島村楽器公式ブログ

全国展開している総合楽器店のスタッフが、音楽や楽器の楽しさや、楽器店にまつわるお話をお伝えします。

音楽力をアップする「耳コピのすゝめ 」第8回 ダイアトニック・コード

こんにちはサカウエです。

たとえ聴き取りにくい複雑な和音であっても、コードの知識があれば、構成音をある程度は推測できるようになる場合があります。

そんなわけで今回はコードの基本となる「ダイアトニック・コード」について書いてみたいと思います。

メジャースケールのおさらい

ダイアトニック・コードを理解するためにまず、メジャースケールについておさらいしておきましょう。

「ドレミファソラシド」という音列で、各音の距離を全音半音で表現すると

「全全半全全全半」という配列になっているのがわかります(全:全音=2半音)


黒丸の「ド」からオクターブ上の黒丸「ド」までがそうなっていますね。

逆に言えば、12の音のどこからでも、「全全半全全全半」という規則で音を並べれば「ドレミファソラシド」(風)に聞こえるということになります。(絶対音感ある人は大変かなあ〜)

たとえばミからはじめれば


シからはじめると


ちゃんとそう聞こえますよね?
それぞれを、Eメジャースケール、Bメジャースケールといいます。
「全全半全全全半」という音列は必ず丸暗記してください。はいココ出ます。

※マイナースケールはいろいろ種類がありますので下のリンクを見てくださいね。

ダイアトニック・コード

コード関連の解説書には絶対コレ出てきます。コードを理解するためには必須なのでどうしても避けて通れないとこです。

メジャー(マイナー)スケールの各音の上に三度ずつ音を重ねたコード群を「メジャー(マイナー)ダイアトニック・コード」とよびます。三和音または四和音で表記しますが、どちらもコードの機能は変わりません。

メジャーの場合は単に「ダイアトニック・コード」と呼ばれます(以降メジャー・ダイアトニックコードで話を進めます)

たとえば Cメジャー のダイアトニック・コードは下記のようになります。

全部で7つのコードが生まれますが、各コードを構成している音は(今のところ)すべてCメジャースケールに含まれる音です。

さて、ダイアトニック・コードは「メジャー・スケール上の各音に3度音を重ねた和音の集まり」なので、どのメジャー・キーで試してみても、一番目のトニックは必ず「○maj7」になるし、二番目は「○m7」、五番目のドミナントは「○7」となりますね。

したがって体系的に表記する場合は;

I maj7 IIm7 IIIm7 IVmaj7 V7 VIm7 VIIm7(b5)

といったローマ数字で表記されます。

たとえばこの曲は

VImaj - IIIm7 - IIm7 - Imaj7 という進行ですね。

キーが「A」では Dmaj7 - C#m7 - Bm7 - Amaj7 となります。
(トニック・コードから始まっていないことにも注目してください)

今後、各コードの機能を把握したりコード進行を分析する上でこのローマ数字表記は重宝します。はいここ出ます。

7th(セブンス)とmaj7th(メジャーセブンス)

間違いやすいのがコレ。セブンス 7th(短七度)、maj7th(長七度)
(ここでいうセブンスは ルート、3rd,5th,7th というように度数をあらわします)

コードがメジャーかマイナーか?という区別は、セブンス音とは関係ありません。

たとえばDm7というのは Dm(Dマイナー・トライアド※)に「7th」が足されたという意味・・・ふんふん。

「D7」は(Dメジャー・トライアド)に「7th」が足されたもの・・・はいはい。

「Dmaj7」は「D」(Dメジャー・トライアド)に「メジャー7th」が足されたということ・・・・なるなる。

「Dm」に「メジャー7th」が足されたものは「Dmmaj7」(Dマイナー・メジャーセブンス・コード)・・うーん。

これを区別できればO.K.牧場(古いね)。

※トライアド=三和音=三つの音で構成された和音

「Cmaj7」(シー・メジャーセブンス=ドミソシ)というコードは、本来ならば「Cmajmaj7」(シー・「メジャー・トライアド」・メジャーセブンス)と呼ぶのが正しいハズですが、さすがに長過ぎるので「メジャー・トライアド」が省略されております。ただこれが勘違いしやすい原因でもあります。

はい、混乱してきた方は落ち着いてもう一回読み返していただけたら幸いです。。。

とりあえず、

「7th」はルートの一音下の音。「maj7th」はルートの半音下の音

と覚えると良いと思いますよ。

コードの展開形

コードを演奏する場合、ルートを最低音にした形が「基本形」。その他の3度、5度、7度が最低音になるものを「展開形」といいます。響きは変わりますが、コードの機能は変わりません。

たとえばキーボード・プレイヤーがコードの「展開形」を演奏しても、ベーシストは通常ルート音を演奏します(またはキーボードが左手でルート音を演奏します)。したがってアンサンブル全体で「一番低い音」はルート音になります。

もしCmaj7(ドミソシ)というコードでベースが「E音」とか「G音」であった場合は

というコードネームで表記しなくてはなりません(右手が展開形であろうとなかろうと)。

さて、コードの基本形だけで曲を演奏すると非常に不自然に感じられますが、それは和音のトップノートが跳躍しすぎるなどして、音と音のつながりが悪くなるからです。

したがって通常は展開形を用いて音を自然につなげるようにします・・・最初は展開形が違うコードに見えちゃったりしますが、慣れの問題なのでがんばってください。

では「Dm7 – G7 – Cmaj7」というコード進行で基本形と展開形を聞き比べてみましょう

基本形


[file:shimamura-music:111008_08_dgc_basic.mp3:sound]

展開形


[file:shimamura-music:111008_10_dgc_inv.mp3:sound]

後者の方が自然に感じられると思います。
(ちなみに「IIm7 - V7 - Imaj7」という進行は俗に「トゥーファイブ」といってよく使われる定番進行です)

