島村楽器公式ブログ

全国展開している総合楽器店のスタッフが、音楽や楽器の楽しさや、楽器店にまつわるお話をお伝えします。

2017年秋 弦楽器ヨーロッパ買付レポート Part9

皆さま Bonjour!
シマムラストリングス秋葉原マネージャーの糸山です。

2017年秋買い付けブログ最終号となります今回は、フランス・パリ、そしてベルギー・ブリュッセルでの買い付け紀行をお届け致します。
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パリからは我らがマイスター茂木と合流し、2人で旅先をまわりました。
ビタミン補給のため、軒先に生っていた酸っぱい葡萄をパクリ。海外出張にでると激しく野菜不足を感じる今日この頃です。
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この日は夕方からちょっと郊外へ遠出して、「ビジネスミーティング」という名のご自宅へお呼ばれして夕飯を頂きました。
筆者はフランスの郷土料理であるガレット作りに初挑戦。なかなか上手に出来たのではと思います(!?)
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そして、場所を移しまして、ここはパリ6区にあるサン=ジェルマン・デ・プレ協会。
この地区にはかつて多くの文化人・芸術家が集まり、大変賑わったのだそうです。
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弓作りの発展に多大な貢献を果たしたフランソワ・トルテ(François-Xavier Tourte)も、この教会を中心とした地区において、当時パリで活躍していたヴァイオリニスト:ヴィオッティ等と共に、理想とする音楽を体現するため「弓がどんな進化を遂げるべきか?」を研究し、実験を繰り返していました。(Raffin氏談)
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セーヌ川のほとりに佇む「Cafe du Pont-Neuf」の上階にはトルテの工房があり、このカフェでは日夜、音楽や弓についての議論が行われていたそうです。(Raffin氏談)
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さぁ、そんなセーヌ河と弓作りの深い関係性に触れたところで、「弓」買い付けスタートです!
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まずは、楽器屋さんが通りにずらりと並ぶRue de RomeにあるSandrine Raffin氏の工房を訪れました。
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Sandrine Raffin氏は、1972年フランス生まれ。
19歳で弓づくりをはじめ、1992年から世界最高のオールド弓鑑定家である父:Jean Francois Raffinのもとで弓働き始めます。
2012年フランス政府より最も優秀な職人にのみ与えられる称号「Maitre Artisan en Metier d'Art(Master craftsman in bow making)」を授与され、創造性溢れる芸術的センスに富んだ弓製作家には、パリに立ち寄る多くの有名演奏家からの信頼を集めています。
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おかげさまでSandrine Raffin氏の弓、大変ご好評を頂いておりまして、この春でほぼSold Out状態となりました!
この紙面にて失礼して、筆者から心より御礼申し上げます。本当にありがとうございます!!
また、欠品が続き大変ご迷惑おかけしております・・・。
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長らく品切れ状態が続いておりましたが、このParis訪問にて若干数(7本!)の補充の運びとなります。
部品から全てオールハンドメイドですので、ラファン氏は沢山作れませんし、メールオーダーではなく私達買い付けチームが1本1本を現地で選定・試奏・検品を行ってから入荷するアイテムですので、どうしても入荷までお時間がかかりますことをご了承下さいませ。

それでは、まずはSanrine Raffin氏の一番人気の弓2モデルをご紹介したいと思います!

Sandrine Raffin, France - Paris, 2017
Modèle Dominique Peccatte

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天才弓メーカー:ドミニク・ぺカットの弓を、ラファンが再現した極上モデル。
ペカットモデルは、演奏家の表現力やひらめき、イマジネーションを大切にしています。
力強さや音量よりも、七色に変化できる楽器本来の「歌うこと」を重視する演奏家にお薦め、欧州のプロプレーヤーの愛用者も多い逸品です。
こちらは今回の選定の結果、2本買い付けました。


Sandrine Raffin, France - Paris, 2017
Modèle Eugène Nicolas Sartory

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プロ/アマ問わず、幅広い人気を誇るラファンの名弓シリーズより、20世紀最高の弓製作家サルトリーの弓を再現したモデル。
サルトリーモデルは力強くタフでアグレッシブな演奏を、人気の高さはレスポンスの良さとクリアーな音色にあります。
サルトリーモデルは、選定の結果3本を選ぶことができました。

そして、今回入手に至りました、滅多に入荷しない希少な限定モデル2品をご案内申し上げます!

Sandrine Raffin, France - Paris, 2017
Modèle Dominique Peccatte “GOLD EDITION”

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このゴールド・エディションは、先100年分はあるだろうRaffin氏の豊富なフェルナンブーコの中から、厳選に厳選を重ねて選び抜かれた理想のスティックで製作された極上の逸品。
楽器の音色を別世界のレベルへと押し上げる名弓です。

Sandrine Raffin, France - Paris, 2017
Modèle KINTSUGI

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"KINTSUGI"は、日本陶器の伝統技法『金継ぎ』から着想された、正にフランスの弓職人の伝統スタイルと和の融合の結晶。
細心の注意を払って吟味された極上材を用い、柔らかく豊かな音表現が魅力的、サンドリーヌ・ラファンの新たな傑作としてプレーヤーからの呼び声の高い逸品です。

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ラファン氏は、11月3日(金)-5日(日)に、開催される日本楽器製作者協会主催『2017楽器フェア』にて再来日致します。
当社ブースにてご紹介させて頂きました名弓と共に、ご来場をお待ちしております!

