島村楽器公式ブログ

全国展開している総合楽器店のスタッフが、音楽や楽器の楽しさや、楽器店にまつわるお話をお伝えします。

ルシアー駒木のギターよもやま話 その108「ギターだって抗菌/抗ウイルス!」

皆さまこんにちは。

この2か月ほどは、ハードな移動を伴う出張は無くなり、タフなリペア作業も少なく、
結果エナジードリンクの消費量が極端に少なくなるという、身体にとっては良い変化もあったのですが、
販売数が落ちた事による安売りエナジードリンクが店頭に並び、結局それをまとめ買いした、
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ルシアー駒木です。


緊急事態宣言が解除された事で、私の通勤電車内の様子も、自粛前の感じに戻ってまいりました。
自粛によって感染拡大を防ぐ段階から、次のステップへ進んで行かねばなりませんね。

周りを見ると、私も含め、身の回りにあるものを消毒する習慣がこれまで以上に広がった気がします。
ドアノブや手すりなど、不特定多数の人が触れる場所は勿論ですが、スマホに代表される「個人所有物」も消毒する方が増えたとの事。
それを介してウイルスを移動させてしまう可能性があり、また、そもそも想像以上に汚れているという話も同時に広がった事が大きいようです。


うーん、技術者として何か出来る事はないかな
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、、、と思ったルシ駒、
ふと、十数年前に店頭のリペアでお受けしたご依頼を思い出したのです。
それが今回のテーマにつながる、「抗菌コーティング」!

詳細は割愛しますが、私のリペアブースにいらしたお客さまのご友人が入院されておられ、「病院内にギターを持っていきたいけどギターに抗菌の加工みたいなのは出来ないの?」というご相談でした。
全く無知でしたので、色々調べて作業した、当時の思い出。

今なら当時よりももっと効果的なものが出来ると思い、今回準備を進めました。

今回ご用意したものとは、、、

そして、
今回私たちがご用意させて頂いたのは、
3段階!
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「抗菌/抗ウイルス塗装 & コーティング & ワックス」

まずは、塗装

まずは正にプロの作業とも言える、「塗装」から。

使うのは、⇓これ
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「何なのかは企業秘密ですよ!」みたいな記事にしようと思ってボカシをいれたんですけど、単に怪しい写真になってしまった(笑)

これはちょっと特殊な液体でして、簡単に言えば、既存の楽器用塗料をこの液体によって抗菌/抗ウイルスの塗料に変える事が出来るのです。

ですから、皆様の楽器の現状にコーティングするように被せて吹き付ける事は勿論、この機会に色を変えちゃおう、エイジド加工にしてしまおう、ウレタンをラッカーに塗り替えよう、、なんて、リフィニッシュがてら抗菌/抗ウイルス仕様にしちゃうのもOKです。

しかも、ラッカーでもポリウレタンでも塗料種を問わず可能です。

作業前後写真撮ろうと思ったのですが、写真では抗菌/抗ウイルスになっているのかどうか分かりませんので止めました(笑)



この作業は基本的に「塗装」ですので、ある程度の手間を要しますが、それと引き換えに「菌やウイルスが付着してもその場で不活性化されてしまう楽器」に皆さんの楽器そのものを変えてしまう事が出来ます。
塗面でない指板などにも可能です。

一点だけご注意。

この仕上げはその塗装の性質上完全な艶アリには出来ませんので、3分~5分つや消しのような状態になります。
試しに出来るだけ差が出ない様にルシ駒技術で塗装してみました。
このように正面からの写真であれば、あまり大きな差は感じないかもしれません。
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ですが、同じ角度で光を反射させてみると、

こちらがノーマルなクリア塗装
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そしてこちらが抗菌/抗ウイルス仕様のクリア
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どうですか?少し光の反射が違っているのがお分かりかと思います。
どうしてもこのような仕上げにはなりますので、ご承知おきください。(もちろん完全なつや消しにする事や、エイジド加工的な仕上がりにすることも可能です)
下地となるカラーや木材のカラーによってもその感じが違いますので、是非直接細かな仕上げ打ち合わせを致しましょう!
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こちらは、
「大腸菌及びブドウ球菌を0.5ml滴下し、ポリエチレンを被せて35℃での保存状況で24時間後の生菌数を測定」
という試験を実施した結果がありますので、ご覧ください。

  • 対照・・・プラスチックシャーレ
  • 検体1・・・何もしていない無処理のアクリル板
  • 検体2・・・ウレタン塗料をこの抗菌/抗ウイルスにしたものを、アクリル板に塗布したもの

となります。

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24時間後、シャーレ内(対照)・検体1では共に凄まじい数に増加していますが、検体2(今回の塗装)では何と10以下。
まさに絶大な効果を確認できています。


次は、コーティング


皆さまの中には、抗菌/抗ウイルスにはしたいけど、塗装までの加工はちょっと抵抗あるなあ、、、もう少し簡易的なものはないのかなあ、、、楽器にあまり手を入れたくはないなあ、、、という方もおられますよね。
そんな方に向けては、ちゃんと少しライトなやつをご準備させて頂きました。
それがこちら。

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これは塗装を塗り替えたり重ねたりする事はなく、皆さんの楽器表面にそのまま「コーティング」するコーティング剤になります。

塗面そのものが抗菌/抗ウイルス化される訳ではないとはいえ、表面をしっかりコーティングしますので、効果はある程度期間持続。パーツにもコーティングできます。

勿論、環境科学センターによる抗ウイルス性能評価試験において抗ウイルス効果を示す事が認められたものです。

最後は、ワックス

そして、更にライトな、「洗浄・抗菌のワックス」もご用意しました。
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こちらはワックスとして表面に塗りこみますので、これだけで承る事が出来るのは勿論の事、
通常のメンテナンスやリペアの仕上がり時に僅かのアップチャーをして頂く事で、作業終わりの拭き上げ時、既存の仕上げワックスと置き換えられます。