なおボイシング(音の重ね方)のコツですが、中央の「ド」付近で和音をまとめるようにすると安定したハーモニーを得ることができます。
実際の楽曲アレンジでは、通常この帯域で和音が演奏されています(意図的に高域のボイシングで、特殊効果を狙う場合、等の例外もあります)。

コードのネーミング

コードネームは「直感的に理解されやすい」ことが大切なので、

「Am7(onC)」「Bm7(b5)(onD)」よりも「C6」「Dm6」と表記するのがシンプルでわかりやすいですね。

(両方ともコードの構成音は変わりません)

「C#m(#5)onA」と書くとなんだかワケが分かりませんが、これはただの「A」(ラ・ド#・ミ)のことです。

コードの「機能」を反映したい場合には例外もありますが表記は「わかりやすい」ことが大事だと思います。

各コードの機能

7つのダイアトニックコードを機能別にカテゴライズすると

トニック群 (T):Imaj7、IIIm7、VIm7 

サブドミナント群 (SD):IVmaj7、IIm7

ドミナント群 (D):V7、VIIm7(b5)

といった機能分類になります。

つまり「Imaj7」「IIIm7」「VIm7」の三つのコードは共通の機能を持った仲間ということですね。

Cメジャーキーの場合であれば

トニック群 (T):Cmaj7、 Em7、 Am7

サブドミナント群 (SD):Fmaj7、Dm7

ドミナント群 (D): G7、Bm7(b5)

となりますね。(ブルースでは、7thコードがトニックになったりしてややこしいんですが今回はパスします)

さて、前回紹介したドミナント・モーション以外にも、コード進行の基本となるものがあります。

  • D - T : ドミナント・モーション
  • SD - T : サブドミナント終止(アーメン終止とも呼ばれます)
  • SD - D- T : サブドミナント・ドミナント

ビートルズの[Let it Be]は下記のようにダイアトニック・コードだけでできていますが、

C – G – Am – F – C – G – F – C

という進行の「F - C 」のところは「サブドミナント終止」ということになります。

ところでモーツアルトなんかもそうですが、よくまあ「ドレミファソラシド」だけでこうした名曲が作れるもんだなあ〜と思います。

代理コードをつかってみよう

代理コードというのは「コードの機能が同じであればお互い代理として使えますよー」というコードのことです。

「課長補佐」と「課長代理」はどっちがエラいんだ?という疑問が生じることはありますが、コードの場合はそういった配慮は不要です。先ほどダイアトニックコードを機能別に三種類に分けましたが、仲間同士はそれぞれ平等に「代理」として使えるのです。

つまり、

Cmaj7 – G7 – Cmaj7

というコード進行は、

Cmaj7 - G7 – Em7 – Am7

という進行に変えてもO.K.牧場。

続けて演奏してみましょう

[file:shimamura-music:111008_11_AGEA.mp3:sound]


いかがしょうか?後半はさらに発展していきそうな雰囲気になりましたよね。

なお先ほど紹介したツーファイブは、実は「サブドミナント・ドミナント進行」の「IVmaj7」を、代理コードである「IIm7」に変えたものだったんですね。

  • IVmaj7 - V7 - Imaj7
  • IIm7 - V7 - Imaj7

このように代理コードを使うことでバリエーションつけることができるんですが、いま紹介したのは「ダイアトニックな代理コード」といいまして、要するにひとつのキーの中で動いているだけ・・・つまり劇的な変化はまだ起きておりません。

実は他にも「ノン・ダイアトニックな代理コード」といって「親会社から出向してきた次長代理」みたいな理解難易度の高いものが存在します。ジャズなどではごく当たり前に使いますが、一時的転調が起きてキーもめまぐるしく変わったり、和音も複雑になったりと、難しい話になってくるわけですが、このあたりは後ほどご紹介したいと思います。

というわけで今回は少々アカデミックな内容になってしまいましたが、次回はテンションについて書いてみたいと思います。それではまた。

音楽力をアップする「耳コピのすゝめ 」第7回 コードのお話その2

みなさんこんにちは、秋も半袖サカウエです。

前回は耳コピに役立つ音楽の知識についてメジャーとマイナー・コードを紹介しました。
「三度音」が重要ということはご理解いただけましたでしょうか?

前回の記事はこちら。

今回はコードの基本をできるだけ体系的に説明してみたいと思います。

演歌と西洋音楽

サカウエの父親はいつも「演歌は日本人の心じゃー」といってカラオケを歌っておりますが、確かに「ヨナ抜き音階メロ」や独特の歌唱方法(こぶし等)、文学性表現技巧(漁師系、祭り系、雪国系、踊り系・・等々)といった点は独特のものです。

しかし実のところ演歌は西洋音楽の調性に基づいた語法で作られている音楽です。
(本人にはあえて知らせておりませんが「幸せ夫婦もの」というネーミングはなんとかしろと思います)

ところで、King Crimson(有名なプログレッシヴ・ロック・バンド)のStarlessという曲は妙に演歌っぽいです。
www.youtube.com
※イントロのストリングス(メロトロン)は2音しか使ってませんね。
3rd音の使い方が効果的です(前回の復習ですよー)

クリムゾンつながりでコレも・・こんな時代があったんですよ奥さん
www.youtube.com

いや、あのー・・歌詞すごいですね...

ザ・ピーナッツ」ご存知の方は40代以上だと思いますが、70年代「和製ポップス」の代名詞的存在です。

いまだったら KARA と AKB48 が一緒になってレディオヘッド歌っているくらいのミスマッチ度かなあと思います・・・すみませんこの場に適切な比喩がぜんぜん思いつきません(:_;)

ほとんどの曲が西洋音楽‥‥‥なんだけど‥‥

ということで、われわれが普段聞いている音楽(ロック、ポップ、ジャズ、ダンス、etc..)は(良し悪しではなく)ほとんどが「西洋音楽(ヨーロッパ音楽:中心は17-20世紀にかけて発展したもの)」が基本となっております(調性音楽というヤツですね)。

ところで西洋音楽の理論というのは、数百年(?)の歴史の中で、

「この音はみんなが気持ちヨイと感じたので O.K. でもその音はみんなが気持ち悪いと感じたからN.G.」

‥‥といったいわば経験則の集大成みたいなものなんですね。
(周波数との関連性等、科学的な根拠もありますが)

したがってもしあなたが周りの人と全く異なる感受性を持っていても、それはそれ、あまり気にしなくてよいと思いますよ。

「民族音楽とか、現代音楽はどうなん?」というご意見は、まことに恐縮ではございますがそれはまた別の機会に是非よろしくお願いいたします。

以上を踏まえて次に進みましょう。

調(キー)って何?

