島村楽器公式ブログ

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ルシアー駒木のギターよもやま話 その108「ギターだって抗菌/抗ウイルス!」

皆さまこんにちは。

この2か月ほどは、ハードな移動を伴う出張は無くなり、タフなリペア作業も少なく、
結果エナジードリンクの消費量が極端に少なくなるという、身体にとっては良い変化もあったのですが、
販売数が落ちた事による安売りエナジードリンクが店頭に並び、結局それをまとめ買いした、
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ルシアー駒木です。


緊急事態宣言が解除された事で、私の通勤電車内の様子も、自粛前の感じに戻ってまいりました。
自粛によって感染拡大を防ぐ段階から、次のステップへ進んで行かねばなりませんね。

周りを見ると、私も含め、身の回りにあるものを消毒する習慣がこれまで以上に広がった気がします。
ドアノブや手すりなど、不特定多数の人が触れる場所は勿論ですが、スマホに代表される「個人所有物」も消毒する方が増えたとの事。
それを介してウイルスを移動させてしまう可能性があり、また、そもそも想像以上に汚れているという話も同時に広がった事が大きいようです。


うーん、技術者として何か出来る事はないかな
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、、、と思ったルシ駒、
ふと、十数年前に店頭のリペアでお受けしたご依頼を思い出したのです。
それが今回のテーマにつながる、「抗菌コーティング」!

詳細は割愛しますが、私のリペアブースにいらしたお客さまのご友人が入院されておられ、「病院内にギターを持っていきたいけどギターに抗菌の加工みたいなのは出来ないの?」というご相談でした。
全く無知でしたので、色々調べて作業した、当時の思い出。

今なら当時よりももっと効果的なものが出来ると思い、今回準備を進めました。

今回ご用意したものとは、、、

そして、
今回私たちがご用意させて頂いたのは、
3段階!
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「抗菌/抗ウイルス塗装 & コーティング & ワックス」

まずは、塗装

まずは正にプロの作業とも言える、「塗装」から。

使うのは、⇓これ
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「何なのかは企業秘密ですよ!」みたいな記事にしようと思ってボカシをいれたんですけど、単に怪しい写真になってしまった(笑)

これはちょっと特殊な液体でして、簡単に言えば、既存の楽器用塗料をこの液体によって抗菌/抗ウイルスの塗料に変える事が出来るのです。

ですから、皆様の楽器の現状にコーティングするように被せて吹き付ける事は勿論、この機会に色を変えちゃおう、エイジド加工にしてしまおう、ウレタンをラッカーに塗り替えよう、、なんて、リフィニッシュがてら抗菌/抗ウイルス仕様にしちゃうのもOKです。

しかも、ラッカーでもポリウレタンでも塗料種を問わず可能です。

作業前後写真撮ろうと思ったのですが、写真では抗菌/抗ウイルスになっているのかどうか分かりませんので止めました(笑)



この作業は基本的に「塗装」ですので、ある程度の手間を要しますが、それと引き換えに「菌やウイルスが付着してもその場で不活性化されてしまう楽器」に皆さんの楽器そのものを変えてしまう事が出来ます。
塗面でない指板などにも可能です。

一点だけご注意。

この仕上げはその塗装の性質上完全な艶アリには出来ませんので、3分~5分つや消しのような状態になります。
試しに出来るだけ差が出ない様にルシ駒技術で塗装してみました。
このように正面からの写真であれば、あまり大きな差は感じないかもしれません。
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ですが、同じ角度で光を反射させてみると、

こちらがノーマルなクリア塗装
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そしてこちらが抗菌/抗ウイルス仕様のクリア
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どうですか?少し光の反射が違っているのがお分かりかと思います。
どうしてもこのような仕上げにはなりますので、ご承知おきください。(もちろん完全なつや消しにする事や、エイジド加工的な仕上がりにすることも可能です)
下地となるカラーや木材のカラーによってもその感じが違いますので、是非直接細かな仕上げ打ち合わせを致しましょう!
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こちらは、
「大腸菌及びブドウ球菌を0.5ml滴下し、ポリエチレンを被せて35℃での保存状況で24時間後の生菌数を測定」
という試験を実施した結果がありますので、ご覧ください。