こちらはワックスが表層に乗っている限り持続します。塗装やコーティングより簡易的で抗菌期間も短くなるとはいえ、それでも除菌スプレーのような「その瞬間だけ」ではありません。

JIS Z 2801 抗菌性試験方法で定められている試験方法で2.0以上であれば抗菌効果があると認められた抗菌活性値で見ても、黄色ぶどう球菌で2.9、大腸菌で6.1という高い試験結果を得たワックスです。

効果抜群

これら3パターンに共通して言えるのは、結果的に防カビや防汚、消臭という効果を得る事にもなりますし、有害化学物質も分解除去出来ますので、コロナ感染に関してやそもそも抗菌や抗ウイルスに関してそう神経質でない方にとっても、かなりメリットがあります。

塗装に関しては年単位でその効果が持続しますが、コーティングやワックスはそれ自体が表面に残っている間は、という事になります。
持つ期間は、車のコーティングやワックスをイメージしてもらうと良いかもしれません。


如何でしたか?

ラックストアやホームセンターに行けば、所謂除菌スプレー的なものは入手できますので、それをご自身でコマめにスプレーして除菌するのも勿論良いと思います。

が、
スプレーの成分と塗装種の組みあわせによっては塗装を痛めてしまう事もありますので、注意が必要です。
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今回ご案内する方法はどれも私たち技術者が行いますので、皆様の楽器を拝見し、塗装状態など確認させて頂いた上で、ご案内致します。
仕上がり具合他、まずは相談してみて、が一番安心ですよね!


個人所有のギターに施す前提で書かせて頂きましたが、音楽教室の備品ギターやスタジオのレンタル楽器などに行うのもとても効果的ではないかと思います。
楽器をレンタルされる形態・共有楽器があるような形態で、事業運営されてらっしゃる皆様、御一考を!

店頭リペアマン常駐店ではリペアマンにお声がけ頂ければ、細かなご相談を承る事が可能です。
勿論全国の店舗で受付可能な準備を急いでおりますので、まずはお気軽に店舗スタッフにお声がけください!

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ルシアー駒木でした!


その他の「ルシアー駒木のギターよもやま話」を読みたい場合はこちら!

2020年春 弦楽器買い付けレポートその7 「ドイツ編」(最終回)

今回の買い付けは、2020年2月13日~2020年2月21日に行いました


どーも皆さんGuten Tag!!

プラハ編を担当した男前店長フルニシに代わり、再びシマムラストリングス秋葉原:マネージャーの糸山がご案内します。
今日が最終回です。

プラハを1泊で引き上げ、翌朝早朝にドイツ・ライプツィヒへと移動します。

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プラハ本駅の正式名称は「Praha hlavní nádraží」。抑揚をつけずに「プラハ ・フラヴニー・ナードラジー」と口ずさんでしまうと、呪文か念仏のような響き。
行き方は、まず6:26 プラハ本駅(Praha hl.n.)発 ➡ 8:43 ドレスデン中央駅(Dresden Hbf)着のドイツ国鉄「DB」に乗ります。

ドレスデンで乗り換えがあり、9:09 ドレスデン中央駅 ➡ 10:19 ライプツィヒ中央駅(Leipzig Hbf)で目的地に到着。約4時間の列車の旅です。

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6:26発の列車はベルリン行き。行き先がたくさんあるので、電車の番号「DB EC178」を確認してホームへと向かいます。『朝ごはん買う時間あるかな?』『大丈夫じゃん?』と打ち合わせ中の後ろ姿です。

チェコードイツ国境ではパスポート・コントロールはありませんでした。
それどころか『只今、国境を越えドイツに入りました。』と期待していた車内アナウンスなど皆無で、国境通過は何の前触れもなく、当たり前のように淡々と列車は進みます。

www.youtube.com

4時間もあると色々できます。
電車内では溜まったままの仕事メールの返信、買付楽器のメモ、買付ブログの下書き、会社のSNS作成などなどオフィス代わりに使用します。

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締めきりに追われる二人。車窓の景色はほとんど記憶がありません。今思うと勿体ないですね。
ですが、行き詰った時は割と直ぐ諦めて寝ます(笑)
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盗撮されていました。アイデアが閃かない時は寝かせるタイプです(笑)

そんな感じの電車旅で4時間が経ち、ライプツィヒに到着。この街に着いたら、ご挨拶に伺わない訳にはいかない「大作曲家」が、ここ聖トーマス教会に眠っています。

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ライプツィヒのシンボル、聖トーマス教会。

聖トーマス教会は、J.S.バッハが1723年から亡くなる1750年まで音楽監督を務めた教会です。
教会の中に進むと、J.S.バッハが演奏したオルガンが今でも設置されています。

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週末にはオルガンコンサートが催されています。

さらに聖トーマス教会には、当時ライプツィヒのリュート製作における第一人者による、「バロック・コンディション」のヴァイオリンも展示されています。

イタリアンやフレンチのような派手さはありませんが、内声部の充実した暗くて深い音色は、正にJ.S.バッハが想定していたヴァイオリンだと言えるでしょう。

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"Johann Christian Hoffmann, Germany - Leipzig, 1729"は、今でもライプツィヒ・ケヴァントハウス管楽団から選抜された演奏家が、ここ聖トーマス教会で演奏するそうです。しっかりメンテナンスされていました。

J.S.バッハは、この聖トーマス教会のために「毎週新しいカンタータを作曲する」・・・という多忙な生活を送っていました。

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教会内部にはJ.S.バッハのお墓があります。当初は別の場所にお墓があったそうですが、掘り起こされ、元職場に葬られているJ.S.バッハです。

バッハの時代は、作曲した曲は一度演奏したらおしまい。
毎週毎週、精魂込めて創作した名曲の数々が当時は「使い捨て」だったなんて、ホントに大変な労働環境でしたね。

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お疲れ様です。

バッハはドイツ語で「小川」という意味。ベートーヴェンが「バッハ(小川)ではなく大海だ」と評したのはあまりにも有名です。
ところが最新の研究では、バッハ一族の名前由来は「パン屋(古いドイツ語で「bachen」はパン焼き「backen」のことらしい)」だった先祖からきてると、この小さなドイツ語の本に記されてました。(byマイスター茂木)

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バッハは「小川」ではなく「パン屋」!?