コードを理解する為には曲のキーを理解することが大事ですね。
以前も紹介した「起立>礼>着席」のコード進行を覚えてらっしゃいますか?

C(起立)– G(礼)– C(着席)


[file:shimamura-music:110929-02_CGC.mp3]

Beatlesの「Let it Be」にも、CとGのコードは使われていましたね。
さて両者で共通することは、いずれも「C」(着席)のところでは、なんとなく安定した感じに聞こえるということです(終止感)。

そもそも調性音楽では1オクターブを12に分割して色々な音階(スケール)とかあるわけですが、ある曲のメロディーや和音は、中心となる音(主音、中心音)が決まっていて、それに関連して曲が構成されています。

この場合はC音が中心音ですので、この曲のキー(調)は、Cメジャー(ハ長調)ということですね。

ご存知のとおり、キーには長調(メジャー・キー)と短調(マイナー・キー)がありますが、

ピアノ協奏曲第294番「嬰イ短調」作品1332

という作品がもしあったとしたら「嬰イ短調(A#m)」というのがこの曲のキーです。

ちなみにA#mってのは「#」が7個も付くという「初心者お断り」みたいなキーですが、それよりもこの作曲者の多作さが気になるところです。

なお、いずれ紹介する「一時的転調」等によって、実際は1曲の中でキーはめまぐるしく変わる場合も多いですね。

ドミナント・モーション

ハ長調である「起立>礼>着席」や「Let it Be」では

  • [C] = トニック・コード(主和音)
  • [G] = ドミナント・コード(属和音)

といい、またドミナントからトニックに進む進行を「ドミナント・モーション」と呼びます。G - C がそれです。

「ドミナント・モーション」というのは非常に安定した感のあるコード進行で、ほとんど必ずと言ってよいほど調性音楽の多くの楽曲で使われています。

モチロン世の名には例外がたくさんあって、ドミナント・モーションどころか、調性すら無い曲(無調音楽)もいっぱいありますが、そーゆーややこしい系は今のところスルーしておきましょう。

なおこの手の話に興味のある方はこのあたりなどご覧になってみるのもよろしいかと思います。

なおドミナント・コードは、7度の音を付加した7thコードとして使われる場合が多いですね。

G7

ドミナント・モーションはなぜ安定感があるのか?

さて多くの方は

[C] 起立(安定)>[G7] 礼(不安定・・ザワザワ)>[C] 着席(安定)

といった印象をもったと思います。モチロン、そう思わない人もいるかもしれません。「AKB48最高!」という人もいれば「やっぱ乃木坂46だろう」という方もおられるように「G7」のところで安定感と快感を持つことは個人の自由ですね。

で、なんで多くの方がG7を不安定に感じるかというと、G7にはトライトーン(三全音)という音程が含まれているからというのが定説です。

トライトーン

[file:shimamura-music:110929-05_Tri.mp3]

「シ」と「ファ」がトライトーンの関係ですが、それぞれの音はG7における3rd(シ)と7th(ファ)になりますね。
三全音ということは、半音で6個離れている音程です。

さて、かの西洋音楽では伝統的にこの響きが忌み嫌われておりまして中には「悪魔の音」なんて申す輩もおったようです。そこで村人はトライトーンの「死」と「葉」を、それぞれ [怒] と [美] に移し替えることでようやく安堵を得、みなが平穏の日々を過ごしておった・・・という感じらしいです。

「シ→ド」、「ファ→ミ」への移行には二種類の方向がありますね

[file:shimamura-music:110929-07_ Tri2resolve.mp3]

まこと古き言い伝えは誠であった・・というわけで、ドミナント・モーションが安定している理屈は「不安定」から「安定」へという共有感覚が理由とされています。

[ 今日の豆知識 ]
実際には7thコードだけでなく、すべての音が倍音(※)のせいで、トライトーンを密かに含有しています。したがって、どの音も4度上(=五度下)に移行すると「安定(帰省感)」の印象を与えるという性質があります。

コードのローマ字表記

ちなみにここまではCメジャー・キーで説明してまいりましたが、トニックとドミナントの関係はどのキーになっても共通しています。よくコード理論の本などでは、コードの機能を説明する場合、

V7 – I(Im)

※Im=マイナーキー場合のトニック・マイナー・コード

といったローマ数字で表したりしますが、これは楽曲のキーとコード機能の関係を体系的に把握するためには便利な表記方法ですね。

で「起立>礼>着席」をローマ字表記で表すと、

I – V7 – I

となりますが、メジャー・キーは12種類ありますので「起立>礼>着席」も12種類のキーで弾くことができますね。

CとDbキーを連続して演奏してみましょう。


[file:shimamura-music:110929-09_DbAbDb.mp3]

移調

よくバンドのボーカリストが「私のキーはEなのよ」とかおっしゃいます。たとえばCのキーで書かれた曲だとメロディーが低すぎて声が出ない場合は「移調」してキーを変更したりします。

その場合、オリジナル・キーと移調後のキーでは、コードネームはもちろん変わりますが、コードとコードの相対関係は変わりませんね。

仮にこのようなコード進行があったとして

Key:C
Cmaj7 – Am7 – Dm7 – G7

Eに移調します

Key : E
Emaj7 – C#m7 – F#m7 – B7

どちらもコードとコードとの相互関係はかわっていませんからローマ数字表記では

Imaj7 – VIm7 – IIm7 – V7

といったように表すことが出来ます。

ちなみにこのコード進行は俗に「イチロクニーゴー」と呼ばれる超定番コード進行です。
山下達郎さんの曲にはコレ多いんですが、全部名曲というあたりがサスガですね。

ではCとEのキーで連続で演奏してみましょう。

[file:shimamura-music:110929-11_1625.mp3]

