皆さまこんにちは!
ガ〇ガリ君を2本までは連続でOKですが、3本連続で食べるとお腹を壊す
ルシアー駒木です。
私は海外での仕事が割と多い方だとは思うのですが、アジアでの初心者ギターの開発や検査、ヨーロッパでのクラシックギター、アメリカの買い付け、、、内容も行き先も多岐に渡ります。
そんな様々な海外の仕事をしている時に、どこで何の仕事であっても共通で感じる事があります。
それは「日本人の多くは、傷や、修理痕が見えるのを嫌がる」という事です。
むしろ、日本人以外はあまり気にしない人が多い、と言った方が良いかもしれません。
ですから、検品の時に髪の毛の様な傷を私が指さして「この傷が日本人のお客さんにはNGなので直してきて」と言うと、「は!?何言ってんの?」みたいな反応をされる事があります。海外検品業務アルアルです。
そして、修理や改造でお客様の楽器をお預かりする中でも、そんな「傷を隠したい」という要望は沢山頂きます。
逆に大きな打痕や剥がれは「その楽器のカッコいい歴史」として受け入れられたりもするのですが、小さい傷ほど意外に気になっちゃったり、更にこれがまた一度気になってしまうと頭から離れなくなって、ライブパフォーマンスにも影響出ちゃったりして。
以前にも、「全く分からなくする」という技術はご紹介してきましたよね↓
実際ブログの反響もありましたし、「言われても修復の痕跡が分からないレベル」を求められる方には大変に喜んで頂けるのですが、とはいえ、これらの作業は塗装作業を含むのもあって、お預かりする期間はそれなりに長くなりますし、金額もそれなりにかかります。
ですから敷居が高いと思われる方も多いですし、正直「ここまでじゃなくてもいい、、、でも目立たなくはしたい、というのが本音」という感じの方もおられますよね。
そんなあなたに朗報!(笑)
修復の手順や使う塗料種、最終の仕上げ塗装の有無や方法に工夫をした「簡易修正」でも、殆どの方に実は十分満足いただける仕上りなのだという事を、本日はご覧頂きたいと思います。
2例ほどご覧頂こうと思うのですが、まずは一つ目。指板に開いた小さな穴を埋めたものです。まずは元の状態がこちら。
木材は自然な状態で、繊維の欠けや節、虫食いなど、色々な理由で小さな穴が空いている事があります。
あくまで自然の物であり、程度によりますがサウンドや楽器のクオリティに影響がない限りは、どのブランドでもこれらは埋めて製品にします。
上の写真は敢えて埋めた部分を光で目立たせて撮影していますが、実は自然光下では気付かない人が殆どだと思います。
当然楽器としては「良品」です。製作段階できちんと埋めてもあります。
さて、それではこれを目立たなく「簡易修正」してみましょう。
まずは周辺含め脱脂します。
次に、埋めてある素材を取り除きます。
ルシ駒作業には度々登場する医療メスや、
罫書針などで今回は取り除きました。
次に、今回修正したい材と同種の木材を粉にし、特殊な樹脂と混ぜ合わせます。
盛り盛り、、、
余分な部分を削って、
この段階で、木材の導管などの自然な凹凸を再現しておきます。
ここで塗料を用意。
先ほどの特殊な樹脂は塗料で染める事が出来るので、僅かな色の差を修正します。
表面を慣らしていくと、、、
良い感じになりました。
最後に、指板と同じ質感になる様に表面を仕上げれば、、、
↓どうですか?
多分言われなければ気付く人はいないと思います。
「簡易」修正でも、実はここまで出来るんです。実際この作業、塗料や樹脂の乾燥時間を除けば、手を動かしていたのは2~30分程です。
2つ目は、TOPの割れ修理で木材を埋めた部分の修正です。
まず、パックリ割れていたフォークギターのTOP材も、「腕」が良ければ、木工作業の段階ですでにここ(青い線で囲った部分ですね)まで↓
目立たない様に修正できます。
この「木工終了段階でほぼ目立たない修理が出来ている」という腕があるのが前提でもありますが(笑)、いわゆる塗装ガンを使った塗装をせずに簡易修正だけでも、
この位↑まで目立たなく仕上げる事が可能です(写真撮影の方向が逆からになってしまいましたけど)
今回の2例はどちらも、送料入れても1万円で御釣りがくる作業(TOP割れの木工は別です)。
「見た目が見えてしまう修正」=「簡易修正」としている工房もありますが、まあハッキリ言って技術者の「腕」さえあれば「簡易」でもこの位には仕上がるという事です。
木材が割れたり欠けたりしていて気になっているそこのあなた!近くの島村楽器で相談してみましょう!
ルシアー駒木でした