こんにちは!川崎ルフロン店の弦楽器アドヴァイザー石井です。
ところで、皆様がご愛用されている楽器の裏板は一枚板ですか?それとも二枚板ですか?バイオリンの魅力の中で、「美しさ」はかかせない要素ですよね?その中でも裏板のモク(トラ目のような模様が代表的)は最大の魅せどころです。裏板には一枚の板を切り出して作る「一枚板」仕様と、二枚の板を張り合わせる「二枚板」仕様があり、楽器選びのポイントとしてどっちを選ぶかは非常に迷うところです。何といっても見た目が大きく違いますし、音もなんとなく違うような気がして決めきれないっ!…と悩みに悩んで困っていらっしゃるお客様に何度か出会いました。では、一枚板と二枚板って、いったいどんな違いがあるのでしょうか。
まず一枚板とは、文字通り一枚の楓材(稀にポプラ材など使われることもあります)を削りだして成形されたものをさし、当然継ぎ目など一切ないものになります。継ぎがないことで接合部がはがれることも当然ありませんので、その点においては二枚板よりも丈夫!といえなくもないです。ただ、裏板の楓材は元来強度が高い材ですので、割れる心配はもとより少なく変形なども起こりにくいので、合わせていてもトラブルになることはほとんどありません。
また、音響特性という点においては、実は一枚でも二枚でもさほど大きな違いはないというのが現代のバイオリン製作の考え方になっています。まったく同じ材、同じ条件で作成することは出来ませんので言い切ることは出来ませんが、どちらが優り、どちらが劣るというものでもありません。現にかのストラディバリウスを例にとっても、一枚板も二枚板も、遜色なく名器が存在しています。二つの違いは、強度面・音響面の違いというよりは、やはり見た目の美しさに重点が置かれます。全体を流れるようにはしる一枚板のモクの美しさは、とても魅力的です。特にモクの深いものは、一枚板であることで芸術的な美しさを手に入れることが出来ると思います。一方、二枚板も良質なキメの細かいモクが左右対称に綺麗に並べられている様は、それはそれは大変に美しいものです。
結論を言ってしまえば「好み」なのですが、もうひとつだけ違いがあります。それは「コスト」です。一枚板は、二枚板に比べて原木のサイズが単純に2倍なければ切り出すことが出来ません。そのため、一枚板のほうがより贅沢に切り出していることになり、一般に一枚板のほうが材料費が高くなります。
当社で販売している楽器では、GEWA社の「Meister」では一枚板を、ClausHermanシリーズでは二枚板を採用しています。「Meister」は生産母体を中国に移すことでコストを下げその分材料費に当てているため、この価格で一枚板という選択を可能にしました。ClausHermanシリーズは、音質・製作精度へのこだわりからドイツ生産を貫き、音質に影響がないという判断から、二枚板をあえて選択しています。その他マスターメイド楽器については実にさまざまです。
ClausHermann No.56
¥260,000(税込)
GEWA Meister
¥180,000 (税込)
さて、あなたはどちらを選びますか? ちなみに私は…うーん、やっぱり選べないっ!
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