ということで今回はコード理論の基礎知識をご紹介いたしました。次回はダイアトニック・コードを紹介してみたいと思います。

おまけ

山下達郎 / 土曜日の恋人 
www.youtube.com

(0:19-)あたりからのAメロの出だし4小節が

I-VI-II-V → F#maj7(9)-D#m7(9)-G#m7(9)-C#7(9)

となっています。
以降、おいしい一時的転調が満載ですね。

それではまた。

音楽力をアップする「耳コピのすゝめ 」第六回 コード

みなさんこんにちはサカウエです。

「耳コピ」に大切な4大要素というわけで、前回まではEQ、パンポット、速度調節、といった機材の活用方法についてご紹介いたしました。

前回の記事はこちら

今回からは耳コピに役立つ「音楽理論・楽器の知識」のお話に突入いたします。
まずはコードの話からスタートしましょう。

ボンバイエとチャーリー・パーカー

次の二曲をお聴きくださいませ。

炎のファイター(猪木ボンバイエ)

43秒あたりからのテーマ
www.youtube.com
高校野球の応援でもおなじみ「猪木ボンバイエ」ですね。もともとはモハメド・アリの映画のBGMらしいです。

All the Things you are

17秒あたりからテーマ
www.youtube.com
うーんシブい。ビバップ・ジャズの神様チャーリー・パーカーの演奏が有名なスタンダードナンバーです。

さてまったく趣の異なる二曲ですが、二曲にはある共通した特徴があります。

「リング登場BGM?」残念ですが違います。
ちょっと聴いただけじゃわからない・・・そんな時は耳コピしましょう。

「じゃあいつやるか?・・・今でしょう!」(どこかで聴いたフレーズだなあ)

その前に軽くコードのおさらい

その前に、コードとかあまり良くわからないというヒトのために一旦おさらいをしておきましょうね。

「定義がちょっとでもあいまいになってくると、途中で間違ってくるんだよ・・・」
ということで、わかってるという方も念のためお読みください。

「コード」はメジャーとかマイナーとかいった和音のことですね。
たとえばドレミファソラシドという音階(Cメジャースケール)の、1と3と5番目の音(ドミソ)を鳴らすとCメジャーコードになります。


「Cメジャーコード」って名前は長ったらしいので、普通は単に「C(シー)」と書きます(暗黙の了解)

そして1,3,5の音をそれぞれ

  • 1:ルート音
  • 3:長3度音
  • 5:5度音

と呼びます。

バンド・アンサンブルなどで、もしコードがCだったら、ベーシストは普通はルート音である「ド」を演奏します。

次にミがフラット(半音下がる)したこれは

「Cマイナーコード」と呼びますね。
このCマイナーコードは「Cm」「C-」「Cmin」と色々な表記方法がありますが、ここでは「Cm」と表記することにします。

そして1,b3,5の音をそれぞれ

  • 1:ルート音
  • 3:短3度音
  • 5:5度音

と呼びます。

さて、CとCmは、三度音が「長三度」か「短三度」の違いなんですが、響きは明確に異なりますね。
当然「コードの機能」も全く異なってきます。

ちなみにCでもCmでも、ルート音は変わらないので、ベーシストはどちらの場合でも普通は「ド」を演奏します。

さて、今はCのキー(ハ長調)で説明しておりますが、これが別キーになったりすると長三度と短三度の区別があやふやになってきます。(キーボーディストの場合は特に)

たとえばDメジャーコードをこう弾いちゃったりするんです

ドミソ(C)と押さえたポジションで右に一音分移動すると、なんとなく平行移動した感じですが、
実はこれはDではなくて「レ・ファ・ラ」つまりDmなんですね(ウエーンなぜなの?)

・・・皆さんのお怒りはごもっともです・・・・そもそもオクターブを12半音に分割して、メジャースケールの各音インターバルが「全・全・半・全・全・全・半」になっていることが、すべてややこしさの原因です・・・・この場でワタクシが変わりにお詫びいたしますのでご容赦ください。

ギターの場合

たとえばF(またはFm)のコードをセーハして押さえたポジションを2フレット内側に動かすと、ハーモニーは単に平行移動するだけなのでG(またはGm)になりますね。

Fm(やったー。なんとか押さえられましたー)

2フレット上げてGm

これは音程の決定システムが鍵盤と異なるからですね。

ここまでのまとめ

DとDmを間違えないようにするには、

ルート音から数えて半音4個離れているのが「長三度」
ルート音から数えて半音3個離れているのが「短三度」

と覚えるのが良いと思います。さっきのDmですが、レとファは確かに半音3個しか離れていませんね?
(あとですべてのキーで試してみてくださいね)

ハイおさらいはこれで終了ですが、最後に基礎の基礎が怖いってことを、今日何度も言っておきます(しつこいね)

ルート音を耳コピしてみる

それではこの二曲を耳コピしてみましょう。

世の中、Csus4、C(onG)といった、ひねくれたコードネームに出くわすこともありますが、今回は特別「ナントカマイナー」と「ナントカメジャー」というコードしか世に存在しないと仮定します。

まずはルート音を拾ってください。一番低い音で鳴っている音、つまりルート音(根音)は、コードネームで一番先頭になるアルファベットです。EQの低域を上げるなどすると聞き取りやすくなると思います。

「All the things You are」のような4ビート・ジャズのベースラインは、「ランニングベース」と呼ばれています。4分音符でベースラインを演奏するのですが、基本は一拍目が「ルート」と考えてください。

すると

炎のファイター

D - G - C - F

All the things You are

F - Bb - Eb - Ab

となります。(二曲とも、コードは1小節に1種類ずつしか出てこないです)