パンと言えば、ライプツィヒは欧州のなかでもいち早くコーヒー文化が根付いた街。
街にはカフェが沢山あります。
J.S.バッハ自身もコーヒー好きが高じ、「コーヒーカンタータ(Kaffeekantate)」を作曲したと言われています。

www.youtube.com

筆者がひそかに、取材という名の味見で狙っていたドイツ最古のカフェ「Coffe Baum 」が訪問先の近くにあったのですが、なんと閉店していました。。。
シューマン、ワーグナーやリストも訪れたカフェと聞いていたので、残念。

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ウィッシュリストに入っていたカフェを逸した一行は、ドイツでイタリアンを食するという痛恨の選択。でも美味しかったです! 実は、我々のスーツケースをちょっとだけ預かって頂いて、聖トーマス教会を観光しました。親切なお店の皆さんDanke!!♪

さて、2020年春の買付のフィナーレを飾る工房はコチラ、Jens Peter Schade(イェンス・ペーター・シャーデ)氏のアトリエです。
Schadeさんのアトリエには、昨年春にも訪れています♪

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2020年1月にお亡くなりになられた無量塔蔵六氏の著書「ヴァイオリン」を手にし記念撮影。

故・無量塔蔵六氏は、マイスター茂木の最初の師。
そして、日本人として初めてマイスターとなった偉大なパイオニアです。
シャーデ氏は訃報に大変驚き、残念な表情に。先代:Joachim Schade(ヨアヒム・シャーデ)とも長く親交があったと教えて下さいました。

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マイスター茂木は、高輪台の東京バイオリン製作学校から繋がったライプツィヒでのご縁に、感極まった様子。
今日の訪問の目的は、Jens Peter Schade(イェンス・ペーター・シャーデ)氏の弟、Sebastian Schade(セバスチャン・シャーデ)の作品を再び入手することでした。

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Sebastian Schade(セバスチャン・シャーデ)は、1964年ドイツ・ザクセン州の都市:ハレ(ザーレ)生まれ。
16歳で父:Joachim Schade(ヨアヒム・シャーデ)のもとでヴァイオリン職人としてのキャリアをスタートします。

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ライプツィヒは、マイスター茂木がどうしても外せないと断固として譲らなかった行き先でした。
その後、ドイツ国内各地の工房で下積みを経験する所謂「Journeyman(ジャーニーマン)」 の時代を経て、1990年にドイツ国家資格「Meister」の資格を取得。1999年に35歳で独立。

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フルニシは『セバスチャン初めて弾いたわ~。』と感動の初対面。そうでした、前回は入荷直後に売れてしまいました。
現在56歳。ドイツ楽器製作者協会に所属し、彼の作品は父:ヨアヒム同様に優れたコンサート楽器として、ドイツ国内外で広く使用されています。

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こんな良い楽器を持って、聖トーマス教会でJ.S.バッハの無伴奏ソナタ&パルティータ(弾けないけど)を弾いたら最高だろうなぁ・・・と恐れ多き妄想をしながら試奏させて頂きました。
著名な愛用者には、ベルリン国立歌劇場管楽団及びゲヴァントハウス管楽団の第1コンサートマスターを歴任したKarl Suske(カール・ズスケ)。
www.youtube.com


僅か18歳にしてベルリン・フィルハーモニー管楽団のコンサートマスターに着任したSaschko Gawriloff(サシコ・ガヴリロフ)。
www.youtube.com

ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管楽団 第一コンサートマスター:Frank-Michael Erben(フランク=ミヒャエル・エルベン)。
www.youtube.com


などなど、世界中の音楽家に愛されている現代作家です。(Sebastian Schade氏ご本人からの情報提供に基づいて記載させて頂いています。)

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滋味豊かな印象を受ける精巧なクラフトワークにも注目。

前置きが長くなりました。
それでは、今回入手しましたSebastian Schade(セバスチャン・シャーデ) 2020年モデルをご紹介します!

Sebastian Schade, Germany – Halle/Saale, 2020

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Sebastian Schade, Germany – Halle/Saale, 2020
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Sebastian Schade, Germany – Halle/Saale, 2020
名器:Antonio Stradivari(アントニオ・ストラディバリ)1705年のインスパイア作品。
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「東欧のストラディバリウス」たらしめる所以となった、シャーデ・ファミリー直伝の代名詞的モデルです。
精巧なつくり、職人技が光る美しい仕上げ、クレイジーな杢目に我々は即虜になりました。スムースで懐の深い音質は、コンサート楽器として活躍することをお約束致します。
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Sebastian Schade セバスチャン・シャーデ

はぁ~満足満足・・・と思ったのも束の間。
筆者のスカウターから姿を消し、独り無心にカメラのシャッターを切るマイスターの姿が。

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マイスター、それなんすかね。

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ウーン、このエッジワーク・・・。

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独特のCカーブの汚し方・・・。

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この表面のツヤ感と肌ざわり・・・。

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どこかで見覚えのあるスクロール・・・。

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こいつはまさか・・・。

セバスチャン・・・かーらーの~?

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まさかの・・・。

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ヨアヒム・シャーデが~、、、

くーーるーーーーー!!!!

