みなさんこんにちは!ピアノセレクションセンターのナカウチです。
前回PSCのウチヤマがお届けした調律工具特集はいかがだったでしょうか?調律工具についてプロとしてのこだわりを、ちょっとはご理解いただけましたでしょうか?
前回の記事はこちら
前回に引き続き、工具特集の第2弾をお送りいたします。
今回は、自称・工具オタクの私ナカウチが、ピアノの調整をするときに必ず使用する工具である「ドライバー」を徹底的にご紹介いたします!
念のため、ドライバーって何?って方のために、簡単にご説明します。
ドライバーとは要するに、「ネジ回し」のことです。
+とか−とか色々な種類があるアレです。
たいていのご家庭には、1本以上はあるのではないでしょうか。
300年の歴史を誇る由緒正しき楽器、ピアノにネジなんか使われてるのかって?ピアノの中も外も裏側も実はネジだらけなんです!!!
チューニングハンマーがないと絶対に調律することができませんが、ドライバーもまた、ないと確実にピアノの調整はできません。
これらは私の工具カバンの中に詰め込まれているドライバーたち
こんなに要らないだろ〜! !なんて言わないで下さいね。
どれもこれもちゃんと使われているものばかりですから。(笑)
ピアノに使われているネジと一言で言っても、その種類は名称があるものだけ数えてみても20種類以上はあります。名も無いネジまで含めたらホント、数え切れないほど。大きさや形も本当に様々なんです。
ネジが変われば、その形や大きさ・使われている場所に合わせて、ピッタリと合うドライバーが必要になってきます。
ピアノの調整のプロとしては、お客様が大切にされているピアノのネジ山をナメる(つぶす)わけには参りません。
工具が増えてしまうのも、プライドとコダワリがあってのことなんです。
まぁ、工具ヲタのコレクター癖も多少は影響してますけど。。。(笑)
当たり前に使われているドライバーたちだからこそ、今回はその1本1本のコダワリポイントを存分に語らせていただきます!!
握り続けて…12年!
調律する度に毎回登場し、日々大活躍のマイナスドライバー
ピアノのアクションに使われているネジ(大きめ)を絞めるのに使います。ドライバーの先が黒くなっているのは、アクションの狭い隙間にドライバーをすべり込ませやすいように、自分でヤスリで削って加工してあるからです。サビているわけではありません。
同じく毎回登場のプラスドライバー
ピアノのアクションに使われているネジ(大きめ)を絞めるのに使います。
ピアノのアクションに使われているネジは、同じ箇所のネジでも、メーカーや機種・製造された年代によってプラスだったりマイナスだったり、ネジの種類が変わります。
1番のお気に入りマイナスドライバー
ピアノのアクションに使われている、小さめのネジを絞めるのに使います。
PBっていうスイスのメーカーのマイナスドライバーなんですが、その使い心地は癖になります。
握り心地、しっくりと手に馴染むかんじ、ドライバーの先端も独自の形状をしてます。ネジ山もナメにくくて、最高です!
あまりの使い心地の良さに感動し、同じドライバーを紛失、破損に備えてスペアを二本ウチに備えているほどです(笑)ヲタクを超えてマニアですね。
先ほどのお気に入りマイナスドライバーの姉妹品。同じメーカーのプラスドライバーたち
このコらも使い心地最高です。!!
譜面台などに使われている真鍮製の小さなネジのように、山をナメやすいネジを絞めるときには、神がかり的な働きをしてくれます。
ガタつくことなく、ネジ山にドライバーの先端が吸い込まれるようにピタッとフィットします。だましだまし回す必要がないので、作業効率も大幅UP↑↑です!
一長一短? 大は小をかねない?
日常的に使う訳ではないけれど、ないととっても困るようなメインキャラにない独特の持ち味のあるサブキャラドライバーたちをご紹介させてください。
細身でスレンダー、軸が細くて長〜いマイナスドライバー
普通のドライバーでは到達できない部品と部品の隙間をぬって、手が届かない奥底深くに眠るネジを絞めるのに大活躍します。ダンパーレバーフレンジスクリューは、これがないと手も足も出ません。
軸と握り部の短いマイナスドライバー
狭くて手の届かない所に使う長いドライバーも必要ですが、これはドライバーの長さが邪魔になるような所に活躍します。グランドピアノのベッディングスクリュー(カワイ)などはこれが丁度いいかんじです。
軸と握り部が短いプラスドライバー
短すぎて日常使用にはまったくの役立たずチャンですが、この子がいないとはじめることさえ出来ないような作業も結構あるんです。底板のまし締めとか、支柱裏の響棒固定ネジのまし締めとか。。。
まさに、最強のサブキャラですっ!!(笑)
変わり者系ドライバー
なぜネジは2種類あるの?
せっかくここまでドライバーについて語ったのだから、ネジについても語らせていただきます。
マイナスのネジは正式には「すりわり付き」ネジ、プラスは「十字穴付き」ネジといいます。
ほかにも四角や六角形の穴が付いたものがあります。車のナンバープレートや自販機など、いたずらされたら困るネジは花形など特殊な形をしていることが多いですね。
ピアノに使用されているネジたちのほんの一部分
ネジの歴史としてはマイナスネジの方が圧倒的に古いようです。 ネジは15世紀に発明されたとされていて、その当時はマイナスだけだったようです。マイナスはとにかく作り易かったからです。何でもいいから鋸歯を入れればできます。
プラスネジが発明されるのはそれからずっとあとの1936年。意識せずに使っているプラスネジですが、意外にも新しい発明品だったんです。
このプラスネジの利点はネジに対してまっすぐにドライバーを当てなくても力が込められるという点です。工場の自動化とともに、プラスネジが使われるようなりました。ロボットは、マイナスネジの軸がどこかわからないので、うまくネジを回せません。しかし、プラスネジであればこの問題が解決します。「電動ドライバー」がマイナスの駆逐に拍車をかけたともいえます。
ちなみに日本におけるプラスネジの歴史は、オートバイや自動車のメーカーとして知られる現・本田技研工業の創業者である本田宗一郎氏が、イギリスにレース視察に行った際に持ち帰り、それが定着したという説もありますね。
最近ではプラスネジに押されぎみのマイナスネジですが、まっすぐ力をいれないとうまく最後まで回せないという短所もありながらも、ねじ山に水がたまりにくい構造であるため、屋外での使用に適しているという利点が強みです。
現在の工業製品の多くはプラスネジで、マイナスネジは少しマイナーな存在になりつつあるようです。ピアノの中のネジは、まだまだマイナス勢ががんばってますけど。。。
今回のドライバ特集、いかがだったでしょうか。
たかがドライバーといえど、かなり奥が深いんです。日々使うモノだからこそ、こだわりだしたらキリがない。
究極の技術職『ピアノ調律師』のカバンの中には夢と希望だけではなくて、工具に対するこだわりが、まだまだたくさん詰まっております。
ただでさえ重いのに、どれだけカバンに詰め込めば気が済むんですかね(笑)
自称「工具カバン最重量」、夢と希望とこだわりを詰め込んで、更なるカバン重量の記録更新を狙います!!!
次回「調律師の必需品大公開 第4回」は、これら工具を入れて持ち運ぶための「工具ケース」について技術スタッフのウチヤマがご紹介いたします。
どうぞお楽しみに!!
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