島村楽器公式ブログ

全国展開している総合楽器店のスタッフが、音楽や楽器の楽しさや、楽器店にまつわるお話をお伝えします。

2020年春 弦楽器買い付けレポートその7 「ドイツ編」(最終回)

今回の買い付けは、2020年2月13日~2020年2月21日に行いました


どーも皆さんGuten Tag!!

プラハ編を担当した男前店長フルニシに代わり、再びシマムラストリングス秋葉原:マネージャーの糸山がご案内します。
今日が最終回です。

プラハを1泊で引き上げ、翌朝早朝にドイツ・ライプツィヒへと移動します。

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プラハ本駅の正式名称は「Praha hlavní nádraží」。抑揚をつけずに「プラハ ・フラヴニー・ナードラジー」と口ずさんでしまうと、呪文か念仏のような響き。
行き方は、まず6:26 プラハ本駅(Praha hl.n.)発 ➡ 8:43 ドレスデン中央駅(Dresden Hbf)着のドイツ国鉄「DB」に乗ります。

ドレスデンで乗り換えがあり、9:09 ドレスデン中央駅 ➡ 10:19 ライプツィヒ中央駅(Leipzig Hbf)で目的地に到着。約4時間の列車の旅です。

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6:26発の列車はベルリン行き。行き先がたくさんあるので、電車の番号「DB EC178」を確認してホームへと向かいます。『朝ごはん買う時間あるかな?』『大丈夫じゃん?』と打ち合わせ中の後ろ姿です。

チェコードイツ国境ではパスポート・コントロールはありませんでした。
それどころか『只今、国境を越えドイツに入りました。』と期待していた車内アナウンスなど皆無で、国境通過は何の前触れもなく、当たり前のように淡々と列車は進みます。

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4時間もあると色々できます。
電車内では溜まったままの仕事メールの返信、買付楽器のメモ、買付ブログの下書き、会社のSNS作成などなどオフィス代わりに使用します。

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締めきりに追われる二人。車窓の景色はほとんど記憶がありません。今思うと勿体ないですね。
ですが、行き詰った時は割と直ぐ諦めて寝ます(笑)
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盗撮されていました。アイデアが閃かない時は寝かせるタイプです(笑)

そんな感じの電車旅で4時間が経ち、ライプツィヒに到着。この街に着いたら、ご挨拶に伺わない訳にはいかない「大作曲家」が、ここ聖トーマス教会に眠っています。

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ライプツィヒのシンボル、聖トーマス教会。

聖トーマス教会は、J.S.バッハが1723年から亡くなる1750年まで音楽監督を務めた教会です。
教会の中に進むと、J.S.バッハが演奏したオルガンが今でも設置されています。

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週末にはオルガンコンサートが催されています。

さらに聖トーマス教会には、当時ライプツィヒのリュート製作における第一人者による、「バロック・コンディション」のヴァイオリンも展示されています。

イタリアンやフレンチのような派手さはありませんが、内声部の充実した暗くて深い音色は、正にJ.S.バッハが想定していたヴァイオリンだと言えるでしょう。

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"Johann Christian Hoffmann, Germany - Leipzig, 1729"は、今でもライプツィヒ・ケヴァントハウス管楽団から選抜された演奏家が、ここ聖トーマス教会で演奏するそうです。しっかりメンテナンスされていました。

J.S.バッハは、この聖トーマス教会のために「毎週新しいカンタータを作曲する」・・・という多忙な生活を送っていました。

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教会内部にはJ.S.バッハのお墓があります。当初は別の場所にお墓があったそうですが、掘り起こされ、元職場に葬られているJ.S.バッハです。

バッハの時代は、作曲した曲は一度演奏したらおしまい。
毎週毎週、精魂込めて創作した名曲の数々が当時は「使い捨て」だったなんて、ホントに大変な労働環境でしたね。

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お疲れ様です。

バッハはドイツ語で「小川」という意味。ベートーヴェンが「バッハ(小川)ではなく大海だ」と評したのはあまりにも有名です。
ところが最新の研究では、バッハ一族の名前由来は「パン屋(古いドイツ語で「bachen」はパン焼き「backen」のことらしい)」だった先祖からきてると、この小さなドイツ語の本に記されてました。(byマイスター茂木)

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バッハは「小川」ではなく「パン屋」!?