  • 対照・・・プラスチックシャーレ
  • 検体1・・・何もしていない無処理のアクリル板
  • 検体2・・・ウレタン塗料をこの抗菌/抗ウイルスにしたものを、アクリル板に塗布したもの

となります。

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24時間後、シャーレ内(対照)・検体1では共に凄まじい数に増加していますが、検体2(今回の塗装)では何と10以下。
まさに絶大な効果を確認できています。


次は、コーティング


皆さまの中には、抗菌/抗ウイルスにはしたいけど、塗装までの加工はちょっと抵抗あるなあ、、、もう少し簡易的なものはないのかなあ、、、楽器にあまり手を入れたくはないなあ、、、という方もおられますよね。
そんな方に向けては、ちゃんと少しライトなやつをご準備させて頂きました。
それがこちら。

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これは塗装を塗り替えたり重ねたりする事はなく、皆さんの楽器表面にそのまま「コーティング」するコーティング剤になります。

塗面そのものが抗菌/抗ウイルス化される訳ではないとはいえ、表面をしっかりコーティングしますので、効果はある程度期間持続。パーツにもコーティングできます。

勿論、環境科学センターによる抗ウイルス性能評価試験において抗ウイルス効果を示す事が認められたものです。

最後は、ワックス

そして、更にライトな、「洗浄・抗菌のワックス」もご用意しました。
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こちらはワックスとして表面に塗りこみますので、これだけで承る事が出来るのは勿論の事、
通常のメンテナンスやリペアの仕上がり時に僅かのアップチャーをして頂く事で、作業終わりの拭き上げ時、既存の仕上げワックスと置き換えられます。

こちらはワックスが表層に乗っている限り持続します。塗装やコーティングより簡易的で抗菌期間も短くなるとはいえ、それでも除菌スプレーのような「その瞬間だけ」ではありません。

JIS Z 2801 抗菌性試験方法で定められている試験方法で2.0以上であれば抗菌効果があると認められた抗菌活性値で見ても、黄色ぶどう球菌で2.9、大腸菌で6.1という高い試験結果を得たワックスです。

効果抜群

これら3パターンに共通して言えるのは、結果的に防カビや防汚、消臭という効果を得る事にもなりますし、有害化学物質も分解除去出来ますので、コロナ感染に関してやそもそも抗菌や抗ウイルスに関してそう神経質でない方にとっても、かなりメリットがあります。

塗装に関しては年単位でその効果が持続しますが、コーティングやワックスはそれ自体が表面に残っている間は、という事になります。
持つ期間は、車のコーティングやワックスをイメージしてもらうと良いかもしれません。


如何でしたか?

ラックストアやホームセンターに行けば、所謂除菌スプレー的なものは入手できますので、それをご自身でコマめにスプレーして除菌するのも勿論良いと思います。

が、
スプレーの成分と塗装種の組みあわせによっては塗装を痛めてしまう事もありますので、注意が必要です。
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今回ご案内する方法はどれも私たち技術者が行いますので、皆様の楽器を拝見し、塗装状態など確認させて頂いた上で、ご案内致します。
仕上がり具合他、まずは相談してみて、が一番安心ですよね!


個人所有のギターに施す前提で書かせて頂きましたが、音楽教室の備品ギターやスタジオのレンタル楽器などに行うのもとても効果的ではないかと思います。
楽器をレンタルされる形態・共有楽器があるような形態で、事業運営されてらっしゃる皆様、御一考を!

店頭リペアマン常駐店ではリペアマンにお声がけ頂ければ、細かなご相談を承る事が可能です。
勿論全国の店舗で受付可能な準備を急いでおりますので、まずはお気軽に店舗スタッフにお声がけください!

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ルシアー駒木でした!


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