皆さまBuongiorno!!
島村楽器弦楽器アドバイザーの糸山です。
出発地ミラノ中央駅から別行動の糸山班。午前7時の車両に乗り込み、今回は「水の都」ヴェネツィアより、買い付け初参戦のエリアマネージャー:高橋と共にお届け致します!(ヴェネツィアには陸地が無いと思っていた高橋です笑)
ここヴェネツィアは皆さまご存知の通り、知らない人はいない、誰もが一度は訪れてみたい観光都市。ある年の夏の数日間は、たった1日でヴェネツィア本島の人口のおよそ2倍以上である13万人の旅行客が訪れたそうです。
運河を渡る小さな橋が至る所に架けられ、アップダウンの激しい石畳の小路が縦横無尽につながっています。まるで街全体が迷路のようなここヴェネツィア本島では、車両の乗り入れが一切禁止されています。車代わりの渡し舟が、異国情緒を誘う、古き良き中世の街並みが残ります。
こんな超有名観光都市に、ヴァイオリンメーカーなんて居るのか?おいおい、本当は遊びに行っているのではないか?と思ったそこの貴方!
安心してください、ちゃんと仕事してますよ!!
さて、今回はヴェネツィアで製作する2人のヴァイオリン職人をご紹介致します。
まず1件目に訪れたのは、Gregg Alf(グレッグ・アルフ)氏の工房です。
グレッグ・アレフ氏は、1957年アメリカ・カルフォルニア生まれ。19歳でイタリア:クレモナへ渡り弦楽器製作をマスターしたのちアメリカへ帰国し、ミシガン州において友人のJoseph Curtin(ヨゼフ・カーティン)と共にヴァイオリン製作スタジオ Curtin & Alfを立ち上げます。2013年のオークションにおきまして、今は亡き巨匠Ruggiero Ricci(ルッジェーロ・リッチ)が使用したCurtin&Alf作”Ex.Ricci”が、$132,000(約1320万円)で落札されたことは余りにも有名です。(存命中の現代製作家としてはワールドレコード)
VSA(ヴァイオリン・ソサエティ・オブ・アメリカ)コンペティションにおいてゴールドメダルを3度獲得し、今日生きている弦楽器の最高のメーカーの一人としてみなされております。
また、クレモナのヴァイオリン博物館「Museo del Violino」では、2016年9月15日~12月18日までのおよそ3か月間、イギリスのアシュモレアン博物館が所蔵する世界3大ストラディヴァリウスの1つ、1716年製「Messiah(メシア)」が期間限定で展示されているのですが、その管理責任者も任されています!
【写真↑Gregg Alf氏のInstagramより。当人はメシアの内部へ挿入した小型カメラからセルフィーを撮影する偉業(?)を達成。 笑】
クレモナMuseo del Violinoの公式HPより「Stradivari “Messiah”展示のお知らせ」
そんな超多忙なさなか、事情を何も知らない無知な我々はサクッとアポイントをとってしまった訳なのですが、とても気さくに快く対応して下さりました。
【↑写真:近年は製作拠点をここヴェネツィアへ移し、工房の窓からは美しいラグーンを眺めることができる素敵なロケーションのもと、静かに製作に集中している。】
彼の作品は言うまでもなく、世界中の有名演奏家によって使用されており、製作する作品は全て予約が入っているほどの入手困難なメーカーです。彼の顧客には、先述の巨匠:故Ruggiero Ricci(ルッジェーロ・リッチ)を筆頭に、ベルリンフィルハーモニーオーケストラの団員やロンドンフィルハーモニーオーケストラ、ロスアンゼルスフィルハーモニーオーケストラ、ボルチモア交響楽団、シカゴ交響楽団、クリーブランド交響楽団、デトロイト交響楽団、ソルトレイク、サンフランシスコ、シアトル、トロント、ニューヨーク・・・などなど、数え上げたらきりがないほどの演奏家によって現在使用されております。
伝統的なアプローチとCTスキャンを駆使しオールドヴァイオリンの膨らみ・板の厚みなどを徹底的に研究する最先端のテクノロジーを融合し、こだわりのハンドクラフトで1本1本情熱を持って、丁寧に仕上げられます。
【↑写真:本物のStradivariやGuarneriから細かく採寸し、表板・裏板の正確な膨らみを再現するための道具。】
彼の作品は、何千万もする超高額オールドヴァイオリンと交互に持ち替えて弾く場合にも違和感が少ないと評判で、オールド特有の音質特徴も良く再現されているとの評判から、世界中の演奏家やプロフェッサーから絶大な支持を受けております。
【↑写真:自身の作品の100年後・200年後のトラブルを未然に防ぐ目的で、彼の新作ヴァイオリンには予めポストパッチが貼ってある。】
日本の皆さまへ是非グレッグの作品をご紹介したい!という熱い思いが届き、今回は当社のために特別に”Gregg Alf Studio Limited Edition”を、裏板材(メイプル)の選定からオーダーさせて頂きました!Bravo!!!!
最終的に上記の2枚のメイプルに絞り込み、頭を悩ませることに…。グレッグ氏のアドバイスのもと、どちらが最適なのか、木材の選び方を伝授して頂きました。選択基準は、杢の入り方やその方向など裏板だけでもチェック項目は多岐に渡り、ここには書けない内容も。
その結果、こちらのメイプル材に決まりました。非常に美しい虎杢。音の秘密は下地処理にあるそうですが、それは企業秘密。はてさて、どんなサウンドになるのか、とても楽しみです!
製作モデルは、Giuseppe Guarneri del Gesu 1734年の名器 “Haddock”です!乞うご期待!!
今のところ入荷時期は未定ですが、そうは遠くありません。首を長ーくしてお待ち頂けたらと思います。
それでは、今回はこの辺で。
Ciao!!