こんにちはサカウエです。
前回コードの基本「ダイアトニック・コード」では、機能別にトニック、サブドミナント、ドミナントという三種類に大別できて、仲間同士では代理コードとして使える・・・というあたりまで紹介いたしました。
さて今回は「テンション」についてです。
耳コピしにくいハーモニー
和音を耳コピするときに聴き取りにくいのは、やはり「不協和音」が含まれている場合ですね。
たとえばCmaj7というコードは基本形で長7度の音程(ドとシ)が含まれています。
[file:shimamura-music:111015-02_Cmaj7.mp3:sound]
これは一応「不協和音」なんですが、なんだか浮遊感のあるサウンドに聞こえた方もいらっしゃるかもしれません。
では次にこれを展開してみます。
[file:shimamura-music:111015-04_Cmaj7INV.mp3:sound]
今度はC音とB音が半音でぶつかることになり、基本形より「不協和」感が増しましたね。
これはC7コードでも同様です。C7ってのはCメジャートライアドに「7th」が加わったコードでしたね(7Thはルート音の一音下ですよ)
[file:shimamura-music:111015-07_C7.mp3:sound]
というわけで半音、全音の衝突は、最初はとても聴き取りにくい音だと思いますが、逆に慣れてくると聴いただけでなんとなくワカるようになると思います。
さてこのように、root(ルート音)、3rd、5th以外の音がコードに加わると、必ずどこかに不協和が生まれます。したがってコードを耳コピする場合は半音、全音でぶつかっている音をいかに聞き取るか?ということが課題になると思われます。
半音の衝突 | [file:shimamura-music:111015-08_M7.mp3:sound] |
---|---|
全音の衝突 | [file:shimamura-music:111015-09_7TH.mp3:sound] |
ちなみにmaj7thを使った有名なピアノ曲といえばコレですね。
Gmaj7 - Dmaj7( IV - I )という進行ですが、メロディーもmaj7を強調したラインになっております。
ルートがオクターブ下で演奏されているのであまり不協和音という感じはしませんね。
シンプルだけどおしゃれなコード
まずはこの映像を見てください。
うーん永遠の名曲ですね 。
「エレピ弾いてるけど生ピアノの音じゃん・・・」という突っ込みはワタクシがしておきましたので皆さん不要です。
この頃のPVは完全当てぶりなんですよね・・でも、1:43〜の「突然半音転調」はシビれるなあ・・・
・・・というわけで、懐かしいカーペンターズの大ヒット曲、邦題は「遙かなる影」・・・カーペンターズ語り始めると長いよーワタクシは・・・以下省略。。
さて、注目はイントロのピアノ。
実は3音しか鳴ってないんですよね、でもなんだかおしゃれな響きに聞こえませんか?
レとミが全音で不協和を生みだしています。このコードのrootはC音ですので、E音が3rd、G音は5th。
つまりこれでおそらくはC(メジャーコード)は確定。
なおこの曲のキーはCではなくてGです。サブドミナント始まりというわけですね。
さて、「E音」とぶつかっている「D音」は何かというとこれは「9th(ナインス)」というテンションになります。
ここでは7thもmaj7thも聞こえないので、コードネームは「Cadd9(シーアドナインス)」となります。
[file:shimamura-music:111015-11_C2.mp3:sound]
この「add9」は「不協和だけどちょっと大人の雰囲気」をかもし出すことができるコードですね。
なおこの「9th」が加わってもコードの機能は変わりませんので、比較的どんなコードにも付け足すことができます。
ためしに「イチロクニーゴー(I - VI - II - V )」に「9th」を足してみましょう。
[file:shimamura-music:111015-13_16251.mp3:sound]
音色選びも大切ですが、チョット都会的なサウンドになりましたね。
個人的には「Cadd9」は字数が多いので「C2」って書いた方が良いのでは?と思っておりますが、それにしても、いやーカーペンターズはやっぱりいいなあ。ウルウル。
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ところでテンションって何?
