島村楽器公式ブログ

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音楽力をアップする「耳コピのすゝめ 」第六回 コード

みなさんこんにちはサカウエです。

「耳コピ」に大切な4大要素というわけで、前回まではEQ、パンポット、速度調節、といった機材の活用方法についてご紹介いたしました。

前回の記事はこちら

今回からは耳コピに役立つ「音楽理論・楽器の知識」のお話に突入いたします。
まずはコードの話からスタートしましょう。

ボンバイエとチャーリー・パーカー

次の二曲をお聴きくださいませ。

炎のファイター(猪木ボンバイエ)

43秒あたりからのテーマ
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高校野球の応援でもおなじみ「猪木ボンバイエ」ですね。もともとはモハメド・アリの映画のBGMらしいです。

All the Things you are

17秒あたりからテーマ
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うーんシブい。ビバップ・ジャズの神様チャーリー・パーカーの演奏が有名なスタンダードナンバーです。

さてまったく趣の異なる二曲ですが、二曲にはある共通した特徴があります。

「リング登場BGM?」残念ですが違います。
ちょっと聴いただけじゃわからない・・・そんな時は耳コピしましょう。

「じゃあいつやるか?・・・今でしょう!」(どこかで聴いたフレーズだなあ)

その前に軽くコードのおさらい

その前に、コードとかあまり良くわからないというヒトのために一旦おさらいをしておきましょうね。

「定義がちょっとでもあいまいになってくると、途中で間違ってくるんだよ・・・」
ということで、わかってるという方も念のためお読みください。

「コード」はメジャーとかマイナーとかいった和音のことですね。
たとえばドレミファソラシドという音階(Cメジャースケール)の、1と3と5番目の音(ドミソ)を鳴らすとCメジャーコードになります。


「Cメジャーコード」って名前は長ったらしいので、普通は単に「C(シー)」と書きます(暗黙の了解)

そして1,3,5の音をそれぞれ

  • 1:ルート音
  • 3:長3度音
  • 5:5度音

と呼びます。

バンド・アンサンブルなどで、もしコードがCだったら、ベーシストは普通はルート音である「ド」を演奏します。

次にミがフラット(半音下がる)したこれは

「Cマイナーコード」と呼びますね。
このCマイナーコードは「Cm」「C-」「Cmin」と色々な表記方法がありますが、ここでは「Cm」と表記することにします。

そして1,b3,5の音をそれぞれ

  • 1:ルート音
  • 3:短3度音
  • 5:5度音

と呼びます。

さて、CとCmは、三度音が「長三度」か「短三度」の違いなんですが、響きは明確に異なりますね。
当然「コードの機能」も全く異なってきます。

ちなみにCでもCmでも、ルート音は変わらないので、ベーシストはどちらの場合でも普通は「ド」を演奏します。

さて、今はCのキー(ハ長調)で説明しておりますが、これが別キーになったりすると長三度と短三度の区別があやふやになってきます。(キーボーディストの場合は特に)

たとえばDメジャーコードをこう弾いちゃったりするんです

ドミソ(C)と押さえたポジションで右に一音分移動すると、なんとなく平行移動した感じですが、
実はこれはDではなくて「レ・ファ・ラ」つまりDmなんですね(ウエーンなぜなの?)

・・・皆さんのお怒りはごもっともです・・・・そもそもオクターブを12半音に分割して、メジャースケールの各音インターバルが「全・全・半・全・全・全・半」になっていることが、すべてややこしさの原因です・・・・この場でワタクシが変わりにお詫びいたしますのでご容赦ください。

ギターの場合

たとえばF(またはFm)のコードをセーハして押さえたポジションを2フレット内側に動かすと、ハーモニーは単に平行移動するだけなのでG(またはGm)になりますね。

Fm(やったー。なんとか押さえられましたー)

2フレット上げてGm

これは音程の決定システムが鍵盤と異なるからですね。

ここまでのまとめ

DとDmを間違えないようにするには、

ルート音から数えて半音4個離れているのが「長三度」
ルート音から数えて半音3個離れているのが「短三度」

と覚えるのが良いと思います。さっきのDmですが、レとファは確かに半音3個しか離れていませんね?
(あとですべてのキーで試してみてくださいね)

ハイおさらいはこれで終了ですが、最後に基礎の基礎が怖いってことを、今日何度も言っておきます(しつこいね)

ルート音を耳コピしてみる

それではこの二曲を耳コピしてみましょう。

世の中、Csus4、C(onG)といった、ひねくれたコードネームに出くわすこともありますが、今回は特別「ナントカマイナー」と「ナントカメジャー」というコードしか世に存在しないと仮定します。

まずはルート音を拾ってください。一番低い音で鳴っている音、つまりルート音(根音)は、コードネームで一番先頭になるアルファベットです。EQの低域を上げるなどすると聞き取りやすくなると思います。

「All the things You are」のような4ビート・ジャズのベースラインは、「ランニングベース」と呼ばれています。4分音符でベースラインを演奏するのですが、基本は一拍目が「ルート」と考えてください。

