皆さまBuon giorno!島村楽器弦楽器アドバイザーの糸山です。
前回のブログでは、日本初登場となるヴァイオリンメーカーを紹介させていただきました。
春の買い付けブログも本編で最終回。引き続き水の都:ヴェネツィアより、本日は偉大なヴァイオリンメーカーのご紹介です。
ヴェネツィアの商業の中心地として栄えたリアルト橋にて、マイスター茂木。
Gregg Alf Studioへ
Gregg Alf Studioを再訪し、昨秋オーダーして完成したばかりの作品をチェックさせて頂きました。
最終仕上げ前にGregg Alf Studioより届いたヴァイオリン裏板の写真。ここからアンティーキング作業に入ってゆきます。1枚板メイプル材のダイナミックな虎杢に心を躍らせ、再訪を楽しみにしておりました。
昨秋の初訪問については、こちらの記事をご一読下さい!
2013年には、故ルッジェーロ・リッチが愛用したJosef Curtin&Alf & Gregg Alf製作のヴァイオリンが$100,000以上の高値で落札され、名実共に、全世界に生存する新作メーカーのなかで最も評価の高い製作者のひとりとして知られています。
巨匠リッチが愛したオールド名器:Guarneri del Gesu 1731年の「Gibson - Ex.Huberman」は、特にG線のサウンドが極めて素晴らしいのだとか。(勿論、全てにおいてグレートな傑作であることが大前提で・・・)そして氏曰く、そのG弦の音質的特徴は、『決して全てのデルジェスが持ち合わせているとは限らない』・・・ということなのだそうです。なるほど、ガルネリも超一流演奏家にとっては当たりハズレがあり、様々なのですね・・・。
当時グレッグは、ミシガン大学のあるAnn Arbor(アナーバー)にJosef Curtinと共に工房を構えており、大学でルッジェーロ・リッチが教鞭をとっていたことで自然と交流が始まっていました。「Gibson - Ex.Huberman」をいずれ手放すことになる事を予見していたリッチは、この名器を完全再現したフルコピー楽器の製作する・・・という「超難問」を、彼らに託します。
それは、単に形や色を再現するだけではありません。特に頭を悩ませたのは、歴史的名器に対してあまりにも偉大なヴィルトーゾが求めた、その音の色彩感をも再現することでした。
彼らは、当時の様々な精密機器を用い、木材1つ1つの細部に渡る計測と重量の測定、木材の音の伝達性と振動性の計測などを長い歳月に渡って入念に行い、ガルネリの音の秘密に迫っていったのです。
このような経緯を経て出来上がった新作ヴァイオリンに巨匠リッチは「すぐに恋に落ちた」
”Mr. Ricci was immediately smitten by the finished violin.”(索引:Gregg Alf Studio Official Website)・・・のだそうです。
また、その後リッチがコンサートで使用してゆく過程で変化してゆく新作楽器のコンディションも細かくチェック。一流プレーヤーが新作ヴァイオリンに与える影響を研究してゆきました。この一連の経験がグレッグ・アルフ氏のターニングポイントとなり、その後輝かしいキャリアを歩んでゆくことになります。
VSAコンペティションにおいてゴールドメダルを3度獲得する偉業を達成。
彼の作品はベルリンフィルハーモニーオーケストラ、ロンドンフィルハーモニーオーケストラ、ロスアンゼルスフィルハーモニーオーケストラ、ボルチモア交響楽団、シカゴ交響楽団、クリーブランド交響楽団、デトロイト交響楽団、ソルトレイク、サンフランシスコ、シアトル、トロント、ニューヨーク・・・などで使用されております。
前フリがいつもより長くなってしまいましたが、それではお待たせ致しました。今回の買い付けブログ最終回にご紹介するグレッグ・アルフ氏の作品を下記の通りご紹介申し上げます。
