありません。
残念ながら面白いだけでは仕入れできないのです。
1800年前後の楽器は、とにかく状態がネックで、ポストクラックやバスバークラックなどの致命的な怪我を負っている楽器も多くありました。
こういった楽器は、どんなに音が良くても、今後の不安が残るためやはり仕入れは致しません。
チェコには、ドイツとの境界付近に位置するシェーンバッハという町に、古くからドイツ系の職人が移り住み製作活動をおこなってきました。
そのため、そういった楽器も豊富にあります。この日の買付けでは、1890年の良質なモダンジャーマンも仕入れることが出来ました!

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珍しい素杢の裏板。杢が全くない素朴な感じが、かえってカッコよく見えてしまうのは筆者だけでしょうか?
状態も良く、音色も程よく乾いた鳴りの良い響きで、満場一致で購入を決定しました。


ここでの買付けを終えて帰ろうとしたその時、何やらマイスターが交渉しているのに気づきました。
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どうやら砥石を見せてもらっているようで、念入りに試し磨りをして、悩んだ末にこちらも購入。
実は、秋葉原の工房にはこうして手に入れた良質な工具がたくさんあるそうです。
情報交換も買付けの大事な仕事のひとつです。

と、いうわけでこの後は、名門シュピードレン一族の四代目、ヤン・シュピードレンのもとに勤めながら製作活動を行っているVaclav Pikrt,(ヴァーツラフ・ピクルト)さんの自宅兼工房にお邪魔させてもらい、いろいろとお話を伺うことになりました。

次回につづく

選び抜かれた楽器が一堂に会する祭典「第20回 楽器フェスタ」10店舗で開催!

テーマは「Paganini & his Guarineri “ Canone “ パガニーニのカノンガルネリ」

19世紀最大のバイオリニスト、パガニーニが愛用したバイオリンがガルネリでした。その強烈な個性でついたあだ名が「カノン砲(大砲の意味)」。今回そのガルネリモデルを、現代イタリアの名工が見事に再現した名品をご紹介します。同時に現地で選りすぐった様々な個性のモダン~新作の楽器と弓もご用意して、皆様のご来場を心よりお待ちしております。

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