すると

炎のファイター

D - G - C - F

All the things You are

F - Bb - Eb - Ab

となります。(二曲とも、コードは1小節に1種類ずつしか出てこないです)

次に、細かいことはおいといて、「All the 〜」のコードシンボルを半音3個分(短三度)下げます(移調)。

「All the 〜」半音3個下げ

D - G - C - F

すると4小節目までは炎のファイターとルート音はまったく同じです。

次にメロディーを耳コピしてみましょう。著作権の都合でメロディーは記載できませんので、各小節の一拍目の音だけを表記してみます。ベース同様「All the things〜」のメロも短三度移調してみました。

炎のファイター


[file:shimamura-music:110917-10_InokiMelo.mp3]

All the things You are(移調後)


[file:shimamura-music:110917-12_all_mello.mp3]

なんと驚いたことに二曲のメロの、各小節の出だしの音は6小節までは、まったく同じなんですね。二曲が非常に良く似ていたのはこのためだったんです。

さて、ここでサカウエがお伝えしたいのはどっちがパクッたとかインスパイアされたとかいった話ではありません。この手のことは良くあることですし、実際にこれは偶然だと思います。

何が面白いかというと、どちらの曲も

「メロディーが、コードの三度音で作られている」ということです。

前述のとおり、あるコードのメジャーとマイナーの区別は、各コードの三番目の音が「長三度」か「短三度」かで決まるということでしたね。

ということはつまり、この二曲のコードネーム(ここではメジャーかマイナーか?)は、ルートとメロディーだけで判明するということですね。

するとこうなります。


(ちなみにキーはDm)

というわけで、曲のコード進行を耳コピしたいといった場合の順番としては

  1. ルート音
  2. 三度音程を探す>>マイナーかメジャーか?

を基本として考えると良いと思います。

もちろん、現実にはルートと三度音以外に色々な音が使われていて、コードネームもCsus, Cdim, Caug・・・C7, Cmaj7, C6・・・と色々なコードタイプが存在します。これらについては追々ご紹介していきたいと思いますが、今回はとりあえず基本として「メジャーかマイナーか?」を覚えておいてくださいね。

応用してみよう

さて今回のポイントは「ルート音」と「三度音」でした。

  • ルート音から数えて半音4個離れているのが「長三度(3rd」」=メジャーコード
  • ルート音から数えて半音3個離れているのが「短三度(b3rd)」=マイナーコード

それでは次のコード進行を見てください。

これは某ジャズスタンダードナンバーと同じコード進行です。譜例では左手ルート、右手三度音を表記しておきました。

「Cm7」や「F7」「Am7(b5)」といった見慣れないコードがありますが、7とかb5といったワケのわからんやつは無視でO.K. ここではあくまで左手でルート、右手で三度音だけを演奏してみます。

[file:shimamura-music:110917-08_kareha.mp3]

どうでしょう?ちゃんと調性が感じられるサウンドになったと思いませんか?そんなわけで、

ルートと三度音だけ弾いてればとりあえずコード感を出すことが出来る

ことになりますが、逆に考えると、(バンドでもソロでも)アンサンブルの中ではルートと三度音が必要不可欠ということですね。

たまにコードにくっついている9とか11, 13とかいった数字は「コードの機能」を決定する要素ではなく、あくまでオプション、おまけ。
料理におけ薬味やスパイスみたいなものと考えてください。ご飯に「大人のふりかけ」や「錦松梅」をかけても、ご飯としての存在は代わりません・・・と書いたら余計わけワカらないかなあ。これは後述したいと思います。

ちなみに先ほどのスタンダードナンバーのコードに7th, 9th, #9th, といった音を加えて弾いたものがコレ

[file:shimamura-music:110917-13_ALtension.mp3]

なんだかフクザツになりましたが、でもコードの機能自体は、先ほどのルート+3rdと変わってはいないのです(にわかには信じられませんがね)

わずか2音でも音楽になる

そんなお手本みたいな曲がコレ:

Waltz for ruth / Pat Metheny & Charlie Hayden

Beyond The Missouri Sky (Short Stories)

Beyond The Missouri Sky (Short Stories)

この曲も冒頭の1コーラス目はギター(単音)とベース(単音)だけで演奏されていますが、ちゃんと楽曲として成立しています。すなわちこの曲もメロディーに、コードの調性を確定する「三度音」が多用されているからですね。しかし名盤だなあこれは。

おまけの補講

ちなみに、C-F-Bb-Ebの様に、5度ずつ下がる(=4度ずつ上がる)進行を「4度進行の曲」とか呼んだりします。

5度とか4度がよく理解できないヒトは
5度=半音で7個
4度=半音で5個

と覚えると良いですよ。ギターだとフレット一個のずれが半音になりますね。

さて仮に「ド(C)」から5度ずつ下がる(=4度ずつ上がる)を繰り返すと。。

C - F - Bb - Eb - Ab - Db - Gb - B - E - A - D - G - C ・・・・

となり、12の音を全部巡り巡って最初の音に戻ってきます。あーら不思議。

Wikipediaによくまとまっていたので、詳しくはこちらをご覧ください。

というわけで、それではこの続きはまた次回。

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