皆様Bonjour!
どーも島村楽器弦楽器アドバイザーの糸山です。
まさかのガルネリの登場に、約束の時間から1時間も遅れてしまった一行は、急いでRue de Romeの楽器街から離れ、およそ3km離れた次なる目的地へと移動します。
緩やかな長い坂道が続くRue Rodier通りの風景
それでは、本日2件目となる素晴らしいルチアをご紹介致します。
弓職人、ムッシュ・エマニュエル・カリエール氏です!
半年前に新しくしたばかりの、カリエール氏のアトリエの前にて
カリエール氏は1975年パリ生まれ。ソルボンヌ大学で歴史学を専攻したのち、卒業後は某有名企業でカルチャー系のジャーナリストとして10年間勤務していたという異色の経歴の持ち主です。
カリエール氏のワークベンチ。
彼の芸術製作への情熱は抑えきれず、奥様を説得して(もう子供が生まれていた)弓職人として転身。
製作途中のバイオリン弓。全て1人でパーツから手作りで行っている。
数年間の楽器と弓製作の修行を経て、ベルギー・ブリュッセルの巨匠、ピエール・ギョーム氏のもとで、弓製作のアシスタントを務めながら、弓の修理とオールドボウの造詣を深め、自身のスタイルを固めてゆきました。
鼈甲フロッグと象牙フロッグを装着したモデル。(非売品)
2009年に独立。パリで自身の工房を立ち上げ、2012年アメリカのコンクールにおいて3部門のゴールドメダル獲得の偉業を成し遂げたことはあまりにも有名。 遅咲きの弓職人ですが、恐らくいま最も入手困難な現代作家です。
弓製作で使用する特殊な器具。スクリューを通す穴を正確にあけたり、荒削りをすることができる。
カリエール氏の主な受賞歴は下記の通り。
- 2010年 ミッテンヴァルド国際弦楽器製作コンクール
- ヴィオラ弓部門 金賞
- チェロ弓部門 銀賞
- 2012年 VSA(Violin Society of America)国際弦楽器製作コンクール
- バイオリン弓部門 金賞
- チェロ弓部門 金賞
- コントラバス弓部門 金賞
ラッピングで使用する金糸と銀糸。この金糸は1g≒50€(現在のレートで約6,550円)もするのだとか。カリエール氏のラッピングは芸術性が高い。
弓の皮巻きにもこだわりが見え隠れする。トカゲの皮や牛革が一般的だが、魚の皮なども収集している。
弓の片面をCon legno(コンレーニョ)奏法用にギザギザカットしたバイオリン弓。現代音楽を研究するの演奏家からの特注品だそうです。
↓Con legno奏法参考動画
彼のWaiting Listには数年先までオーダーが詰まっています。しかし、作り急ぐことを嫌い、作品のクオリティーを重要視するため、月4本という製作ペースを着実に守って手作りでつくられています。
フロッグ(毛箱)も既製品ではなく、手作りで作られている。その様子を講義するカリエール氏。
カリエール氏とは、2012年の展示会で初めてデビューしたときに、アメリカ・ニューヨークで出逢いました。
世界中から集められた希少材フェルナンブーコ。材料選びには科学的根拠に基づく独自の見識とこだわりがある。
その後、彼はフランス国家が選出した研究員に選ばれ、イタリア・ローマにある在ローマ・フランス・アカデミー施設『Villa Medici』で、2年間研究員として「木材の質量とバランスが弓に与える影響」をテーマに研究を行っていました。彼の弓の特徴は、その研究の「Conclusion(結論)」であると、彼自身が定義してます。
気品のあるカリエール氏の弓のヘッドのデザイン。弓の性能やキャラクターは、ヘッドのスタイルによって微妙な違いな生まれる。
世界中のプレーヤーから本当にたくさんのオーダーが入っているため、残念ながら今回の買い付けブログで最新作をご紹介することはできないのですが、我々は初めて彼のアトリエを訪れたことで、より一層彼の作品に対する知識を深め、奥深さを知ることができました。
厳選された馬毛。
ここで、昨年暮れに入手した彼の希少な作品をご紹介致したいと思います!
Emmanuel Carlier, Paris, 2014, Viola Bow
コンペティションで賞を総なめにしたカリエール氏のゴールド・エディション。精密に計算された重量バランスが産み出す、絶妙な力強さ、コシの粘り。外観のエレガントな美しさ、そこには生粋のパリジャンである彼の気品あるシャープな佇まいをみせてます。
フロッグ製作の様子
次回のカリエール氏最新作の入荷は2015年11月~12月頃を予定しております。もしかしたら、本人も12月頃来日してしまうかもです!その時はカリエール氏による弓講演会を開催したいと思いますので、どうぞお楽しみに♪
日本での再会を約束して、みんなで記念撮影。
午後はオールドバイオリンを探すため、二班に分かれてローラー作戦です!
それでは今回はこの辺で。
Au revoir!
今回買い付けた弦楽器は、弦楽器フェスタでお披露目します
今回マイスター茂木と糸山が買い付けを行った弦楽器は、5月〜7月各地(新宿・横浜みなとみらい・大阪・福岡・船橋・仙台泉・札幌・レイクタウン・広島)の島村楽器で開催される、島村楽器弦楽器フェスタにて展示・お試しいただくことが出来ます。
弦楽器フェスタページもあわせてご覧ください。
2015年春 弦楽器ヨーロッパ買い付け日記はこちら