Gregg Alf Studio, Italy - Venezia, 2017
弾いた瞬間の我々の感想は・・・『え・・・、これって本当に新作ヴァイオリン・・・だよね?』と第一声、思わずつぶやいてしまったのを鮮明に記憶しています。ヴァイオリンに身を委ねて弾く・・・という表現がしっくりくるでしょうか?ピアニッシシモから情感豊かに歌い上げる楽器です。
島村楽器の特別注文モデルは本物に肉薄する素晴らしい音色に仕上げてきました。グレッグの作品は、弾き込まれて何年後の姿まで緻密に計算されて製作されております。
それでは、グレッグ本人よりコメントを頂いておりますので、是非こちらの動画も合わせてご覧ください♪
≪要約≫
こんにちは、グレッグ・アルフです。私はイタリア:ヴェニスのバイオリン職人です。おそらく、私は世界で最もラッキーな人間でしょう。なぜならば、自分はベストな仕事を成し遂げたからです。ここに来ている私の友人達(マイスター茂木&筆者)の為に製作した最新作です。この作品を手に取って頂ければ(すぐに)素敵なヴァイオリンだということが分かるでしょう。すごく注意深く製作しました。オールドヴァイオリンを意識してダメージ加工を施してありますが、自分だけのスタイルで仕上げたオリジナル作品です。
私がヴェニスに移住し、街全体が美術館のようなこの場所を探検しながら毎日生活することで様々な事に刺激や影響を受けて、新しいアイデアを産み出そうと試みていますので、その成果を皆さんとシェアしたいと考えています。
クレモナから波及したバイオリン製作のブームは、世界中の富が集中していたベニス共和国にも波及しました。「四季」で有名なベニスの作曲家ヴィヴァルディ達と共に発展した弦楽器製作の伝統は、再び現代にもリバイバルしつつあります。(筆:マイスター茂木)
グレッグ・アルフ氏の最新作、乞うご期待下さい!
※ご紹介しております特別注文モデルは2017年4月28日時点、製作者の都合により入荷が遅れております。入荷次第、ご報告させて頂きますので、今しばらくお待ち下さいませ。
旅のラストはミラノ・スカラ座へオペラ鑑賞に
最後に余談ですが、旅の最終夜に、現代ブレシア派の中心人物:Filippo Fasser(フィリッポ・ファッサー)氏よりご招待頂き、ミラノ・スカラ座へオペラ鑑賞に行って参りました。演目はワーグナー作曲「ニュルンベルグのマイスタージンガー」です。
何を隠そう、出演しているミラノ・スカラ座管弦楽団の首席ヴィオラ奏者:Danilo Rossi(ダニロ・ロッシ)氏は、フィリッポ・ファッサーのヴィオラを日常的に愛用しているのです!
実際に現地の第一線で使用されている様子を見学できたのは、筆者としても大変参考になりました。
ミラノ・スカラ座管弦楽団の首席ヴィオラ奏者:Danilo Rossi氏 公式ホームページ
www.danilorossiviola.it
我々は3階奥のバルコニー席で聴いておったのですが、時折でてくるヴィオラ独奏におけるファッサー氏のヴィオラ音は、座席の一番奥までしっかりと届いており、彼の実力を目の当たりにした一夜でありました・・・。ただ、オペラは夜6時にスタートし、終演は0時目前でした(汗)
それでは皆さま、ここまで扇谷&糸山による買付ブログのご愛読、誠にありがとうございました。今回買い付けてきた作品たちは、5月3日(水祝)~5日(金祝)の3日間で行われるGW最大級の弦楽器展示&試奏イベント「弦楽器大展示会in秋葉原UDX」にてお披露目される予定です。
その後は、北は北海道から九州まで、全国12か所で行われます「弦楽器フェスタ」にてご覧頂けます。
会場内では、皆さまに自由にお試し頂くことがモットーですので、是非お気軽にいらして下さい!
会場でお会いしましょう。Ciao!
2017年春 弦楽器ヨーロッパ買付レポート その他の記事はこちら