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キターーーー!凄いサプライズ。なぜ、ヨアヒム・シャーデが!?

Joachim Schade, Germany – Halle/Saale, 2010

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Joachim Schade, Germany – Halle/Saale, 2010
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Joachim Schade, Germany – Halle/Saale, 2010
この作品は、死を悟った生前のヨアヒムが、最愛の妻:Regina Schade(レジーナ・シャーデ)さんへ遺産として贈った10挺のコレクションの内のひとつ。
2010年の作で、なんと、「新品」。超レアな逸品です。
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シャーデ・ファミリー、宝玉のコレクション。
『東から客人が訪ねてきたら、これを売りなさい。』と、ヨアヒムは我々の訪問を予見していたのでしょうか。
いや、そう思いたい!私たちは運命に導かれて、選ばれてこの作品と出会えたのだと。

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Joachim Schade, Germany - Halle, 2010
相手の音を上書きしてしまうかのような、果てしないパワー。
サッカーで例えると、激しいゲーゲンプレスのよう。(ちょっと使い方違うか?)
ここから弾き込んでいくと、一体どんな未来が待っているのでしょうか・・・。

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Joachim Schade, Germany - Halle, 2010
我々はこの貴重な作品をしかと受け取り、必ず良縁をつなぐことを約束し、シャーデ工房を後にしたのでした。

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貴重な逸品を譲って頂き、ありがとうございました!
ちなみに、Joachim Schadeの「チェロ」もあったのですが、残念ながら買付ができるコンディションではありませんでした。苦渋の決断ですが、何卒ご了承下さい。

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お蔵入りにすると勿体ない写真なので載せておきます(笑)
2020年春の買付、これにて終了!
レジーナさん、ヨアヒム、セバスチャン、お世話になりました!どうもありがとう!!いつまでもお元気で。Besten Dank!!!!
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夜は翌日のフライトスケジュールもあって、フランクフルトへ移動しました。

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移動中もやっぱりお仕事。頑張ったその先に、自分たちへのご褒美が待っています・・・。

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ここはいつも訪れる馴染みの造り酒屋。

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自家製のアップルワイン。地元の人達もこれを飲みに来ています。

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シュバイネハクセ。スモールサイズをお願いしました。

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ソーセージ、ザワークラウト、マッシュポテト。定番もやっぱり食べておきたいので。

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イェーガー・シュニッツェル。キノコのホワイトクリームソースがかかっています。

完全に予算オーバーでしたが(一応、食べるものにも予算があります笑)、今夜は打ち上げですので、マイスターの大盤振る舞いで打ち上げです。マイスター、ごちそうさま~。

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めでたしめでたし。

www.tripadvisor.jp

最後にご挨拶。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
新型コロナウィルス感染拡大が騒がれている中、買付ブログを更新し続けていくべきかどうか、正直悩みました。
しかしながら、本当に有難いことに、毎回ブログの更新を楽しみにして下さるお客様も少なからずいらっしゃる・・・という事を大切に考え、細々と更新を続けさせて頂きました。
『読みましたよ~あの楽器ある?』の一言が、明日への活力となっております。本当にありがとうございます。
今回買い付けた楽器たちは、全国数カ所を巡る展示会「楽器フェスタ」でお披露目予定です。
皆さまとまた会場でお会いできることを楽しみに、そして現在の状況が一日も早く終息することを願って、2020年春の買付ブログを終わりたいと思います。
ここまでご覧くださり感謝申し上げます。


またお会いしましょう!Tschüss!!

今回買い付けた楽器は、楽器フェスタでお披露目します

今回マイスター茂木が買い付けを行った楽器は、5月〜7月各地(グランフロント大阪・横浜みなとみらい・名古屋みなとアクルス・松本パルコ・南船橋・イオンレイクタウン・仙台泉・札幌クラシック)の島村楽器で開催される、島村楽器楽器フェスタにて展示・お試しいただくことが出来ます。
順次情報を公開致しますので、楽器フェスタページもあわせてご覧ください。


2020年春 楽器買い付けレポート

2020年春 弦楽器買い付けレポートその6 「プラハ編」

今回の買い付けは、2020年2月13日~2020年2月21日に行いました

Dobrý den!! グランフロント大阪店店長の古西です。
5日目の買い付けはウィーンから4時間かけて、チェコの首都プラハに入ります!

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チェコ共和国は、神聖ローマ皇帝が創り上げた、美しき装飾が施された建造物が建ち並ぶ美しき帝都があり、長い歴史で知られる中央ヨーロッパの国です。

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首都プラハには 中世の街並みが保存された旧市街、またそこには有名なスメタナの交響詩『我が祖国』の美しい旋律そのままにヴルタヴァ川(ドイツ語でモルダウ川)が流れ、彫像が並ぶカレル橋が架かった、世界遺産であるプラハ城が聳え立ちます。

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我々はプラハに到着し、早速買付へ。
ここでの目的は良質なチェコ・ドイツのモダンバイオリンです。17世紀から続くチェコの伝統的な楽器製作では優秀な製作家が多く、数々の良質なバイオリンが多数存在します。
その中でもシュピードレンファミリーは数々のコンクールを受賞しチェコでは代表的な製作家です。

1軒目は何度も訪問させていただいております、自身が製作家でもありディーラーでもあるMiroslav Bures(ミロスラフ・ブレス)氏のAtelier Paganini(アトリエ・パガニーニ)です。

道中、プラハ国立歌劇場を眺めながら圧倒されつつ向かっていると、ブレス氏から連絡が!我々が要望した内容について、何と‼、バイオリン83挺用意してるよとメールが。
83挺!!