あ、そうでした。今回はヒジョーに駆け足で説明いたしますので、詳しく研究したい方はwikipedia等でヨロシクおねがいします。
Root、3rd、 5th、 7thといったコードを構成する基本音以外の、
9th、#9th、b9th、11th、#11th、13th、b13th
といった非和声音を「テンション」といいます。
テンションが加わると、こーゆーサウンドになります。
[file:shimamura-music:111015-23_tension.mp3:sound]
ジャズなどの複雑なサウンドにはテンションは不可欠ですが、テンションはあくまでサウンドに変化をつける「飾り」なんですね。
たとえば上記のC7(b9, #11, b13)。「root – 3rd – 7th(ド、ミ、bシ)」の3音だけで「C7」のコードの機能が確定しますので( )内のテンションはあくまで付録ということになります。
たとえば牛丼にかけるのが七味でも山椒であっても、牛丼というメインディッシュ(?)の存在自体は無関係です・・・・とワタクシの食レベルが露呈して恐縮ですが・・・テンションもそんな感じです(ホントかな?)。
使用可能なテンション
テンションはそれぞれトニックには使用可とか、ドミナント専用とか、使い方は実はおおまかに決まっているんですね。
たとえば「Imaj7」では「#11th」は使用可能で「11th」は非推奨とか。
なんで11thはダメかというと、仮にキーがCで「Cmaj7(9, 11)」というコードを弾いた場合、「シドレミファ」という音が構成されます。
しかしこの音があることによって、本来トニックであるはずの「Cmaj7」と、サブドミナント「Fmaj7」、ドミナント「G7」との区別があいまいになってしまうんですね。
したがって「テンションはコードの機能を変えちゃダメ」という掟に反するため11thはN.G.となります(11thはマイナーコードでは使ってO.Kです)
#11th(ファ#)はメジャー・スケールからは外れますが、一応O.K.とされています(理由はまた今度)
あ、#11thで突然思い出しました;
うーん泣けます・・・1977年ビリー・ジョエルの名曲ですね。
間奏サックス・ソロ後半、E7「ド#〜レ〜ラ#〜」(2:28付近)とA7「ファ#〜ソ〜レ#〜」(2:31付近)のラインは非常に印象的ですが、これはどちらも「13th – 7th - #11th」という音を演奏しております(13thと#11thはどちらも7thコードで使用可能なテンションです)
ちなみにこのサックス・ソロはフィル・ウッズ大先生ですが、当時こんなJazzジャイアントがポップスでサックス吹くとは驚きました。
規則は破られるためにある?
しかし世の中必ず規則破りがおりまして、デビット・フォスターはこんな感じで演奏したりするわけです。
[file:shimamura-music:111015-21_DF.mp3:sound]
Fmaj7(onC)という解釈も出来るかもしれませんが、こうした例外は多くの曲で散見されます。いったい何を信じたらよいの?という気もしますが、原則はあくまで原則。カッコよければ規則破りも許されるのが音楽の面白いところですね。
テンションコードのボイシング、省略音
仮にCmaj7に9thが加わったものは「Cmaj7(9)」とか「Cmaj9」、Cm7に9thが加わった場合は「Cm7(9)」「Cm9」と表記します。同様にC7に9thが加わると「C7(9)」「C9」。
たとえばCmaj7(9)で、maj7thと9thとをオクターブ下げた場合
このようにシドレミが全部重なって大変な不協和が生まれます。意図的にこういうボイシングをすることもありますが、テンションコードを弾く(すなわち多くの音を弾かなくてはならない)場合は、右手のボイシングからはrootまたは5th省略され、左手で演奏される場合が多いですね。
幾分すっきりしました。もしベーシストがいる場合、左手のrootは省略してもベーシストがrootを弾いてくれるので全体のアンサンブルを損なうことはありません。
ジャズの歴史に当てはめると、古い時代のピアニストは、ルート音を含んだボイシングでバッキングする傾向がありました。
バド・パウエルの時代は左手でこんな風に「Root – 7th – 3rd」を弾くんですね。
コレ手が大きくないとキツいですね。ワタクシも血のにじむような訓練(ちょっと大げさ)を繰り返しやっと10度とどくようになりましたが、曲中ですばやく動かすのは無理。ここぞという一発芸くらいでしか弾けません。
オスカー・ピーターソンさんはテンポ300くらいの超アップテンポでこの「10度押さえでストライド奏法」というプレイを行ったりしますが、これは別世界レベルだと思います。
なおこのボイシングは左手だけでコードの機能は確定しますから、右手の自由度が高くなります。ソロピアノではよく使われますね。
ルートはベースに任せて省略したボイシングを意識的にするようになったのは、レッド・ガーランドあたりからではないでしょうか。
C7で 7th – 9th – 3rd – 13th(ルート省略)
これは現在では定番の7thコードのボイシングの一つです。
参考CD
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まとめ
というわけで、テンションにもいろいろあるわけですが、でもスパイスを使いすぎてせっかくの料理が台無しになるように、過度のテンション使用は逆効果。
「これは?・・いや待て・・かすかに、かすかに何か香りをつけてあるぞ!・・・おのれこの雄山を試そうというのか!」っていうくらいがちょうど良いと思います。
次回はメジャーでもマイナーでもないコードについて紹介する予定です。それでは
おまけ
絶妙なストリングス・アレンジ
印象派らしい近代的なハーモニー(3:00〜からは鳥肌立ちますね)