パンと言えば、ライプツィヒは欧州のなかでもいち早くコーヒー文化が根付いた街。
街にはカフェが沢山あります。
J.S.バッハ自身もコーヒー好きが高じ、「コーヒーカンタータ(Kaffeekantate)」を作曲したと言われています。

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筆者がひそかに、取材という名の味見で狙っていたドイツ最古のカフェ「Coffe Baum 」が訪問先の近くにあったのですが、なんと閉店していました。。。
シューマン、ワーグナーやリストも訪れたカフェと聞いていたので、残念。

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ウィッシュリストに入っていたカフェを逸した一行は、ドイツでイタリアンを食するという痛恨の選択。でも美味しかったです! 実は、我々のスーツケースをちょっとだけ預かって頂いて、聖トーマス教会を観光しました。親切なお店の皆さんDanke!!♪

さて、2020年春の買付のフィナーレを飾る工房はコチラ、Jens Peter Schade(イェンス・ペーター・シャーデ)氏のアトリエです。
Schadeさんのアトリエには、昨年春にも訪れています♪

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2020年1月にお亡くなりになられた無量塔蔵六氏の著書「ヴァイオリン」を手にし記念撮影。

故・無量塔蔵六氏は、マイスター茂木の最初の師。
そして、日本人として初めてマイスターとなった偉大なパイオニアです。
シャーデ氏は訃報に大変驚き、残念な表情に。先代:Joachim Schade(ヨアヒム・シャーデ)とも長く親交があったと教えて下さいました。

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マイスター茂木は、高輪台の東京バイオリン製作学校から繋がったライプツィヒでのご縁に、感極まった様子。
今日の訪問の目的は、Jens Peter Schade(イェンス・ペーター・シャーデ)氏の弟、Sebastian Schade(セバスチャン・シャーデ)の作品を再び入手することでした。

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Sebastian Schade(セバスチャン・シャーデ)は、1964年ドイツ・ザクセン州の都市:ハレ(ザーレ)生まれ。
16歳で父:Joachim Schade(ヨアヒム・シャーデ)のもとでヴァイオリン職人としてのキャリアをスタートします。

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ライプツィヒは、マイスター茂木がどうしても外せないと断固として譲らなかった行き先でした。
その後、ドイツ国内各地の工房で下積みを経験する所謂「Journeyman(ジャーニーマン)」 の時代を経て、1990年にドイツ国家資格「Meister」の資格を取得。1999年に35歳で独立。

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フルニシは『セバスチャン初めて弾いたわ~。』と感動の初対面。そうでした、前回は入荷直後に売れてしまいました。
現在56歳。ドイツ楽器製作者協会に所属し、彼の作品は父:ヨアヒム同様に優れたコンサート楽器として、ドイツ国内外で広く使用されています。

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こんな良い楽器を持って、聖トーマス教会でJ.S.バッハの無伴奏ソナタ&パルティータ(弾けないけど)を弾いたら最高だろうなぁ・・・と恐れ多き妄想をしながら試奏させて頂きました。
著名な愛用者には、ベルリン国立歌劇場管楽団及びゲヴァントハウス管楽団の第1コンサートマスターを歴任したKarl Suske(カール・ズスケ)。
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僅か18歳にしてベルリン・フィルハーモニー管楽団のコンサートマスターに着任したSaschko Gawriloff(サシコ・ガヴリロフ)。
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ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管楽団 第一コンサートマスター:Frank-Michael Erben(フランク=ミヒャエル・エルベン)。
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などなど、世界中の音楽家に愛されている現代作家です。(Sebastian Schade氏ご本人からの情報提供に基づいて記載させて頂いています。)

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滋味豊かな印象を受ける精巧なクラフトワークにも注目。

前置きが長くなりました。
それでは、今回入手しましたSebastian Schade(セバスチャン・シャーデ) 2020年モデルをご紹介します!

Sebastian Schade, Germany – Halle/Saale, 2020

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Sebastian Schade, Germany – Halle/Saale, 2020
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Sebastian Schade, Germany – Halle/Saale, 2020
名器:Antonio Stradivari(アントニオ・ストラディバリ)1705年のインスパイア作品。
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「東欧のストラディバリウス」たらしめる所以となった、シャーデ・ファミリー直伝の代名詞的モデルです。
精巧なつくり、職人技が光る美しい仕上げ、クレイジーな杢目に我々は即虜になりました。スムースで懐の深い音質は、コンサート楽器として活躍することをお約束致します。
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Sebastian Schade セバスチャン・シャーデ

はぁ~満足満足・・・と思ったのも束の間。
筆者のスカウターから姿を消し、独り無心にカメラのシャッターを切るマイスターの姿が。

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マイスター、それなんすかね。

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ウーン、このエッジワーク・・・。

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独特のCカーブの汚し方・・・。

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この表面のツヤ感と肌ざわり・・・。

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どこかで見覚えのあるスクロール・・・。

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こいつはまさか・・・。

セバスチャン・・・かーらーの~?