いつもながらありがたい限りです!せっかくご用意いただいたバイオリンを、タイトなスケジュールの中で83本どのようにして選定するか、、、、、、道中協議しながら向かいます。

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ブレス氏より今回ご用意いただいた楽器のご説明をいただき早速選定です。
まずはチェック項目を限定し、糸山と筆者で検品&音のチェック、クリアしたものをマイスター茂木で再チェックしていきます。

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また、Atelier Paganiniはこだわりのオーダーアンティーク什器に、所狭しと楽器が陳列されており、古い楽器を更に際立たせます。

一通りチェックを完了させて更に厳選していきます。冒頭でもご説明させていただいた通り、チェコにも優秀な製作家が多く1挺ごとに確認を行っていきます。

チェコの楽器はフレンチやジャーマンとはまた違った音色を楽しめる為、モダン楽器をお探しの方に、バリエーション豊富な音色の中から最適な1挺をお選びいただけるようにチェコバイオリンも数多く取り揃えております。

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今回は83挺の中から厳選を重ね、9挺買付けることができました。

お値段も40万~100万以内の価格でご案内ができるかと思います。
それではご紹介です。

Josef Patocka 1920, Czech

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Josef Lidl 1928, Czech - Brno

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F.Bocek Schoenbach School, label A.Strad 1723, Czech

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Robert Forberger 1928, Germany

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Ladislav Prokop 1940, Czech

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Julius A.Hubicka Student , Czech

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Josef Antonin Cermak 1932, Czech

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Franticek Zyka 1945, Czech - Brno

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Tirol School ca1800, label F.Ruggeri , Austria

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今回も我々の買付にご尽力いただいたブレス氏の工房を後にし、プラハの中心街へ。

人通りも多く活気にあふれたプラハの町は、大作曲家ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの後半生を描いた映画「アマデウス」の撮影がされた場所であり、モーツァルトは幼いころにウィーンからチェコのオモロウツに移り住み、ブルノでのコンサート(当時11歳)やプラハでオペラ、ドン・ジョヴァンニを書き上げ、エステート劇場で初公演が行われるなど、モーツァルトの足跡を辿る上で欠かせない場所となります。

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次に訪れるのは、プラハの市街でお店を構えるHRON(ホロン)氏の元へ。
今回もVaclav Pikrt(ヴァークラフ・ピクルト)氏と事前に連絡を取り、何度も買付を行っているホロン氏のお店で待ち合わせを行いました。

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ピクルト氏は名門シュピードレン一族の4代目、ヤン・シュピードレン氏の1番弟子としてシュピードレン工房で研磨を積み、自身の工房で製作を行っているマエストロです。

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見渡すと数多くのバイオリンが展示されています。もしかしたら全てのバイオリンを弾いたのでは?と思うぐらいじっくりこちらでも選定を行いました。その中でも一際気になるバイオリンが数挺。

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チェコでは最も有名なシュピードレン一族は、Frantisek Spidlen (1867-1916) → Otakar F. Spidlen (1896-1958) → Premysl O. Spidlen (1920-2010) そして現在の4代目 Jan B. Spidlen (1967- )となる名門です。

選定の中で一際異彩を放つバイオリンが。3代目Premysl O. Spidlen (1920-2010) のバイオリンです!
流石ピクルト氏。素晴らしいバイオリンをお持ちです。今回は買付を見合わせましたが、滅多にお目にかかれない逸品です。

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また、チェコ楽器製作協会会長を務めた名工:Karel Vavra(カレル・ヴァブラ)の1985年の作品。
1930年の1枚板ルーマニアン・メイプル古材、1932年のボヘミアン・スプルース古材を使用した、素晴らしいガルネリモデルです!
Vavraオリジナル証明書付きです。

Karel Vavra 1985 , Czech

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そして、厳しい戦時中を南チェコで生き抜いたIgnatius Market(イグナシウス・マルケット)の1947年製作品と、チェコの昔の手工量産メーカーLadislav F.Prokop(ラディスラヴ・プロコッフ)の1926年製ハイエンドモデルです。
こちらのも証明書付きです。

Igunatius Marker 1947 , Czech

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Ladislav Prokop 1926, Czech

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どれも素晴らしい楽器であり、こちらの3本を買付することができました。すべて証明書付きです。
ありがとうございます!

ウィーンから長旅でのプラハ入り買付。非常にたくさんの良質なバイオリンと出会うことができました。楽器フェスタでお披露目できるのが楽しみです。

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すでに日も暮れて、プラハ天文時計を眺めながら、明日のライプツィヒでの万全の買付を行う為、これまでの長旅の「胃」の調子を整えるべく馴染みの中華料理屋へ。

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馴染みの味で調子を整えた後は、折角のプラハでの買付ですので、世界遺産を眺めながら歩いているとGoogle Mapに何やら気になる表記が。
「ジョン・レノンの壁」??
気になるので見に行くことにしました。

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ジョン・レノンもチェコに所縁があるのかなと思いながら調べてみると、チェコでは1960年代の共産党体制により自由を規制されていた時代が長く続き、市民の心の叫びとして、壁にメーセージを書き込み、共産党体制が終わるまで幾度となく塗り替えられてきたようです。

この壁は、ジョンレノンがなくなった1980年に肖像画をはじめ、インスピレーションを受けた若者がメーセージを書き残したことが始まりだとか、、。それ以来自由の象徴として、残されているようです。

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なんともインスタ映えする場所ですね!

次回はライプツィヒ編です。お楽しみに!