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さて、Parisでは『フランス製の古い7/8サイズのバイオリンを探し出す』という、ミッションがありまして、7,8件ほどRue de Romeの楽器街をローリングして参りました。
希少なサイズだと言うことと、完品のコンディションを求めると、なかなか思うように見つからないのが実情です。3/4サイズなら沢山あったんですが...。

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そして、この度1本だけ素晴らしい状態の7/8サイズを入手しましたので、ここにご紹介させて頂きます!

J.B.Collin-Mezin, France - Mirecourt, 1930
7/8 Sized Violin

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手の小さなお客様にお薦めの、良質な7/8サイズバイオリンをGETしました。
4/4サイズに比較するとボリューム感が落ちるのは否めませんが、それを補って余りある『音』の面白さがあります。
仏産オールドバイオリンの持つ独特の籠ったような含みのあるフレンチトーンが存分に楽しめる、素晴らしい世界観のあるバイオリンだと思います。

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そして、最終目的地ブリュッセル。ここでは、世界的に有名な弓職人のひとりPierre Guillaume 氏のところで、オールド弓の選定です。

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ギヨーム氏は、 C.A.Bazin、L.Morizot、J.Ouchard など名工の下で弓製作を学び、ブリュッセルきっての老舗Maison Bernardを引き継いだ、日本でも大変有名な巨匠です。

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新作弓の製作もさることながら、オールド弓のエキスパートしても世界的に活躍中しております。
ギヨーム氏の新品トルテモデルの弓の長さについて質問中すると、本物のトルテを2本見せて頂きながら、本当に納得感のある贅沢な解説をして頂きました。
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ここがPierre Guillaume弓製作のアトリエ。ここで1本1本、丁寧に仕上げられているのですね。
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ギヨーム氏のもとで修業を積んだかつてのお弟子さん達の写真を発見。
左から1番目のEmmanuel Carlier(エマニュエル・カリエール)、2番目のVictor Bernard(ビクター・ベルナール)は独立後、彼らの弓を当社で扱っておりますが大変ご好評頂いております!
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◇Emmanuel Carlier作品紹介
www.shimamura.co.jp


◇Victor Bernard 作品紹介
www.shimamura.co.jp


ヴィクトリア女王がイザイにクリスマスプレゼントしたと言われる、大変貴重なサルトリー弓も見せて頂きました!これはもう、超貴重なコレクションですね!!
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そして、肝心のオールド弓選定ですが・・・ドドーンっと70本以上のオールド弓が並びました。キャーこれは大変です・・・。
一体何時間かかるんだろう・・・。ブリュッセルは日帰り旅なんです。下の写真の量にあと2.5倍したぐらいありました。
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試奏は勿論のこと、そのメモを取るだけでも大変です。
だんだん何が何だか分からなくなってきますので、音質・比重・操作性など傾向に分けて細かく分類して絞り込んでゆきます。
Maison Bernardに展示されているJan Strick氏のヴァイオリンコレクションも大変素晴らしいので、ヴァイオリンにもついつい目移りしてしまいますが、ここはグッと我慢して、1本のヴァイオリン(それも4,000万クラス!)で只ひたすら試奏を重ねてゆきます。
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数時間の格闘の末、厳選した弓はこちらの11本!
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どれも皆様にいち早くご紹介したい名弓ですが、その中でも特に1年あちこちで探し続け、ようやく見つけた名品をここにご紹介致します!
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Eugene Sartory, France - Paris, ca1890
stamped “Darche”

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ユージン・サルトリー(1871年生-1946年没)の20代の初期作品。
N. F. Vuillaumeの弟子でブリュッセルで活躍したヴァイオリン製作家でありディーリングのエキスパートでもあるHilaire Darche(1862年生-1929年没)のために製作された弓になります。
オリジナルパーツが残された完璧で美しいコンディション、力強さと繊細さを併せ持った正に「これを名弓と呼ばずして何と呼ぶ!」(マイスター茂木談話より)


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ギヨーム氏の応接間には、このHilaire Darcheのお店の当時の「看板」と思わしきオブジェが飾られておりました。
今回のサルトリー弓の入手と関係性の深いものだけに、運命的なことを感じずにはいられません。

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今回ご紹介した作品たちは、間もなく日本上陸!
皆さま楽しみにお待ち下さいませ!

それでは、これを持ちまして2017年秋の買い付けブログの連載は終了です。
各地で行われます「楽器フェア」にて、皆様とお会いできますことを、スタッフ一同、心よりお待ち申し上げます!
Au voir!!

今回イタリアで買い付けた楽器は、楽器フェスタでお披露目します

今回マイスター茂木と前田が買い付けを行った楽器は、11月〜12月各地(秋葉原・横浜みなとみらい・大阪・福岡・南船橋・新宿)の島村楽器で開催される、島村楽器楽器フェスタにて展示・お試しいただくことが出来ます。
日程等決まり次第順次情報を公開致しますので、楽器フェスタページもあわせてご覧ください。

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