みなさん、こんにちは。ヴァイオリン工房のモテキです。
今回は、いよいよマイスター学校エピソードの最終回です
前回までのお話はコチラから↓↓↓
教室にて乾杯!?
先日、とあるフランス映画を観ました。
その中で、女性教師役の女優が自分の妊娠を祝うため、
職員室の同僚にシャンパンを振舞う、、、シーンがありました。
私は思わず、同じ光景を経験したマイスター学校を思い出しました。
マイスター学校在学中のある日のこと
休憩時間に男生生徒が大きな紙袋からシャンペンと大量の紙コップを出して、
教室内のみんなに振る舞いはじめました。
一人意味不明な私は、「生徒のストレス解消に学校もイキな計らいをするものだ」
と妙な感心をしていましたが、それは大きな勘違い。
実は彼の誕生日だったのです!
日本の感覚からすれば「学校でシャンパン!? あり得ない!!!」となりますが、
ドイツ人からしみるば、シャンペン1杯などジュース程度の感覚でしかありません。
なによりドイツでは、生涯祝い続けるほど誕生日は大切なので、
受験中の教室内でも、祝い酒を振舞まうのは珍しくはありません。
私も飲んでストレス解消になりましたが、、、、
後の授業は、思考回路が緩くなって困りました、、(苦笑)。
いよいよ受験
マイスター学校で勉強して受験する科目は、手工業者の一般教養にあたる、
簿記、経済、法律、教育の4つ。
10ヶ月のうちに各講義が終了するごとに、各科目試験が行なわれました。
語学で大きなハンディを負っていた私は、合格する為の作戦を練りました。
文章題が少なく、計算式が多い簿記テストで、なるべく多くの点数を
稼ぐことを目標にしました。
その結果は、、なんとその科目で学年最高点をマークしたのです!
その後、他教科も何とか無事に通過して、いよいよ最終教科&最大難関の
教育学の口頭面接試験を迎えることになりました、、、。
教科書は約350ページもあり、中には哲学的概念なども含まれていたので、
一時 私の頭はパニック状態に陥りました。結局そんな状態ですから、
内容を総ては把握することは不可能でした、その私が立てた試験突破最終作戦とは、、、、
ヤマを貼ることにしたのです((汗))。
万策尽きて、、と言うより、最後にはこれしか方法がありませんでした(エイ!)。
私は教科書内の600項目に及ぶトピックから、たった二つだけヤマを張って丸暗記しました。
口頭試験会場では受験生10名が同席して、試験官から無作為に質問されました。
すると、あるドイツ人生徒が受けた質問こそ、私が丸暗記した一つではないですか、、、
しかしその生徒はうろ覚えのようで、口ごもりながらハッキリ回答できません。
試験管は同じ質問を投げかける他の生徒を、目で探し始めました、、、、、
思い起こせば、このとき幸運の女神は私に微笑でくれたようです、、、
試験管に指名されたのは、その質問に答えたくて、ウズウズしていた私でした!!!! !
最終テストの直後、試験から合格者の名前が呼ばれていきました。
「今回の合格者は、ミュラーさん、コールさん、モテキさん、、、」
口答試験で口ごもっってしまった、あの生徒は落ちてしまいました。
ドイツ人でも口答試験で落ちるほど難しいのかと、改めて自分の幸運に感謝し、
受験後、マイスター学校食堂で売っているドイツビールで祝杯を挙げました。
あのときの一杯の味は今でも忘れられません、多分人生で最高の一杯です!
その後さらに、専門課程の筆記試験と実技試験をパス、2ケ月の期限付きで
製作したオリジナルモデルのヴァイオリン製作の審査を経て、
私はようやく、マイスター資格を取得したのでした。
ドイツが私に教えた大切なこと
私はマイスター試験を通じて、生涯勉強する大切さを知りました、、、
マイスター学校で出会った真剣な意気込みのクラスメート達と講師陣、
受験勉強に図書館通いして知った、ドイツの大学生の猛烈な勉強ぶり
(ドイツの大学卒業は、かなり難しいそうです)、
彼等はほんとうに良く勉強します。
ドイツという国は、どんな職業であっても、相応しい能力と資格があれば、
総ての人たちに等しくキャリアアップの可能性が開かれています。
コネ、生い立ち、性別、人種、国籍による区別を排して、
純粋に、実力とそれに伴う資格が機能する社会を目指しているようです。
だからこそ、生涯勉強し向上することが、自己実現の大きな手段になります。
ドイツ人の口ぐせに
ローギッシュ(合理的、理に適っている、ムダがない)
という言葉があります。勉強する=ローギッシュになる=人生で成功する
という考えがドイツ人の根本にあります。
ですから、より良い人生を目指す人は本当に良く勉強します。
私は大学には行かずに、若くして職人の世界に入りましたが、
この受験勉強を通じ、生涯勉強し続けることの大切さと、、
(ドイツ人が云うところの)ローギッシュな人生をおくることの大切さを実感しました。
これこそが、マイスター挑戦で得た本当の宝物かも知れません。
(つづく)