みなさんこんにちは。島村楽器ピアノセレクションセンター ピアノ調律師のハラキです。
今回より「調律師のとある1日」がスタートします。
島村楽器のピアノ調律師がどんな日々を送り、どんなピアノと出会っているのか、ピアノにまつわるあれこれをご紹介していきます。
オススメのピアノや、イベント企画の裏側なども書いていきたいと思います。
時には、調律師の悩みもみなさんに聞いていただくかもしれませんが‥‥、ピアノ調律師のハラキ・イイダ・イトウの3名でお届けしますので、どうぞよろしくお願いします!
ピアノセレクションセンターには大きなショールームがあり、数多くのピアノを展示しています。
ここには、国産から輸入ものまでアップライトピアノ・グランドピアノ合わせて、100台前後が展示されています。
乾燥!乾燥!!
これらのピアノは定期的な調律・整調などメンテナンスを行ない、品質を維持しています。
この時期は何といっても、乾燥です!私の指もカッサカサです!
エアコンの温度変化と低湿度により、ピアノの状態を維持することが難しいですね。
お部屋の環境を一定に保つことも、ピアノを長持ちさせる秘訣なのです。
みなさん加湿器は必須ですよ〜。
ご家庭に加湿器のない方は、洗濯物や濡れタオルを干しておくのもオススメです。
目安は温度15℃〜25℃・湿度40%〜60%ですので、温湿度計をお供にお部屋の環境を整えてあげてくださいね。
調律と整調
たくさんのピアノがある中、今日はSAUTER(ザウター)アップライトピアノのUP122の調律と整調をします。
SAUTERはドイツメーカーのピアノです。
木目調の美しいデザインのピアノが多くありますが、見た目だけでなく中にも木をたくさん使用しています。
木のいい香りがしてますよ〜。
整調では、環境や弾いていく間にずれた部分を直し均一なタッチにします。
冬場は木の水分も蒸発して木が細くなり、無駄な空間ができることがあります。
それをつめることで弾いたときの反応が良くなり、タッチも軽く感じます。
この時期は調律しても音程が下がりがちです。ピアノは置いておくだけでも温度湿度の変化による影響で毎日変化しています。定期的な調律・整調などのメンテナンスは欠かせないものなのですね。
ではここで、今回のピアノの特徴を少しご紹介します。
このUP122には、「R2」というアクションパーツがついています。
SAUTERの「R2」とは?
R2とは、「ダブルレペティションアクション」の略称です。
グランドピアノには、「レペティションレバー」という機構があります。
このレペティションとは一体何か?という疑問が浮かびますね。
レペティション(repetition)という単語は、「繰り返し・反復」などの意味です。
「繰り返す」ということは‥‥そうです、「連打」を助ける機構なのです。
これは、鍵盤の動きをハンマーに伝えるジャック(長靴のような形をしているパーツ)が、素早く元の位置に戻ることにより高速な連続打鍵を可能にするものです。
アップライトピアノは、機構上レペティションレバーを付けることができない上、縦型のためにハンマーの動きがグランドピアノに比べて遅くなってしまうのです。
ではUPではどのようにしてそれを解消し、連打ができるようになっているのでしょうか?
その仕組みを見てみましょう!
R2は、ピアノ内部のアクションと呼ばれる部分にあります。
ジャックの前についている、この金属の板バネがR2です。
R2によってジャックの抜けが良くなり、そしてハンマーの戻る反応もより良くなるのです。
まさにグランドピアノのレペティションレバーの役割といえますね。
他のメーカーやR2が付いていないモデルでも、「ブライドルテープ」「フレンジコード・バットスプリング」と呼ばれるパーツによってハンマーの戻る動きを補助しているので、R2がなくてももちろん連打は可能です。
R2はよりその反応を良くし、連打に対しての正確さを高めているということですね。
R2があることによりグランドピアノのような打鍵ができるようになったとされ、SAUTERピアノの特長ともいえる部分のひとつです。
おしまい
このような機能が付いているピアノもあるわけですね。
SAUTERアップライトピアノの同じUP122でも、R2が付いていないものもあります。
R2が付いているものかどうかを確認するということも、当たり前のことではありますが私たち調律師の重要な仕事のひとつなのですね〜。
ピアノは大きさや見た目だけでも数多くの種類がありますが、中の機構にもそれぞれ特徴があり、音も違います。
R2付ピアノは、現代音楽が好き!トリル万歳!という方にはオススメですね〜。
気になった方は、ぜひ試弾にきてくださいね。
次回はイイダがお届けします。お楽しみに(・ω・)
島村楽器ピアノセレクションセンターについて
ピアノセレクションセンターは、専用工房を併設したアコースティックピアノ専門のショールームです。
フロアには、新品・中古ピアノ、アップライト・グランドピアノを合わせて常時100台以上を展示しております。また、専用工房ではピアノの調整・点検・修理を行い、アフターフォローにもお応え致します。
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- Vol.22「ピアノの仕組み グランドピアノ編 その1」
- Vol.21「ピアノの外装傷修理」
- Vol.20「ピアノの仕組み その4 アクション」
- Vol.19「外装あれこれその2」
- Vol.18「外装あれこれその1」
- Vol.17「鍵盤のメンテナンスと白鍵の修理について」
- Vol.16「ピアノの仕組み その3 ピアノの中は・・」
- Vol.15「スタインベルグAT-23DC」特集
- Vol.14「PSCでビューティーコロシアム!U30BLさんの場合 7」
- Vol.13「PSCでビューティーコロシアム!U30BLさんの場合 6」
- Vol.12「ピアノの仕組み その2 部品の名前」
- Vol.11「ピアノでビューティーコロシアム! U30BLさんの場合 5」
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- Vol.8「ピアノの仕組み その1 ピアノの材料」
- Vol.7「ピアノでビューティーコロシアム! U30BLさんの場合 2」
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- Vol.4「ピアノの防音対策について」
- Vol.3「突撃!ピアノの意外な使用法!?」
- Vol.2「 あれ?音が出ない!その時ピアノの中では・・・」
- Vol.1「ピアノメンテナンスとザウターピアノのR2について」