島村楽器公式ブログ

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リペアマン・ルシアー駒木から見た、ハイエンド・ギターGrosh Guitarsの「20周年記念モデル」

Grosh Guitarsから「20th Anniversary Model」が発売!

島村楽器が代理店をつとめるGrosh Guitarsの「20th Anniversary Model」発売を記念して、Grosh Guitarsを取り上げてみたいと思います!

「Don Grosh(ドン・グロッシュ)」として世界で名を馳せ、注目を一身に集めるハイエンド・ギター、「Grosh Guitars(グロッシュ・ギター)」。

今特集ではGrosh Guitars(Don Grosh)のクオリティの高さをご紹介していきます~

Grosh Guitars(Don Grosh)とは?


Grosh Guitarsは、Don Groshが1993年に創設したハンドメイド・ギター工房です。
Don Groshはかつて北ハリウッド(カルフォルニア)の
Valley Arts(バレーアーツ)ショップに所属し、
ラリー・カールトン、スティーブ・ルカサー、ジェイ・グレイドン、リー・スクラー、ヴィンス・ギル、リー・リトナーなど数多くのミュージシャンのギターを製作した、
スゴ腕ギター・ビルダー。
彼は、徹底的にこだわるミュージシャンの要望を聞き、
実現のために考え抜き、実験を繰り返すことで、独自の製作スタイルを構築しました。
Grosh Guitarsの中でも人気モデルとなっているRetro ClassicはUSAギタープレイヤー誌で
今までどのギターにも与えられたことの無い最高の評価を得たモデルです。

ルシアー駒木から見るGrosh Guitars

Grosh Guitars正規代理店である島村楽器の検品を担当するルシアー駒木
島村楽器公式ブログにも「ルシアー駒木のよもやま話」で度々登場してギターにおいて圧倒的な知識と経験をを持つ彼は、数々のアーティストと仕事をしたり、彼らのためのギターを製作してきたつわもの。

Don Grosh検品はルシアー駒木しか許されていません!!
そんなルシアー駒木のGrosh Guitars検品に立ち会って、
その魅力について話を伺ってきました!

Grosh Guitarsほど楽な検品は無いかもしれない(笑)

まず、Don Groshとはどんなギターなのでしょうか?

僕はこれまで島村楽器が代理店をつとめる
ありとあらゆるギターの検品を行ってきました。
ただ、僕が検品をするということは、
求められるのが検査というより「セットアップ」になるわけですね。

その楽器が一番鳴る状態にして出荷することが仕事になるわけです。
だから検品という作業に関して、時間をかけてじっくり、丁寧に行うもの。
でも、Don Groshはホントに楽(笑)

というと、Don Groshは「鳴る」ようにする手間がいらないと?

他のギターが“悪い”というわけじゃないですよ。
ほとんどのギターは、工場で決まった寸法で製作され、
決められた値でセッティング基準で検品して出荷されている。
あくまでも規定どおりに均一なレベルの品質が求められているんですね。

でも、
「本当はこの個体はもう0.2mm高が低いほうが鳴るのに」という事もおこります。


でもDon Groshは違う。
入荷した時点で「一番鳴る状態で届く」んですよ。
鳴らしてみると、「Don Groshさんはこういう音のイメージで
セッティングしてるんだな」って分かるんです。

これがDon Groshのギターに対するアプローチなんです、きっと。
「この個体はローが強くでる個体でした、この個体はキラキラした音の出る固体でした。
好きな方を買ってくれればいいですよ」っていうのがDon Grosh流というか。
「この音を気に入らないなら買ってくれなくてもいいですよ」
っていう姿勢ですよね(笑)

高飛車なわけじゃないですよ。あくまでもその個体その個体の個性がありますから、
それが気に入らないなら仕方ないって事です。

じゃあDon Groshが入荷した時点ではほとんどする事が無いんですね。

そうですね。
海を渡って入荷してきたものは、
そのとき日本が夏なのか、冬なのかといった気象的な条件で
「ちょっと木が動いた」っていうのを調整するだけで済んじゃいます。

Fenderを愛して、さらに「今の自分の技術で作るとこうなります」っていう・・・

メーカーと比べると、Don Groshの音の特徴はどういった感じですか?

Don Groshのギターの作り方は、木と対話するようなイメージなんです。
「この材を使って出来上がったこの個体はこういう子(ギター)だから、
こういう風にセッティングしてあげよう」みたいな。

それがDon Groshらしさだと思います。
他のブランドと決定的に違うのがそこだと思うんですよね。

他のハイエンド・ギターブランドとは系統が違うと?

そうですね、たとえば島村楽器オリジナルの、HISTORY
HISTORYはまた違うアプローチで、
“高いクオリティで均一的なもの”を作ろうとしてます。

HISTORYならこのレベルのクオリティを必ず提供できます。
島村楽器が会社としてお約束できます」っていうアプローチなわけです。

あとはよくDon Groshと引き合いに出されるのが
SuhrSadowsky、Tom Andersonあたり。

みんなFenderGibsonから何かしら学んでいるわけですよね?
歴史や作り方、先人たちの知恵をもらって、
さらにそのFenderを超えようっていう意識が見える。

Fenderに負けないように、Fenderに勝つぞー、みたいな。

でもDon Groshのギターって、もうFenderを愛しちゃってる感じがする(笑)
Fenderを超えようというよりは、FenderFenderですばらしいと。

それを完全に認めたうえで、そのFender愛を認識しつつ、
「今の自分の技術で作るとこうなります」ってことなんでしょうね。

だからVintegeなテイストも持ちながら、2点支持のトレモロブリッジを使ったりもする。
かといってどんどん先進的な技術を盛り込んで作ることはしない。
そういうところもDon Groshらしさなんですよね。

だからSuhrSadowsky、Tom Andersonとは
ギターに対するアプローチが違うんだと思います。
良い悪いじゃなくてね。

ヴィンテージでもモダンでもある、みたいな?