今回買い付けた楽器は、楽器フェスタでお披露目します

今回マイスター茂木が買い付けを行った楽器は、5月〜7月各地(グランフロント大阪・横浜みなとみらい・名古屋みなとアクルス・松本パルコ・南船橋・イオンレイクタウン・仙台泉・札幌クラシック)の島村楽器で開催される、島村楽器楽器フェスタにて展示・お試しいただくことが出来ます。
順次情報を公開致しますので、楽器フェスタページもあわせてご覧ください。


2020年春 楽器買い付けレポート

2020年春 弦楽器買い付けレポートその5「ウィーン編 Part2」

今回の買い付けは、2020年2月13日~2020年2月21日に行いました

どーも皆さんGuten Tag!!
シマムラストリングス秋葉原:マネージャーの糸山です。
先日に引き続き、今年はベートーヴェン生誕250周年のメモリアルイヤーということで、楽器買付としては初めて「音楽の都」ウィーンを訪れています。

本日は、そのウィーンゆかりの音楽家たちが多く贔屓にしている、凄腕の弓職人をご紹介したいと思います。

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ウィーン郊外の閑静な住宅地にある自宅工房を訪れました。

ここウィーンで弓を専門に製作するBogenmacher(ボーゲンマッハー=弓職人)、Thomas M.Gerbeth(トーマス・M・ゲルベス)氏をご紹介致します。

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左から茂木、ゲルベス氏、奥様のアンケさん、グランフロント大阪店店長の古西。親方がTシャツ姿なのは、今日は工房の定休日だったからです。無理を言って我々の訪問アポイントを受けて下さいました。Danke!!


ゲルベス氏は1968年生まれ。
修業時代には、Wolfgang Dürrschmidt(ヴォルフガング・ダルシュミット)、R. Herbert Leicht(R.ヘルベルト・ライヒト)、Günter A. Paulus(ギュンター・A・パウルス)、Steffen Kuhnla(シュテファン・クンラ)、そしてRichard Grünke(リヒャルト・グリュンケ)など、ドイツ各地の弓製作工房で腕を磨きました。

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ゲルベス氏はドイツ仕込みのドイツ語なので、トライリンガル茂木もスラスラとお話していました。

1992年にはイギリス・マンチェスターのコンペティションで金メダルを受賞。1997年にはドイツ・ミッテンヴァルドのコンペティションでも金メダルを受賞しています。

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1996年には当時パリに居た現代巨匠:Stéphane Thomachot(ステファン・トマショー)の工房でスキルを磨き、翌年1997年にここウィーンで独立を果たしました。

独立以来たゆまない研究と製作の結果、音楽の都ウィーン在住の一流演奏家たちが最も頼りにする弓のエキスパートとして名をはせ、ウィーンフィルはじめ多くの演奏家、ソリスト今では日本人を含めて世界中からの注文をこなす毎日だそうです。

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壁にはゲルベス氏がドイツ国家資格「Meister」であることの証明書が飾られています。(マイスター茂木も持っていますよ♪ 「自称マイスター」じゃないですよ♪)

こちらの工房は何名の職人が働いているのか?・・・と聞くと、工房メンバーはゲルベス親方と製作アシスタントが1名。

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アシスタントのザイフェルトさん、この日は粛々とラッピングの仕上げに集中しいました。

そして、毛替えを専門で行う奥様アンケさんと3人で運営されています。

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奥さんのアンケさんは毛替えだけを担当する『毛替えのスペシャリスト』。ご両親はヴァイオリニストで、アンケさんご自身も幼いころからヴァイオリンの英才教育を受けていました。

工房内を案内されながら奥に進むにつれて、これまで数多くの世界的弓工房で買い付けしてきた私達でさえ、見たこともない計測器や工作機械が出てきて驚かされました。

弓製作の本場フランスでは、親子や弟子に製作ノウハウを直にアナログ的に伝えてきた伝統がありますが、ゲルベスさんはその感覚的な部分を可能な限り「見える化=データ化」して自身のオリジナル弓製作に成功している希有な弓製作家であると言えます。

これまで科学的に収集したトルテ、ぺカットなどのいわゆる名弓と言われる弓の膨大なデータから、自身の理想的なオリジナル弓を製作するポイントを説明してくれました。

ブラジルで厳選された理想的な材料

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弓製作に使用するフェルナンブーコ材は、数十年前からゲルベス氏自らブラジルで厳選してきた極上品質の材を、解析した特性別に色分けして自然乾燥保存されています。氏はブラジルでのフェルナンブコ植林活動にも積極的に関わっています。

3D-CADの導入。

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弓のヘッドは自由曲線が多い形状ですので、図面で正確におこすのは至難の業です。ゲルベスさんの工房では三次元計測機を使用し、寸法・形状を精密に測定し、立体図面を360度グラフィカルに確認することが可能です。
多くの優れた古い弓をデータ化することで、自分のオリジナル弓ヘッドの理想的な形状を生み出すことに大いに役立てていると同時に、高精度の名弓コピー製作依頼にも活用しているようです。
マイスター茂木も『弓作りでここまで徹底した解析をやっている職人は初めて。』との事。最先端技術に食い入るように見入っていました。

弓の反りデータ化

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2つめは、この壁にある装置で弓の反りを正確に採寸します。デジタル計の測定子で測定されたデータはすぐにPCに転送されてデータとして取り込まれます。弓の棹は毛を緩めた状態だけでなく、演奏状態にした場合のデータも収集されていました。PCに取り込まれた測定データは瞬時にグラフに描き出されます。
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このほか様々な要素を解析しながら弓製作に生かしますが、製作自体は伝統的なマイスターの技術と経験や感覚を最大限に発揮して行っています。

特にゲルベス氏自身が最も拘っている棹の反り付けは、豊富なデータをもとに得られた理想的なカーブを、1本ごとに異なるフェルナンブーコ材の特性を考慮しながら、手作業で時間をかけて丁寧に付けるそうです。
ゲルベス氏の弓は「まるで名弓で弾いているような、全弓にわたっての楽で自然な弓のコンタクト、ボーイングの安定感、自在なコントロール感覚」が特質してますが、この反り付けも大きく関わっているようで、ウィーンのプロ奏者、世界的ソリストが彼の弓を愛用する理由が納得出来ます。

このようにハイテクと伝統的マイスターの技を屈指して完成した最後には、奥さん(アンケさん)が物凄い集中力で毛替えをして、最後にゲルベス氏と奥さんによる試奏と微調整を加えてようやくほぼ完成するのも弓製作では珍しいことです。
「うちの弓は完成後に試奏して最終調整まで行うので新品でも毛に松脂が塗ってあるけど、中古ということではないので安心して下さい。どんなに最新機器に投資しても、優れた弓を作り出すので(人間の技術と耳=人間の感覚)を一番大切にしています。」これぞ真のマイスター!