次に、細かいことはおいといて、「All the 〜」のコードシンボルを半音3個分(短三度)下げます(移調)。

「All the 〜」半音3個下げ

D - G - C - F

すると4小節目までは炎のファイターとルート音はまったく同じです。

次にメロディーを耳コピしてみましょう。著作権の都合でメロディーは記載できませんので、各小節の一拍目の音だけを表記してみます。ベース同様「All the things〜」のメロも短三度移調してみました。

炎のファイター


[file:shimamura-music:110917-10_InokiMelo.mp3]

All the things You are(移調後)


[file:shimamura-music:110917-12_all_mello.mp3]

なんと驚いたことに二曲のメロの、各小節の出だしの音は6小節までは、まったく同じなんですね。二曲が非常に良く似ていたのはこのためだったんです。

さて、ここでサカウエがお伝えしたいのはどっちがパクッたとかインスパイアされたとかいった話ではありません。この手のことは良くあることですし、実際にこれは偶然だと思います。

何が面白いかというと、どちらの曲も

「メロディーが、コードの三度音で作られている」ということです。

前述のとおり、あるコードのメジャーとマイナーの区別は、各コードの三番目の音が「長三度」か「短三度」かで決まるということでしたね。

ということはつまり、この二曲のコードネーム(ここではメジャーかマイナーか?)は、ルートとメロディーだけで判明するということですね。

するとこうなります。


(ちなみにキーはDm)

というわけで、曲のコード進行を耳コピしたいといった場合の順番としては

  1. ルート音
  2. 三度音程を探す>>マイナーかメジャーか?

を基本として考えると良いと思います。

もちろん、現実にはルートと三度音以外に色々な音が使われていて、コードネームもCsus, Cdim, Caug・・・C7, Cmaj7, C6・・・と色々なコードタイプが存在します。これらについては追々ご紹介していきたいと思いますが、今回はとりあえず基本として「メジャーかマイナーか?」を覚えておいてくださいね。

応用してみよう

さて今回のポイントは「ルート音」と「三度音」でした。

  • ルート音から数えて半音4個離れているのが「長三度(3rd」」=メジャーコード
  • ルート音から数えて半音3個離れているのが「短三度(b3rd)」=マイナーコード

それでは次のコード進行を見てください。

これは某ジャズスタンダードナンバーと同じコード進行です。譜例では左手ルート、右手三度音を表記しておきました。

「Cm7」や「F7」「Am7(b5)」といった見慣れないコードがありますが、7とかb5といったワケのわからんやつは無視でO.K. ここではあくまで左手でルート、右手で三度音だけを演奏してみます。

[file:shimamura-music:110917-08_kareha.mp3]

どうでしょう?ちゃんと調性が感じられるサウンドになったと思いませんか?そんなわけで、

ルートと三度音だけ弾いてればとりあえずコード感を出すことが出来る

ことになりますが、逆に考えると、(バンドでもソロでも)アンサンブルの中ではルートと三度音が必要不可欠ということですね。

たまにコードにくっついている9とか11, 13とかいった数字は「コードの機能」を決定する要素ではなく、あくまでオプション、おまけ。
料理におけ薬味やスパイスみたいなものと考えてください。ご飯に「大人のふりかけ」や「錦松梅」をかけても、ご飯としての存在は代わりません・・・と書いたら余計わけワカらないかなあ。これは後述したいと思います。

ちなみに先ほどのスタンダードナンバーのコードに7th, 9th, #9th, といった音を加えて弾いたものがコレ

[file:shimamura-music:110917-13_ALtension.mp3]

なんだかフクザツになりましたが、でもコードの機能自体は、先ほどのルート+3rdと変わってはいないのです(にわかには信じられませんがね)

わずか2音でも音楽になる

そんなお手本みたいな曲がコレ:

Waltz for ruth / Pat Metheny & Charlie Hayden

Beyond The Missouri Sky (Short Stories)

Beyond The Missouri Sky (Short Stories)

この曲も冒頭の1コーラス目はギター(単音)とベース(単音)だけで演奏されていますが、ちゃんと楽曲として成立しています。すなわちこの曲もメロディーに、コードの調性を確定する「三度音」が多用されているからですね。しかし名盤だなあこれは。

おまけの補講

ちなみに、C-F-Bb-Ebの様に、5度ずつ下がる(=4度ずつ上がる)進行を「4度進行の曲」とか呼んだりします。

5度とか4度がよく理解できないヒトは
5度=半音で7個
4度=半音で5個

と覚えると良いですよ。ギターだとフレット一個のずれが半音になりますね。

さて仮に「ド(C)」から5度ずつ下がる(=4度ずつ上がる)を繰り返すと。。

C - F - Bb - Eb - Ab - Db - Gb - B - E - A - D - G - C ・・・・

となり、12の音を全部巡り巡って最初の音に戻ってきます。あーら不思議。

Wikipediaによくまとまっていたので、詳しくはこちらをご覧ください。

というわけで、それではこの続きはまた次回。

音楽力をアップする「耳コピのすゝめ 」第五回 スロー再生

こんにちはサカウエです。

耳コピのススメ第五回目は、前回の「聴き取り易くする」ための機材の活用方法の続きです。
前回の記事はこちら

皆さん、パンポットとイコライザー(EQ)の使い方は理解していただけましたでしょうか?今回は少々マニアックな内容かもしれませんが、ヨロシクお付き合いくださいね。

前回ネタのおさらい

まずは前回お聞きいただいた音ネタ(ツイン・シンセリードによるアルペジオ速弾きフレーズ)をお聞きください。

[file:shimamura-music:110906-01_TWIN SOLO_MIX01.mp3]

単純にコードのアルペジオを弾いているだけなんですが、アップテンポの曲では効果的なフレーズかと思います。

さて前回はパンポットやイコライザーを使って聴きやすくする方法をご紹介いたしましたが、とはいっても「でもやっぱりテンポが速すぎて聞き取れない」という方もいらっしゃったと思います。(好き嫌いは別として、確かに正確に演奏するのは結構難しいですよコレ)

人間が聴き取ることのできる音には(個人差はありますが)限界があるというお話は前にも書きましたが、でもそんなアナタに朗報です!!

