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ルシアー駒木のギターよもやま話 その22「工房の修理に新たなアイテム導入」

皆様こんにちは!

スーツケースの車輪が壊れて、「スーツケースをキャリーカートに積む」というおかしな姿で出張から帰ってきた、ルシアー駒木(コマキ)です


今日は工房で新たに導入した凄いパーツをご紹介します。
それはこちら!

ノルトロック

です!
これは一体何かって??
確かにこの写真だけでは何だか分かりませんよね(笑)

では、何がそんなに凄いのか、ご紹介したいと思います。

皆さんはこんな体験ありませんか?
ある日突然エレキギターの音がアンプから出ない、、、
あれれ?と見てみるとジャック部のナットが緩んでいるみたいです。

開けて中を見てみると、、、あらら、線が切れていました。

これでは音は出ませんね。

パーツのナットが抜き差しの振動や負荷で緩み、パーツ自体が回転してしまった為に、線がねじ切れた訳です。
実はこういった断線修理は非常に多く、当工房でも毎月数十件届いています。
修理としては「電気配線の断線」なのですが、原因は「ジャックナットの緩み」という訳です。

緩まないように、各工場・工房では、締める力加減を調整したり、菊ワッシャーを入れてみたり、

スプリングワッシャーを入れてみたり

と、工夫しているのですが、それでも緩むときは緩んでしまう、という状況でした。
断線修理をしても、またナットが緩めば再発の危険があるという事です。


そこでこの度、当工房ではノルトロックの導入を決定!!

このノルトロック、言ってしまえば「ワッシャー」なのですが、ただのワッシャーではありません。
スウェーデンで生まれ、誕生から30年を経た現在もスウェーデンで製造されているこのワッシャー、実は薄い2枚で1組になっています。

更に良くみてみると、2枚の接する面側になにやら段がついています。

この段差に秘密があります。

このクサビ状になったカムの角度がとても重要で、ネジのリード(ネジのギザギザ部分の事です)に付いた角度、つまりナットが回転する角度よりもノルトロックのカム面の角度が大きく出来ています。

この図でいうと、

α>β

という事になります。

その為、イメージとしてはこんな感じ

になり、
ナットが緩むことが出来ません。

これで再発防止は完璧!!
更に外側の凹凸は母材にしっかり喰い付くので、より安心!

再発防止策としては、樹脂で固定できるナットやナットを固着させる液体などもあります。
ただこれらは、別の修理や調整の際に外す事が出来なくなってしまいます。
ノルトロックであれば、自然には緩まないと同時に、カムの角度を超える力で一山超えるまで緩めてやれば、一度外しての再取り付けが可能!!


取り付けると、

こんな感じ。
改造したぞ!って主張が感じられてなかなかカッコイイですねえ

もう少し控えめに見せたい方には、ステンレス製も用意して御座います。

手前のものがステンレスですが、こちらは通常ギターに使われるワッシャーと色が近いので違和感なく取り付けられます。

サイズや素材で金額は少々異なりますが、数百円の出費で「2度と緩まない」ようになるのです!!
これは凄い!!!

断線で修理依頼される方や、過去にナットが緩んだ経験をお持ちの方は勿論、全く関連性がない修理でご依頼の際に、ついでに付けてしまう! なんて事も可能です。

いかがですか?

ジャック以外にも活用可能ですが、ジャック部でも取り付け方法によってノルトロックが不向きなもの、取り付けにコツが必要なもの、等ありますので、是非一度ご相談下さい。



ルシアー駒木でした!


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