みなさんこんにちは♪
前回より新連載がスタートしました「ピアノ再生物語」の記念すべき第2回になります!私は第1回「バフがけ!!!」の文末でハラキよりご紹介に預かりました2人目の調女(?)調律師のカワイと申します。
今回は「ピアノクリーニング」について、先日島村楽器ピアノセレクションセンター(以下PSC)にて行なった職業体験を交えてご紹介したいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします♪
前回の記事はこちら。
本題に入る前に、まだ連載がはじまったばかりですので・・・
ここで「ピアノ再生物語」について少しお話したいと思います。連載の担当は私達、ハラキとカワイの女子調律師二人組でございます。日々働く中で二人に共通するもの・・・それは「みなさんにピアノの魅力をもっと知ってもらって、もっと楽しんでもらいたい!」そして自分も一緒に楽しみたいという熱い想いです!
そこでっ!意外と知られていない中古ピアノの魅力を、技術者の視点からこっそり公開しちゃおうと思ったのがこの連載の生まれたきっかけとなり、スタートさせていただきました。どうぞ宜しくお願いいたします♪
中古ピアノの魅力と言いましても、中古と聞くとすぐに壊れるとか、古くて汚いとかマイナスイメージが先行してしまいがちです・・・
しかしそんな中、ヨーロッパでは古いものはアンティークとして重宝する習慣があります。そこに隠された中古にある魅力とはいったいどのようなものなのでしょうか・・・
前置きが長くなってしまいましたが、ここから本題のスタートです!
ピアノクリーニングをご紹介する前に、まずは中古の魅力からどうぞ!!
地球に優しいエコ☆「再利用」「再使用」
現代の環境問題のひとつに資源不足が挙げられます。今やモノが溢れ、簡単に物を捨てて新しい物に買い換える・・・ゴミが増えるばかりで資源不足に陥っている時代ではないでしょうか。
以前に「MOTTAINAI!」という言葉が話題を博した時期がありました。
環境分野で初のノーベル平和賞を受賞したケニア人女性、ワンガリ・マータイさんは
2005年の来日の際に感銘を受けたのが「もったいない」という日本語だったそうです。
それを聞いた時に、日本には素敵な言葉があるんだなぁと嬉しくなったのを覚えています。
資源不足という環境問題がある反面、今や「エコ」という言葉を知らない人はいない程に様々な場面で登場してきており、物を大切に使うという思考が支持される傾向にあります。
主に再使用・再利用されているものとして車・家具・住宅・自転車・電化製品・洋服etc...種類は様々でありますが、中古ピアノもこの再使用できるものの一つに含まれます。
ご存知の通りピアノの本体はほとんどが木からできており、木は伐採されピアノになってからも呼吸をして生きています。長年演奏したことで傷んだ弦や中の部品は、それを新しく交換することで再び美しい音色を取り戻し、人に感動や癒しを与える楽器として生まれ変わることができるのです。
事実、102歳の声楽家が100年前のピアノでコンサートを行なった。という記事が以前新聞に載りました。一世紀の歴史を重ねた“2人”が共演したこのコンサートが話題となったのを覚えています。この声楽家はコンサートを終えてから、「同世代のピアノだから、音色が私の声にぴったり合ってうれしい」と話されたそうです。
楽器は古くてもしっかり手を入れれば、歴史を感じる深くてあたたかい音を奏でてくれるのですね。
上の写真はPSCに展示してある今から91年も前に作られたGROTRIAN STEINWEGというピアノです。外観・音色共にとても美しいピアノで、クララ・シューマンが生涯愛したピアノと言われております。ご覧になりたい方はいつでもご来店お待ちしております♪
少々話がずれてしまいましたが、いかがでしたでしょうか?
少しでも中古の魅力を感じていただけたら幸いです。
ピアノクリーニング
続いてピアノ再生の工程の最初に行う作業であるピアノクリーニングをご紹介するのですが・・・
クリーニングとはそのままの意味でピアノの見た目を綺麗にする作業になります。
先日、とある中学校の学生さんたちが、PSCにピアノクリーニングの職業体験に来てくれましたので、その模様と合わせてご紹介したいと思います!
中学生の職業体験は、国立教育政策研究所の調べによれば全国10,240校の公立中学校のうち、89.7%の9,185校で実施しているとの事です。(平成16年度)
体験できる職業は充実しており、コンビニ・生花店・食堂・幼稚園・老人ホーム・警察署・病院など様々だそうですが、その中で島村楽器ピアノセレクションセンターも毎年受け入れをしております。
今年は、音楽に興味のある男子5名・女子5名の計10名の中学生を受け入れて、2月2日より3日間の職業体験が行われました。
それでは、全員で協力して一生懸命きれいに磨いたピアノ…そんな中学生の姿をご紹介していきます。
初日は当センター前にて集合し、館内見学・自己紹介から始まりました。全員緊張した面持ちで挨拶をしていたのが印象に残っています。
中学生に体験してもらうのは、買い取りの中古ピアノをクリーニングしてもらう仕事です。
5名で1台を割り当て、ピアノを綺麗に仕上げてもらいます。
整備をするピアノは一般家庭から買い取らせていただいたとても古いもので、外装も中身も埃や錆びが多く鍵盤も動かない状態でした。
まずはピアノの分解から始まります。
ピアノについているネジを外してパーツごとに分けていきます。
ピアノは木でできているというイメージが強いですが、実はたくさんのネジが使われているので、中学生もビックリしていました。
次に内部のホコリなどの掃除をしていきます。
続いて金属の錆びている部分やカビなどを、すべて綺麗におとしていきます。
クリーニングといってもただホコリを取るだけではありません!長年にわたって蓄積された汚れやカビ・錆などを落とす作業なので、気合と体力と根性が必要です(笑)
錆は専用の研磨剤で落としていきます。
作業の成果が最も分かりやすい、ペダル錆のbefore☆afterをご覧ください♪
おわかりのように、左2本のペダルがbeforeで一番右のペダルがafter☆です。見違えるように綺麗になりますね!