次にご紹介する方法は、そのものズバリの直球勝負「再生速度を変える」方法です。

再生速度を変えてみた

世の中には「超速弾き」、「超絶技巧」フレーズばっかり弾くヒトとかおりますが、「ただ単に速いだけ」っていうヒトも・・・以下自粛・・・まあともかく、速いと聴き取りにくくなるのは確かですね。

でもそんな時は最後の手段!「ゆっくり再生できればよいジャン・・」というわけで実際に原曲の1/2のスピードで再生してみましょう

[file:shimamura-music:110906-02_TWIN SOLO_harf.mp3]
「やったねパパ、これならボクにも聞き取れるよ!」


以前ご紹介したとおり、一昔前、サカウエはアナログ・カセットMTRを使って耳コピしてましたが、どうしても速すぎて聞き取れないフレーズはMTRのモーター回転速度を1/2にして耳コピしていました。ちょうどコレがその状態ですね。

波形編集ソフトでこれを行うには「音程を12半音下げる」または「オクターブ下げる」といった処理を行います(後述する「タイムコンプレッション機能」はここではまだ使いません)

さてさて、この「ルンルン1/2スピード大作戦」は、速弾き以外にもドラムの細かいフレーズなどを耳コピするのにも適しています。

ためしにこれを聴いてみてください
[file:shimamura-music:110906-03_DrumSample3.mp3]

どうやって叩いているのか良くわかんないですね?ではコレを二分の一スピードで再生しましょう(オクターブ下がりますヨ)

[file:shimamura-music:110906-04_DrumSampleHarfTempo.mp3]

いかがですか、ノーマルスピードでは聞こえなかったスネアの音が聞こえてきたと思います。
最初のうちは、スネアは「ズドーン」、バスドラム「どどーん」と、この違いを聴き取れるようになるまでは10年はかかるんじゃねー?・・・と感じるかもしれません。
でも慣れてくると細かい装飾音なども意外にバッチリ聞こえてくる様になってくるからあら不思議。人間の適応力ってすごいですね。

譜面にするとこうなります

ちなみにこれはSteve Gadd(スティーブ・ガッド:超大御所ドラマー)大先生の「パラディドル」というテクニックを応用した有名なドラムフレーズです(チック・コリアのアルバム「フレンズ」の6曲目「シシリー」が代表格)

どう叩いているかというと、

RRLR LLRL RRLR LLRL

Rは右手のスネア、Lは左手のハイハット(右左は逆でもOK)で、一つ打ちと二つ打ちの連続ですね。(ドラマーの方はお馴染み)

上記の譜面中、○で囲ったスネアの部分は、実際にはかなり小さい音で演奏されますので、よーく聴かないとほとんど気づきません。
このように「あら、あの音なにかしら?・・ホラあれよ!あなた、やっぱり何か聞こえるわ!!」といった雰囲気の音を「ゴーストノート」と呼んだりします(今日の豆知識)
なお「ゴーストノート」は和製英語で、英語だとGrace noteと呼ぶらしいです。

「パラディドル」などのドラムテクニックに興味あるヒトは下記も読んでみると良いかも。

このように「ウキウキ1/2スピード大作戦」はたしかに重宝するんですが・・ちょっと待った!この作戦にはひとつだけ弱点がある・・・そう、ベースは聞き取れないのだ!

アナログの世界では再生スピードを1/2に落とすと音程はオクターブ下がっちゃうんで、ベースなどの低音楽器はまず聞き取れなくなります。ベースだけではなく、大体中央ドのあたりで鳴っている和音(というか、たいてい和音はこの音域なんですが)も聴き取りにくくなったのです・・・そう、今までは確かに・・・・

デジタル技術は万能か?

ということで何だか意味もなく意味深な感じでしたが、最近のDAWレコーダーは「音程を変えずに再生スピードを変える」ことができる機種が多くなっていますね。オーディオ・ループをDAWに貼り付けて、テンポを変えても追従してくるっていうのはもう当たり前。iPhoneでもできちゃいますね。

ですから「アナログの場合は再生スピードを1/2に落とすと、音程もオクターブ下がっちゃう」なんて話のほうが実は意外だったという方もいらっしゃったのではないでしょうか?

でも「音程を変えずに再生スピードを変える」なんてことチョット前までは、夢のまた夢、ハハッ!みんなもおいでよ夢の国へ、・・・みたいな感じのとてつもなくスゴイことだったんですよ。
すべてが現代のデジタル技術の進歩、パソコンの飛躍的な性能アップのなせるワザであります。

先駆けはACIDというソフト

ちなみに1998年にACIDというソフトがいち早く実装したのが、そのタイムコンプレッション、エクスパンド、ピッチシフト・・・横文字ばかりで疲れるなあ・・という一連の機能です。
一言で言うとオーディオデータでも自由自在にテンポとピッチを操ることができるという、スンバラシく画期的な技術で、当時はホントびっくりしました。

てなわけで前述のシンセリードの速弾きだってこんな感じに再生できるわけですね。
[file:shimamura-music:110906-06_TWIN SOLO_2times.mp3]

すごい!これで完璧・・・といいたいところですが現時点ではパーフェクトとはいえないですね。

そもそも周波数が倍になると音程は1オクターブ上がりますね。ですから逆に再生速度を二分の一にするってことはオクターブ下がるのが本来の自然の摂理なわけですね。
それを「音程を変えず」ってことは、(イメージとしては)どこかで誰かが無理してツラい役目を担っている感じになると思うんです(・・・説明しようとすると結構大変だし、サカウエも実はそんなに詳しくはないの・・理系のヒトにお任せします)