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このとき1本だけ完成していた超有名ソリストからのオーダー弓がこちら、ぺカットからインスパイアーされていますが、豊富なデータとゲルベス氏の経験からオリジナルの弓として製作されました。
弾き心地、手に吸いつくフィット感など極上でした。

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今回ゲルベス氏に金黒檀のバイオリン弓とチェロ弓をオーダーしてきました。入荷は5月の予定ですので、完成を楽しみにお待ち下さいませ(完売済、2022年分が次回入荷予定)。また古い弓のコピー製作も合間に受けているそうですので、こちらもご興味ある方は是非当社までご相談ください。

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因みにゲルベス氏の弓愛用者を少し挙げますと、フランクペーターツィンマーマン、タベアツィンマーマン、ジュリアフィッシャー、レオニダスカバコス、ヴェルナーヒンク、ゲルハルトシュルツ、等の錚々たるソリスト、ウィーンフィルなど一流オーケストラ奏者、音楽大学の教授と生徒さんなど書きつくせないほどです。

ウィーンの街はたった1日。非常に名残惜しいですが、翌朝早朝から電車移動。次の行き先はプラハです!
それでは今日はこの辺で。Tschüss!!

今回買い付けた楽器は、楽器フェスタでお披露目します

今回マイスター茂木が買い付けを行った楽器は、5月〜7月各地(グランフロント大阪・横浜みなとみらい・名古屋みなとアクルス・松本パルコ・南船橋・イオンレイクタウン・仙台泉・札幌クラシック)の島村楽器で開催される、島村楽器楽器フェスタにて展示・お試しいただくことが出来ます。
順次情報を公開致しますので、楽器フェスタページもあわせてご覧ください。


2020年春 楽器買い付けレポート

2020年春 弦楽器買い付けレポートその4「ウィーン編 Part1」

今回の買い付けは、2020年2月13日~2020年2月21日に行いました

皆さんこんにちは。
シマムラストリングス秋葉原:マネージャーの糸山です。
今年はベートーヴェン生誕250周年のメモリアルイヤーということで、楽器買付としては初めて「音楽の都」ウィーンを訪れました。

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ベートーヴェンは1770年ドイツ・ボン生まれ。17歳の時にウィーンでモーツァルトと出会い、22歳でハイドンに弟子入りのためウィーンへ移住。以来ボンに戻ることはなく56歳で亡くなるまでの35年間をウィーンで過ごしました。

街にはベートーヴェンのほか、ウィーンゆかりの作曲家たちの石像をあちこちで発見。(モーツァルトだけ探せず・・・。)

まずは歌曲王:フランツ・シューベルト。

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シューベルトの石像。宮廷礼拝堂聖歌隊(現:ウィーン少年合唱団)のメンバーであった生粋のウィーンっ子。ベートーヴェンを崇拝し、ベートーヴェンの葬儀では棺を担いだという話は有名ですね。31歳と短命でしたが1,000曲近くの作品を残しました。


交響曲の大家:アントン・ブルックナー。

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ウィーン国立音楽大学の教授を務めたブルックナーの石像。優秀なオルガニストとして知られていましたがウィーンに移住してから交響曲の創作に集中し、9曲のシンフォニーを遺しました。皆さんは何番がお好きですか?(私は7番かな・・・。)


ワルツ王:ヨハン・シュトラウス2世。(キラッキラ!)

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ウィーナー・ワルツの全盛時代を築いたヨハン・シュトラウス2世の記念碑。ヴァイオリンを弾きながらオーケストラの指揮をする「弾き振り」でブイブイ言わせていたので、このデザインになったとか?毎年恒例のウィーンフィルのニューイヤーコンサートでは、シュトラウスの曲で構成されたプログラムが世界各国で中継されています。


そして、グスタフ・マーラー大先生の石碑。

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マーラーはウィーン国立歌劇場の総監督、ウィーン・フィルハーモニー管楽団の首席指揮者を兼任しました。村上春樹さんの著書:「小澤征爾さんと、音楽について話をする」ではマーラーの音楽について触れられているのですが、読後は聴き方が変わって面白いですよ♪

ベートーヴェンが半生を過ごしたウィーンの街は、4世紀以上に渡ってクラシック音楽の中心地でした。
音楽の繁栄はウィーン市内の作曲家、楽譜出版社、ピアノづくり、そして楽器の生産にも大きな影響を与え、目録や領収証等に確認される市の重要なアーカイブ資料には、ウィーンの王族や貴族へ納入した楽器の多くが、地元ウィーンの職人たちが製作したことが分かっています。

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ドイツ生活時代にウィーンは何度も訪れたというマイスターも、「ウィーン楽友協会ホール(Musikverein Wien)」は初体験。

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私達がウィーンを訪れた3日後に、ここで五嶋みどりさんがシューマンのヴァイオリン協奏曲をウィーン・フィルをバックに演奏する・・・というニアミスを犯しました(泣)もっと早く知っていたら・・・。


今回はウィーンで活躍する演奏家のために日々腕を揮う職人のもとを訪れ、メモリアルイヤーに相応しい楽器を見つけて、『ベートーヴェンゆかりのお宝』とこじつけさせて頂きたいと思います。笑

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ウィーン・コンツェルトハウス。ここも、私たちが訪れた1週間後にNHK交響楽団のヨーロッパツアー・コンサートがあるというニアミス(大泣)

私がリサーチを重ね、絶対に訪ねると決めた工房はウィーンフィルハーモニー管楽団御用達の由緒ある工房。レディース・エン・ジェントルメン。
Wilfried Ramsaier-Gorbach(ヴィルフリート・ラムザイヤー・ゴアバッハ)氏のアトリエです!