そうですね。
Suhrを弾いて「ヴィンテージな音がするギターだね~」とは思わないですよね。
逆にFender Custom Shopのレリックなんかを弾いて
「モダンな音だね~」とは思わない。

Don Groshに関しては
ヴィンテージ好きな人が弾いたらヴィンテージらしさを感じられるし、
モダンなギターが好きな人が弾いたらモダンな音だと感じる。

それってDon Groshだけだと思うんですよ。

Don GroshさんがValley Artsから学んで、今の自分が作れる良いギターを、
Fenderを愛している自分を認めた上で作っているから出来ることですよね。

Sadowskyとかはホントに作りの良いギターの典型で、
ネックポケットとネックとの隙間がないような、クオリティの高いギターなんです。
だからこそストラトの音が出ないわけです。ルーズさがない。

それを良い悪いで判断するのはナンセンスだと思います。
弾き手が音の好みで買えばいい。

ネックだけは、結局握ってしっくりくる感じがないと駄目

Don Grosh弾き手に合わせてくれるギターなんですね。

とっても弾き手のことを考えて作られてますよね。

特にネックです。圧倒的に作りが良い。
ボディってある程度精度の高い機械で作れちゃうんですけど、でもネックは違う。
ネックは製図できちんとサイズを決めても、
結局握ってしっくりくる感じがないと駄目なんですよ。

僕が作ったギターを元CHICAGOのBill Champlinが弾いてくれていて、
感想をメールしてくれたんです。
一番褒めちぎってあったのがネックで、「ネックだけかい!」ってなったんですけど(笑)

うまい人ほどどんなネックでも弾きこなしちゃいつつも、
だからこそホントに合うネックだとグッと来るんでしょうね。

Don Groshはセンスでしかなし得ないところをしっかり作っているというか、
そういった所がスゴイですよね。

やはり手工品でないと出来ない境地ですね。

はい。
じゃあ実際に僕ら作り手が見ると「こりゃ手が込んでるな~」
ってところを紹介しましょう。

まずこのヘッド。
一般的なギターは、ヘッド先端からこの6ペグあたりまでが平面なんです。


で、ナットの3mm手前から指板になる。

その間を緩やかなアールでつなぐのが一般的で、
機械で削って、最後に手で仕上げれば出来ちゃうわけです。


でもDon Groshは、この定規の先端くらいまで平面になってますよね。

そこから一気に指板面まで持ち上がってる。
これはすなわち、「手で削っています」ってことなんですよ。


次にボディのこのコンターを見てください。

これが「Valley Arts出身」を強く感じるんですよね~(感嘆)
全体が曲面になってます。
工場で量産するようなギターは平面で削るのが一般的ですよね。



でもDon Groshは曲面で削って、



最後にこの部分をまた曲面でつなげる、と。
これはふつう一工程でやるんですが、三工程かけてる。


さらにネックとボディの継ぎ目。

ここが平らになってますよね。

他の高価なギターでもここはなかなか平らにならないんですよ。
これ結構ムズカシイんです。
これは手が込んでますよね。
フレットの仕上げも丁寧です。


このネックのカーブもそう。

この曲面ぐあいは機械じゃ無理。
手じゃないと絶対出来ないんです。


最後にピックガードのこの角も仕事が細かいですよね~

でもこういった細かい仕事を売りにしていないところもDon Groshなんですよね。

あくまでも普通のことだと?

そうです。
生産工程として通常の事なので、そこを大々的にアピールしない。
とにかくその工程から最後に生まれてくる音、演奏性、そこが勝負。

生まれてきた音に対して、その個性を引き出す調整をして、出荷する。
だから僕の仕事が楽になる(笑)
そういうギターですよ。

最近、国産の手工ギターも人気が高いですよね。かなりしっかり作られていますが、それと比べるとどうでしょう?

日本人は丁寧に作ることが美徳という文化があると思うんです。
だから昔は個性があまりなかったように感じますね。
でも今、日本人のビルダーさんが好みがしっかり前面に出している印象を受けます。
“良い/悪い”じゃなくて、ビルダーさんの好みがはっきりギターに反映されてますよね。
そのビルダーさんのギターはそのブランドの音に包まれてますよ。

どちらも丁寧な作りであることには変わらないですが、Don Groshとは違う方向性だと思います。


ちなみに、こういったところにもDon Groshの丁寧さが現れてるんです。

よ~く見てください。


ボディのネジ穴一つ一つがきれいに面取りされてます。
この手間はスゴイですよね。

これによって塗料の穴からの割れや剥離を防げるんですね。
細かいところまで手を抜きません、Don Grosh。

Don Groshさん、そしてルシアー駒木が“鳴る”ようにセットアップしたGrosh Guitars。買った後にネック調整するのも不安になりそうです(笑)

お客様で、定期健診的に出していただく方も多いですよ。
正しい判断だと思います。
ぜひ店舗を通じてギターリペア工房に出してください。
僕が責任を持って健康診断します!


ドン・グロッシュの20周年記念モデルや、その他のグロッシュ・ギターはギタセレで見ることができます。

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