島村楽器公式ブログ

全国展開している総合楽器店のスタッフが、音楽や楽器の楽しさや、楽器店にまつわるお話をお伝えします。

音楽力をアップする「耳コピのすゝめ 」

みなさんこんにちは。「耳コピ歴35年」のサカウエです。

前回はシュアのヘッドホンを聴き比べて「耳コピには良いヘッドホンが不可欠」という話をしました。
ヘッドホンが変わると「え、こんな音入ってた?」と今まで気づかなかった音が急に聞こえてくることもあるんですね。

d.hatena.ne.jp


さてその「耳コピ」ですが、意外と興味持っていらっしゃる方も多そうなんで、今回はこの「耳コピ」上達のヒントをお伝えしていきたいと思います。

あらためて耳コピって何?

耳コピ」は俗語なので厳密な定義はないのですが、ここでは原曲の演奏を聞き取る行為そのものを「耳コピ」と呼ぶことにしましょう(wikipediaとは少々解釈が異なります)

で、耳コピしてどうするの?ということですが

  • 原曲の演奏を聞き取って楽譜に書きおこす
    • 「採譜」
  • DAWなどにデータとして記録する
    • 「打ち込み」
  • 採譜しないで単に演奏
    • 「演奏」

などが主な目的だと思います。これらについては後から詳しくお話ししたいと思います。

ちょっと前に、JRの発車ベルをピアノで演奏する動画がYouTubeとかニコ動で話題になりましたが、あれも実は耳コピの成果なのですね。

耳コピ」がお仕事になっている人もいる

突然ですが皆さんがカラオケ店で歌う時、実はバックで流れているカラオケ曲の多くは「耳コピ」して作られたMIDIのカラオケ・データなんです。

最近は生演奏を録音したカラオケも増えていますが、大部分はDAWに「打ち込み」して制作されたMIDIのカラオケ・データを使っていて、それでカラオケマシン(コマンダーと呼びます)に搭載されているシンセサイザーを鳴らしているんです。(ケータイの着メロもほぼ同じと思ってよいと思います)

カラオケ・コマンダーの一種

Photo by wikipedia

カラオケ・データの制作者は、

原曲のCDを聴いて「耳コピ」→「採譜」(譜面作成)→DAWに「打ち込み」

という流れのお仕事をしているんですね。

なおこの場合、採譜して譜面に起こす人(楽譜書く人)と「打ち込む」人は必ずしも同一人物ではある必要はありません。

採譜が得意だけど打ち込みはまるでダメという人もいれば、楽譜を見ながら打ち込むことだけは、ベラボーに速いという人もいると思うので、そんなときはうまく分業する訳ですね。

あと採譜自体が行われないケースもあります。「え?じゃあどうやって打ち込むの?」ってことになりますが、これは「耳コピ」する人が同時に打ち込んでいくんです。

たとえばドラムの「ドンタンドドタン」というフレーズを耳コピしたら譜面に書くことはしないで、すかさずDAWに打ち込んで行っちゃうんですね。

採譜のプロセスを省略していますから制作時間は格段に短くなります。

「後で譜面が必要になったらどうするの?」という心配はご無用。
最近のDAWはスコア機能が充実しているので、打ち込んだMIDIデータを元にクオリティーの高い楽譜を表示したり、プリントアウトすることもできるようになっています(限界はありますけどね)


なぜ「耳コピ」するのか?

仕事でデータ作る人を一部の方を除けば、

「ソロやバンドで、本物と同じ演奏をしたいが楽譜が入手できない」

ていうのが一番の理由かと思います。楽譜が苦手な人の場合は、耳コピしたものを「暗記」するわけですね。

「入手できない」ってのは、有名なアーティストじゃないので発売されてないとか、廃刊になっちゃったとか、値段が高くてパパのお小遣いじゃとてもとても(泣)、ってことですね。

たとえばサカウエの好きなライル・メイズパット・メセニー・グループのキーボードプレイヤー)や、最近twitterで教えてもらったブラジル人ピアニストのヴィトーリアマルドナードの、ハーモニーの一音一音まで正確に採譜した完コピ・バッキングフレーズ集なんていうマニアックなものは、これは自分で採譜するしかないです、ハイ。

注)「完コピ」とは「耳コピで完全コピーする」という意味で、各楽器の演奏の非常に細かい表現とか、ボイシング(和音の重ね方)まで完全に採譜することです。耳コピのちょっとエラいヤツと思っていただいてよろしいかと思います。

こんな感じですね(見苦しいサカウエ手書きですみません)


コードネームだけじゃなくて、ここは実際にこう押さえてますよーと表記しています。

ちなみにサカウエは学生時代ジャズ・ビック・バンドでピアノ弾いていたんですが、バンドで演奏したい曲の楽譜が入手できない場合は、サカウエが全員のパート譜面の「耳コピ」担当でした。

一般的なビック・バンドのパート譜全員分というのは、トランペット4(5)本、サックス5本、トロンボーン4本、ベース、ギター、ドラム、ピアノとなんと17パート!