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ゴアバッハ氏はドイツ・シュトゥットガルト生まれ。1871年から続くウィーン最古の老舗ヴァイオリン工房を引き継いでいる、凄腕のマイスターです。

なんとここの工房、ウィーン学友協会ホールの「楽屋口」と繋がっているんです!凄すぎ!!
何を隠そうこのゴアバッハ氏。ウィーンフィルハーモニー管楽団「専属」の楽器修理工として、日々ご活躍されているのです。
www.facebook.com

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オーストリアはドイツ語圏ですが、マイスター茂木によるとウィーンのドイツ語は「オーストリアドイツ語」と呼ばれるほど一般的なドイツ語とは結構違うらしく、安全策をとって今回は英語メインで会話をしていました。

ゴアバッハ氏はウィーンフィルと共に日本にも10回以上訪れており、よく秋葉原の電気街で工具を買い求めているのだそうです。意外に身近な所まで来てたのでビックリです。笑

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ゴアバッハ氏が『秋葉原で購入した』と、ニコニコで貸してくれたライトを使うマイスター茂木。この人、職場秋葉原です。

1800年代のヴァイオリンを中心に、幅広いラインナップを買い付けさせて頂きました。

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さすがは御用達とだけあって音作りがとても上手く、選定は非常に悩みました…。
それでは、ここでウィーンフィル御用達の由緒ある工房で買い付けた、選りすぐりのヴァイオリン(の一部)をご紹介させて頂きます!

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ゴアバッハ氏から1挺1挺、楽器の情報を丁寧に教えて頂きました♫

German Violin "Josef Klotz" Label, ca1860 - 1880

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German Violin "Josef Klotz" Label, ca1860 - 1880(証明書付)
19世紀後半に製作された作品です。個性的なF字が愛くるしいお顔立ちの楽器ですが、可愛らしさのかけらもない渋っ渋のジャーマンサウンド。

Sachsen Arbeit "Antonio Stradivarius 1713" Label, ca1880 - 1900

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Sachsen Arbeit "Antonio Stradivarius 1713" Label, ca1880 - 1900(証明書付)
東ドイツ・ザクセン州で19世紀後半に製作された作品で、よく鳴ります!グランフロント大阪店マネージャー:古西もチョット弾いて『ハイ、もうこれ絶対買い!』ってなりました。面構えもなかなか格好良いですね~。

Sachsen Arbeit, ca1870 - 1880

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Sachsen Arbeit, ca1870 - 1880(証明書付)
こちらも上記と同じくザクセン・スクールの作品。経年変化で熟成された音色が楽しめる、素晴らしいジャーマン・ヴァイオリンだと思います!

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・・・と、ここまで全て100万円以下でご提案できる予定です。50万円以下の楽器もあります♪

ゴアバッハ氏にご協力をお願いしまして、今回は100万円以下の楽器についても全て例外なく「証明書」も付属します。

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ウィーンゆかりの「お宝」探し。何度も弾いて、調べて、悩んで、この楽器に決めました!
お目当てのオーストリッチ・オールド・ヴァイオリンも発見。ウィーンの名工、1795年のMathias Thir(マティアス・ティール)オリジナルラベル入りの楽器を購入しています。

Mathias Thir, Austria - Wien, ca1795

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Mathias Thir, Austria - Wien, ca1795

マティアス・ティールは、ハイドンやベートーヴェンが活躍した時代における、ウィーンの代表的なリーディング・メーカーでした。名器:Jacob Stainer(ヤコブ・シュタイナー)に影響を受けたとみられ、ハイアーチを特徴とした宮廷サロン風の作品を作り上げ成功を収めました。
ハプスブルク家の宮廷で演奏されていたかもしれない・・・と考えると、とても有難い気分になります。(あくまで推測です。)音色はブラックな見た目からは想像できないほど、甘いVoice。ゴアバッハ氏から『ベートーヴェンもこのヴァイオリンの音色を聴いたかもね~。』なんていうリップサービスも。笑(あくまで推測です。)

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マティアス・ティールのオリジナルラベル。この楽器にはWilfried Ramsaier-Gorbachの鑑定書が付属します。

ゴアバッハ氏の工房で選んだ楽器は全部で11本!1件あたりの買付本数としては、異例の多さ。大豊作です!!
ウィーンフィル専属の工房で選定だなんて、とても贅沢な買い付けができたと思います。

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秋葉原でお買い物際には、ぜひシマムラストリングス秋葉原にお立ち寄り下さい。Danke!!
次回はウィーンの弓職人をご紹介します。

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ウィーンといえば、ウィンナーシュニッツェル。コンサートは聞き逃しましたが、名物料理は漏れなく頂きました。
本日はこの辺で。Tschüss!!

今回買い付けた楽器は、楽器フェスタでお披露目します

今回マイスター茂木が買い付けを行った楽器は、5月〜7月各地(グランフロント大阪・横浜みなとみらい・名古屋みなとアクルス・松本パルコ・南船橋・イオンレイクタウン・仙台泉・札幌クラシック)の島村楽器で開催される、島村楽器楽器フェスタにて展示・お試しいただくことが出来ます。
順次情報を公開致しますので、楽器フェスタページもあわせてご覧ください。


2020年春 楽器買い付けレポート

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