結果、どうなるかというと、音質や演奏のノリが原曲と若干変わってしまうという現象が起きるみたいですね。
モチロンこれは使用するソフトやプログラムの違い、スピードを変更する範囲の幅、等々の条件で精度は変わってきます。

「音程を変えず速度を変える」という技術は、英会話のリスニングなどで重宝する「遅聴き」機能付きのプレーヤーなどでも使われています。
ただし、単に言葉を聞き取るという目的において必要十分な情報量と、音楽が含有するそれとは、比較にならない程の開きがあると思われます。

したがって原曲との間の無視できない誤差が生じる可能性も少なくないので、サカウエの場合、細かいニュアンスなどの耳コピには、未だに速度&音程下げの方法をメインで使っています。

というわけで、今回は再生スピードを変えるという「禁じ手?」をご紹介しました。
デジタル技術が発達して色々と便利になってきましたが、あくまで「耳コピ」は音楽エッセンスを吸収するため手段の一つでしかありません。耳コピすることが目的にならないように自戒の念を込めたいと思います。

それではまた。

参考資料

スティーブ・ガッドのドラムが堪能できる名盤

Friends

Friends

フレンズ

フレンズ

音楽力をアップする「耳コピのすゝめ 」第四回 パンとイコライザー活用編

みなさんこんにちはサカウエです。

前回の記事では耳コピを行う為に必要な事柄を、大まかに4つに分けてみました。

  1. 機材
  2. 耳コピ方法(手順)
  3. 音楽理論・楽器の知識
  4. その他(情報収集力)

今回は「耳コピ方法(手順)」について。
「聴き取り易くする」ための機材の活用方法を紹介しましょう。今回は音資料満載なんでヨロシクね。

前回の記事はこちら

耳コピのコツ

前回ご紹介した耳コピのプロセスをもう一度確認してみましょう。

表1
A「目的箇所に瞬時に正確に戻る」
  ↓
B「再生」←聴く
  ↓
C「停止」
  ↓
D「楽器で確認」
(必要に応じてABC、ABCDを繰り返す)
  ↓
E「採譜(または打ち込み)」 

まず耳コピしたい箇所を聞いて再生を停止、楽器で確認、採譜の繰り返しですね。

上級者でないと「再生」中に「楽器で確認」というのはなかなか出来ないと思うので、上記のように、普通はB「再生」→ C「停止」して、音の記憶が消えないうちにD「楽器で確認」ということになると思います。

ここでの大切なポイントは、B「再生」と C「停止」の間隔はあまり長くしないってことですね。
欲張って一度に多くの箇所を耳コピしようとせず、コツコツ地道にやっていったほうが良いと思います。

じゃあどれくらいの長さ?ですが、要するに「記憶」がカバーできる範囲ということですね。
天才モーツアルトは曲を一回聴いただけで、すべて暗譜して演奏したという逸話がありますが、そりゃあ曲の難易度にもよるでしょーに。
映画「アマデウス」のワンシーンにあったように、凡人サリエリの行進曲くらいだったら確かに楽勝でしょうが、

たとえばこんなの

[file:shimamura-music:110905-01_SOLO.mp3:sound]

こーゆーのはまず1000回聴いても覚えられません(すくなくともワタクシは)
仮に覚えられたとしても時間がかかりすぎるので、こうした無調的フレーズなんかはコツコツ地道に採譜していった方が結果的にコピーは早く終わります。

なお、どうしても聞き取れない箇所が出てきた場合、そこに固執していると先に進みません。こういう場合はすっぱりあきらめて、とりあえず聞き取れた箇所を記譜していき、クロスワードパズルのように徐々に空白を埋めていく方法が良いと思います。

えーっと、一応正解を書いときますね

‥‥‥パトラッシュ、なんだかとても眠いんだ‥‥‥

このように「再生」→「停止」の間隔、すなわち耳コピしたい箇所の長さは、1小節だったり、1拍だったり、16分音符一個分、、とまちまち。これは耳コピしたいものが、単音のソロ、コード、ベース、ドラムの細かいフィル、、といった対象でも変化すると思います。

なお曲全体のコード進行をコピるのが目標の場合は、耳コピを始める前に必ず曲の頭から終わりまで、何回か聞いておいて大雑把な構成をメモっておくと良いかもしれません。

たとえば

イントロ(8小節)-Aメロ(8小節)-Bメロ(8小節)-Cメロ(サビ)(8小節)---エンディング

の様な感じで、五線譜に構成と小節数分をあらかじめ表記しておくわけです。

さてさて、とはいえ最初からキッチリやろうと思ってもなかなかできないと思うので、とりあえずトライ&エラーしながら気楽に地道にいきましょう。

セッティングの確認

ここからは機材の活用方法の話になりますが、セットアップを確認しておきましょう。

音ネタ(原曲)の再生装置からミキサーには、左右の出力信号が別チャンネルに立ち上がっている必要があります。再生装置が波形編集ソフトの場合は、パソコンとつないだオーディオ・インターフェースの左右の出力が同様にミキサーに「別チャンネル」で立ち上がっていればO.K.


ミキサーの1chは原曲の左チャンネル(L)、2chは原曲の右チャンネル(R)

ミキサーには各チャンネルごとに、ボリューム、パンポット、イコライザーといったつまみ(またはフェーダー)が付いていますね?