しかもトランペットとサックスってのは移調楽器といいまして、ハ長調の曲なのに、あの訳ワカらんフラットやシャープが付いた楽譜に書き直さなくてはならないという、鍵盤楽器奏者から見たら非常に理不尽に感じる楽器なんです(管楽器の方すみません)


実音は三つとも同じです。

いやー今思うとあのころは時間があったんだなーと思いますね。
でもおかげで色々な楽器の知識も得ることができて、非常に有意義な経験だったと今でも思っています。

ところで完コピは手間がかかる

ジャズとかフュージョンといったハーモニー的に難易度の高いジャンルほど完コピは困難になりますね。
たとえばジャズ系ミュージシャンだと同じコード進行の繰り返しであっても、同じ弾き方はまずしません。仮に6分くらいの長さの曲のバッキングを完コピしようとしたら、これはもう数日仕事・・・・になるでしょう。

でもさすがにコレは手抜きすぎかなあ

なお「完コピ」の程度も色々あって、たとえばギターソロの表記で

「ここはチョーキングでなくてスライド、でも良く聴いたらハンマリングだったワ」

とか

「ここは6弦の開放ではなくて5弦の5フレットなのー」

とかとか

「あーそもそもこれナッシュビル・チューニングなんで・・」

とかとかとか

「ここはC9sus4と書くよりGm7(onC)と表記すべきであろう」

などなど・・

・・・専門用語(鍵盤楽器の人には特に)はなんとなく聞き流してください。とにかく要求レベルも千差万別なので、採譜する人の苦労も思いやる心も必要ですね。

人間が耳で聞き取れる音ってにも限界がある

たとえば現代音楽のオーケストラ(しかも1965年録音モノラル音源)で、
「ジャンという変態和音オケヒットの「木管で上から3番目に高い音吹いてるのは誰でしょー?」

みたいなケースとか、

「新鋭アレンジャー入魂!15管編成バンドが一糸乱れず演奏する、超絶32分音符ハモり・フレーズの3番テナーサックス(2番アルトと3番は半音や全音でぶつかる場合が多いんです)」

こんなの正確に拾える(採譜できる)わけありません(おそらく)

こうした無理難題に対しては、最新耳コピテクノロジー(?後で説明します)を応用したチカラワザで聴き取りぬくか、それでもダメな場合は、音楽理論や長年の経験で、実際には聞こえない音を「想像」するということが行われたりします(たぶんです)。

耳コピ」のすゝめ

さてここまで読んでいただいて

耳コピってめんどくさいのね、私には関係ないわー」

と言ってるそこのお嬢さん、お願いですから最後までお付き合いください。

ここからが今回の記事の一番大事なところです。

えーと、「耳コピ」はパパのお小遣い節約という目的だけではなくて、もっとすばらしい効用があるんですね。

それは、様々な楽器のフレーズを耳コピしていくことによって

「聴き取るチカラが培われる」

ということです。そしてこの「聴き取るチカラ」は、

  • 演奏技術
  • コード進行やアレンジ等の音楽理論
  • センス

といった、楽器を演奏するために重要な要素をさらに上のレベルへ昇華してくれると思います。
(おーなんだか今回サカウエは良いコト言ってるかも・・・)

そしてこれは非常に大切なことですが、皆さんが耳コピの過程で発見したり、覚えたりしたことは、楽譜を見ただけでは得ることができない「音楽のエッセンス」を含んでいるのではないでしょうか。

もう一点、「興味をもって自分で学んだことは忘れにくい」・・・これは勉強と同じですね。

一夜漬けで得た記憶はせいぜい数日しか持ちませんが、自分で興味を持って調べたり読んだりしたものは一回で頭に入ってしかもずーっと記憶しているものですね。(サカウエは何故かすぐ忘れちゃうんで譜面に書き残しますが・・・)

というわけで耳コピには「百理あって一害なし」の非常に重要な「学習効果」もあるのではないかと思います。(気をつけなくてはならないのは、ヘッドホンの適切な音量調節で耳を守ることかなあ)

はいそんなわけで耳コピについて夢中で書いていたら、「耳コピ上達のヒント」まで辿り着かなくなってしまいました。
この続きはまた次回以降。
それではまた。

おまけ

本題とはカンケイないですが、前述のヴィトーリアマルドナードのこのビデオは非常にすばらしいので紹介しておきますね。

ライル・メイズのピアノが堪能できるオススメはこれ。

Street Dreams

Street Dreams

© Shimamura Music All rights reserved.