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まさかの・・・。

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ヨアヒム・シャーデが~、、、

くーーるーーーーー!!!!

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キターーーー!凄いサプライズ。なぜ、ヨアヒム・シャーデが!?

Joachim Schade, Germany – Halle/Saale, 2010

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Joachim Schade, Germany – Halle/Saale, 2010
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Joachim Schade, Germany – Halle/Saale, 2010
この作品は、死を悟った生前のヨアヒムが、最愛の妻:Regina Schade(レジーナ・シャーデ)さんへ遺産として贈った10挺のコレクションの内のひとつ。
2010年の作で、なんと、「新品」。超レアな逸品です。
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シャーデ・ファミリー、宝玉のコレクション。
『東から客人が訪ねてきたら、これを売りなさい。』と、ヨアヒムは我々の訪問を予見していたのでしょうか。
いや、そう思いたい!私たちは運命に導かれて、選ばれてこの作品と出会えたのだと。

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Joachim Schade, Germany - Halle, 2010
相手の音を上書きしてしまうかのような、果てしないパワー。
サッカーで例えると、激しいゲーゲンプレスのよう。(ちょっと使い方違うか?)
ここから弾き込んでいくと、一体どんな未来が待っているのでしょうか・・・。

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Joachim Schade, Germany - Halle, 2010
我々はこの貴重な作品をしかと受け取り、必ず良縁をつなぐことを約束し、シャーデ工房を後にしたのでした。

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貴重な逸品を譲って頂き、ありがとうございました!
ちなみに、Joachim Schadeの「チェロ」もあったのですが、残念ながら買付ができるコンディションではありませんでした。苦渋の決断ですが、何卒ご了承下さい。

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お蔵入りにすると勿体ない写真なので載せておきます(笑)
2020年春の買付、これにて終了!
レジーナさん、ヨアヒム、セバスチャン、お世話になりました!どうもありがとう!!いつまでもお元気で。Besten Dank!!!!
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夜は翌日のフライトスケジュールもあって、フランクフルトへ移動しました。

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移動中もやっぱりお仕事。頑張ったその先に、自分たちへのご褒美が待っています・・・。

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ここはいつも訪れる馴染みの造り酒屋。

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自家製のアップルワイン。地元の人達もこれを飲みに来ています。

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シュバイネハクセ。スモールサイズをお願いしました。

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ソーセージ、ザワークラウト、マッシュポテト。定番もやっぱり食べておきたいので。

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イェーガー・シュニッツェル。キノコのホワイトクリームソースがかかっています。

完全に予算オーバーでしたが(一応、食べるものにも予算があります笑)、今夜は打ち上げですので、マイスターの大盤振る舞いで打ち上げです。マイスター、ごちそうさま~。

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めでたしめでたし。

www.tripadvisor.jp

最後にご挨拶。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
新型コロナウィルス感染拡大が騒がれている中、買付ブログを更新し続けていくべきかどうか、正直悩みました。
しかしながら、本当に有難いことに、毎回ブログの更新を楽しみにして下さるお客様も少なからずいらっしゃる・・・という事を大切に考え、細々と更新を続けさせて頂きました。
『読みましたよ~あの楽器ある?』の一言が、明日への活力となっております。本当にありがとうございます。
今回買い付けた楽器たちは、全国数カ所を巡る展示会「楽器フェスタ」でお披露目予定です。
皆さまとまた会場でお会いできることを楽しみに、そして現在の状況が一日も早く終息することを願って、2020年春の買付ブログを終わりたいと思います。
ここまでご覧くださり感謝申し上げます。


またお会いしましょう!Tschüss!!

今回買い付けた楽器は、楽器フェスタでお披露目します

今回マイスター茂木が買い付けを行った楽器は、5月〜7月各地(グランフロント大阪・横浜みなとみらい・名古屋みなとアクルス・松本パルコ・南船橋・イオンレイクタウン・仙台泉・札幌クラシック)の島村楽器で開催される、島村楽器楽器フェスタにて展示・お試しいただくことが出来ます。
順次情報を公開致しますので、楽器フェスタページもあわせてご覧ください。


2020年春 楽器買い付けレポート

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