ボリュームは音量、パンポット(PAN)はステレオ出力する際の左右の定位をコントロールします。

イコライザー(EQ)は音の高域や低域を上げたり下げたりして音質を調整する機能です。
Hi(高域)、Mid(中域)、Low(低域)のような表記がされていてつまみを回すと各音域が増減するわけですね。この音域の区分けの数は機種によって増減しますが、数が多いほど細かい音質調整ができると思ってよいでしょう。

よく「ドンシャリ」といった表現を耳にすることがあると思いますが、あれはイコライザーで高域、低域を持ち上げ(ブースト)ている状態だと思ってください。
DJの方がグリグリやってるのはこのEQ(と同等の機能)の場合が多いですね。

さて、ミキサーに立ち上げた音楽ソースを聞く場合、通常は、ch1のパンは左、ch2は右にそれぞれ振り切って、ボリュームとEQのセッティングは左右同じ‥‥‥こうしておかないと正しく音楽を再生することが出来ませんので注意しましょう。

パンポットの活用方法

単に音楽を聴く場合は、パンポットは上記のセッティングにしておく必要がありますが、ここで紹介するのは耳コピならではのパンポットの活用方法です。

まずコレを聞いてください(まあ極端な例ですが)。
[file:shimamura-music:110905-05_TWIN SOLO_MIX01.mp3:sound]

ちなみにそうですイングウェイにインスパイアされてみました。ちょっとVOW WOW入ってるかなあ‥‥‥何言ってるかよくわかんない方、気配りは結構です無視してくださいお願いします。
ところでインスパイアって言葉は便利ですね。。。

・・さてこのサンプルではシンセのソロが左右でハモって演奏されています。通常の再生環境だと両方のフレーズが聞こえてしまいますので「どっちがどっち?」見たいな感じで間違ってコピーしてしまう場合が多いです。

こんな時はパンポットを活用しましょう。

ミキサーの1chと2chのパンポットをどちらも中央にすると、こうなります。

[file:shimamura-music:110905-06_TWIN SOLO_MONO01.mp3:sound]

これは左右の音が中央で混ざってモノラル状態になっています。
これだと音の分離がなくなってしまったので、ステレオの状態よりさらに聴き取りにくくなってしまいますね。

ではここで2ch(R)のボリュームをゼロにします。

[file:shimamura-music:110905-07_TWIN SOLO_Lch01.mp3:sound]

おーっ、左チャンネルの音だけが、中央で聞こえる状態になってでしょう?
シンセソロは片方しか聞こえなくなったので、ぐっと聴き取りやすくなったハズです。

今度は逆に1ch(L)のボリュームをゼロ、2ch(R)のボリュームを上げて聴いてみます。

[file:shimamura-music:110905-08_TWIN SOLO_Rch01.mp3:sound]

今度は右チャンネルの音だけが、中央から聞こえるようになり、シンセソロのハモリパートが聴きやすくなったと思います。

さてさて、最近の楽曲では、ここまで楽器の定位を左右に振りきってミックスされているというのはレアケース。
でも昔のビートルズの様に、ステレオ録音技術が誕生したばかりの1960, 70年代といった時代の音楽には「ドラムは左、ギターは右」のように極端な定位でミキシングされている曲も珍しくありません。
この手の曲の場合は非常に効果的な方法です。

こんなやつですね

※アコギは完全に右に振られてますね

いずれにしても、この方法で一定の効果は得ることができるので、ぜひ一度は試してみてください。

イコライザー活用方法

これは耳コピしたい曲をイコライザーを使って聴き易くする方法です。

これのコード進行を耳コピしてください。
[file:shimamura-music:110905-10_Dont Let it_03.mp3:sound]

どうでしょう?スゴーく気持ち悪いと思ったアナタは正常です。清々しさを感じた方は最近きっと何かありましたね?・・

さて、これは前回紹介したLet it Be風のピアノ・バラード・パターンに、ドラムとベースを加えてみたものですが、ピアノの右手は前回同様「C-G-C」と素直な和音を弾いております。
問題はベース音・・ここではわざと和音とぶつかる音に変えてみました。

この手の不協和音はあまり耳も慣れてないせいもあって、ベース音が聴き採りにくいんですよね。
しかもベースは6の超低音で弾いている感じにしてみましたからねよけいだと思います‥‥‥イヒヒヒ。

こんな意地悪フレーズにはイコライザーを使ってみることをオススメします。

イコライザーはパラメトリックとかグラフィックとか種類が色々あるのですが、ここでは面倒くさいことはすっ飛ばして今回はミキサーについている、つまみタイプのイコライザーを使います。
イコライザーについて詳しく知りたい人はwikipediaを見てくださいね。

DAW波形編集ソフトを使って原曲を再生している場合、プラグインと呼ばれるソフトウエア・イコライザーを使用することもできます。
でもコレって意外に即応性や俊敏性に欠けるので、ミキサー側のイコライザーを使ったほうが手っ取り早いと思いますです。

使い方のコツ

要は目的の楽器が目立って「聴きとりやすく」なればよいので、まあ「適当」ですねワタクシの場合。
ベースが前面に出るように、つまみをグリグリ動かしてみましょう。逆に言うとベース以外の音が引っ込んでもよいわけですね。

するとこんな感じになります
[file:shimamura-music:110905-11_Dont Let it_04.mp3:sound]

使っているヘッドホンとの相性もあるので一概には言えないのですが、ベースがぐっと前に出てきたと思います。
ここで左右のパンポットを中央にそろえると音はモノラルになりますが、さらにベースが聴き取りやすくなることもあるかもしれません。

[file:shimamura-music:110905-12_Dont Let it_05mono.mp3:sound]

というわけで、実はベースは C#-G#-C# と、右手のコードの半音上を弾いていたのですが、全体としては C(onC#) - G(onG#) - C(onC#) というへんてこなコード進行になります‥‥‥・
‥‥‥「意味を求めたってはじめらないよ」by チャップリン

いかがでしたか?先ほどパンポットの活用で紹介したシンセリードのハモりフレーズなんかも、イコライザーをかけるとさらに聴き取りやすくなったりするかもしれませんね。

次回は? あと予告編

というわけで今回はココまで。次回は1/2再生などのディープな耳コピテクニックなどをご紹介します。

先ほどのシンセソロがさらに聴き取りやすく‥‥‥
[file:shimamura-music:110905-15_TWIN SOLO_harf.mp3:sound]

ということでそれではまた、お楽しみに。

参考資料

イングウェイ・マルムスティーン

Odyssey

Odyssey

Vow Wow

サイクロン

サイクロン

© Shimamura Music All rights reserved.