これはまずスチールウールなどでしつこい錆などを落とし、その後専用の磨き剤で綺麗に磨いていきます。ピアノは金属部分が美しく輝いているかどうかでも印象が全く違いますので、大切な作業です。
中学生のみなさんは、その汚いピアノを見て最初は触るのも掃除をするのも嫌そうでしたが、作業を進めるに従って金属部分が新品同様にみるみる輝き出し、ついには綺麗になる過程が楽しいということで、実にきれいに磨き上げてくれました。
上の写真は、鍵盤蓋の蝶番の錆を落としている所です。スチールウールで錆を落とした後、研磨剤で艶を出します。力のいる作業ですが、男子も女子も綺麗に仕上げてくれました。
次に外装です。外装は面積が多い上にとても時間のかかる作業です。
ピアノ専用磨き剤で実質2日かけて綺麗にしてくれました。
中学生の努力のbefore‐afterをご覧ください♪
調律体験
調整・調律については、別の回で詳しくご紹介させていただきます♪
そして、外装を組み立てたら・・・
その他にもグランドピアノの開梱(梱包されているグランドピアノを設置する作業)見学も行ないました。
重くて大きなグランドピアノ(重さ350㎏以上!)をどうやって持ち上げて移動し、3本の脚をつけて設置させるのか、興味津々で運送業者の方に質問をしながら真剣に見ていました。
職業体験を担当して
この三日間、中学生に色々な質問を投げかけましたが、印象に残っているのは「お父さんやお母さんの仕事をしている姿を見たことがありますか?」という質問に対して、全員が「無い」「想像もできない」と答えたことです。
昔は職住接近で商店でも工場でも農家でも子供たちのすぐ近くで働くお父さんや近所の人の姿が見えましたが、現代では「仕事」が子供たちから見えにくくなっている様にも感じます。
仕事を身近に「見て」・「体験する」ことで、そこから自分の将来の姿や可能性を見つけだして挑戦していく…そんなキッカケになってもらえたら幸せだと思っております。
又、中学生が後日送ってくれた感想文の中に、
「音の出ないピアノも直せばピカピカになってまた使えるってことがわかった。」
「ピアノを直すのは思ったより大変で、家のピアノは大事にしようと思った。」
などと、嬉しいコメントがたくさんありました。
中古ピアノには新品とはまた違う魅力がたくさん詰まっています。
そんな魅力を今回はピアノクリーニングという一つの工程からご紹介させていただきました。
しかし!!
クリーニングだけではまだ外装しか生まれ変わっていません。
大切なのは人間もピアノも「中身」であります!!(笑)
これからはピアノの中身の修理を10回に分けてご紹介していきます。
普段は見ることのできないピアノの部品や道具がどんどん登場します!!
次回は私カワイに代わりまして、再びハラキが「ピアノ修理1:ブッシングクロス交換」についてご紹介いたします。ブッシングとはいったい何なのでしょうか・・・!!?
ご期待ください!!
ピアノ再生物語「ピアノはこうして生まれ変わります」シリーズはこちら
- 第16回「キャプスタンボタン調整・ならし・あがき」
- 第15回「整調3 打弦距離・ハンマー調整・ウイッペン調整」
- 第14回「整調2 ネジ締め・鍵盤整調・ピン磨き」
- 第13回「整調1 整調とは何か」
- 第12回「修理10 ダンパーフェルト交換」
- 第11回「修理9 ネジ穴不具合・埋め木修理」
- 第10回「修理8 白鍵盤上面交換」
- 第9回「修理7 ハンマーファイリング」
- 第8回「修理6 張弦」
- 第7回「修理5 センターピン交換」
- 第6回「修理4 ハンマー膠切れ」
- 第5回「修理3 フレンジコード・ブライドルテープ交換」
- 第4回「修理2 鍵盤木口交換」
- 第3回「修理1 ブッシングクロス交換」
- 第2回「中古の魅力大公開!ピアノクリーニングと中学生職業体験」
- 第1回「バフがけ!!」
島村楽器ピアノセレクションセンターについて
ピアノセレクションセンターは、専用工房を併設したアコースティックピアノ専門のショールームです。
フロアには、新品・中古ピアノ、アップライト・グランドピアノを合わせて常時100台以上を展示しております。また、専用工房ではピアノの調整・点検・修理を行い、アフターフォローにもお応え致します。