島村楽器公式ブログ

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STEINWAY(スタインウェイ)の秘密 Vol.2 アクションの秘密

みなさんこんにちは。前回マニアック調律師と名乗り、突然現れたイシイです。

まだ暑い日が続きますがみなさんお元気ですか?私は重さ20kg(たぶん)の調律工具カバンを抱えて、水分補給しながら元気に仕事に励んでいます。熱中症と日焼けには充分注意しないといけないですね。

さて前回でのお約束の通り、Vol.2の今回からSTEINWAY(スタインウェイ)のメカニックを「演奏に役立つ視点」で解説させていただきます。
今回はタッチや音色に大きな影響を与えている「STEINWAYのアクション」について掘り下げてみましょう。

100年前からほとんど変わらないスタインウェイのアクション

上の画像はSTEINWAYのグランドピアノアクションモデルです。
私はSTEINWAYの、このシンプルで美しいアクションの姿に萌えてしまいます(汗)。
このアクションは1883年に完成され特許を取得。現在でもほとんど形が変わっていません。日本では明治維新後間もないころですね。
126年も前にこんな美しいアクションを開発するなんて…。やっぱり萌えてしまいます。

他の一般的なグランドピアノのアクションを見てみましょう。

いかかでしょう?一般的なアクションと比べてSTEINWAYのアクションは細くてシンプルだと思いませんか?
そうなんです!そこなんです!!
その「細くてシンプル」というのが、STEINWAYのタッチの秘密なんです。

アクションブラケットについて

はい、そして今度はこちらの画像です。

STEINWAYのアクションから、ハンマーやレペティションレバーなどを外した骨組み「アクションブラケット」です。
ネジ穴が開けられた細いレールが見えますが、このレール内部には「ブビンガ」という硬い木材が充填されています。ハンマーはアルミのレールを通して、木材のブビンガにネジで固定されます。「木材に固定される」というところが重要なのですが、なぜなのかは後で詳しく説明します。今の段階では「木材に固定される」ということだけ、よく覚えておいてくださいね。

フレンジについて

次はハンマーの根本「フレンジ(カプセル)」がレールに固定されている画像です。


左がSTEINWAY、右が一般的なグランドピアノです。

見比べるとSTEINWAYは細くて丸いレールの上面に、一般的なグランドは平たいレール上面にそれぞれ固定されています。
ここで注目してほしいのは、細くて丸いレールと平たいレールの違いです。細くて丸いレールは平たいレールに比べ、フレンジ下面とレール上面が接触している面積が小さくなります。これはスピーカーにインシュレーターをはかせて音(エネルギー)の損失を抑えて、音を良くするという発想と同じです。

つまり、STEINWAYはフレンジとレールの接触面積を小さくして、鍵盤を弾く力「打鍵のエネルギー」の損失を最小限に抑えてハンマーに伝え、演奏者の思い通りの音が出せるように工夫されているのです。

そしてもうひとつとっても大切な秘密が隠されています。
下の二つの画像をよ〜く見比べてください。違いがわかりますか?


先ほど「アクションブラケット」のところでご紹介した「木材に固定されるハンマー」と「アルミに固定されるハンマー」の違いです。

弾いていることが実感できる仕組みのアクション

演奏の仕方、鍵盤の弾き方押え方は10人いれば10通り、100人いれば100通りの弾き方があり、他の人とまったく同じ弾き方はできません。この微妙な力加減の違いで出てくる音が変わってくることはみなさんよくご存知ですよね。

複数の演奏者が同じピアノで同じ曲を弾いても音色が違って聴こえてくるあの現象です。なぜ違った音色になるのでしょう。
曲の解釈などの違いもありますが、アクションの動き方、ハンマーの動き方の違いで、出てくる音色の違いが発生するんですね。

ピアノのハンマー(アクション)の動きは下からに向かって一直線に運動しているように見えますが、実は微妙に横ブレしたりハンマーシャンクがしなりながら運動しています。ハイスピードカメラで撮影して超スローモーションで再生すると、よく分かります。

そこで思い出していただきたいのが、先ほどの「木材に固定される」という言葉。
STEINWAYのハンマーは、硬いブビンガという木材に固定されています。しかし、「硬い」といっても金属のアルミに比べれば木材はかなりの弾力性、柔軟性があります。柔軟性の無い金属に固定されるハンマーに比べ、柔軟性のある木材に固定されたハンマーの方が、微妙な横ぶれやシャンクのしなりなどの運動が阻害されることが少ないのです。

私が思わず萌えてしまう細身でシンプルな外観のアクションの秘密は、「打鍵のエネルギー」の損失を最小限に抑えて思い通りの音に反映させる素晴らしい仕組みなのです。

「弾いていることが実感できる」、そんな仕組みのアクションなのです。

調律の仕事をしているとこんな話しをよく聞きます。
「○○○のピアノはだれが弾いてもあんまり変わらないけど、STEINWAYだと違いがよく分かるよね」

「違いの分かるオトコ」…、じゃなくて「違いの分かるピアノ・THE STEINWAY」
素晴らしいですねぇ〜♪♪(また萌えてます)

いかがでしたか?なんだかアクションといっておきながら、ハンマーのことばかり語ってしまいました。STEINWAYはハンマーでこれだけ語れるんです。アクションの他の部分についてももっともっと語りたかったのですが、今日はこの辺までに抑えておきます(泣)。

次回Vol.3はSTEINWAYの音の命、「リムと響板」について語りたいと思います。
乞うご期待、お楽しみに!!

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