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音楽力をアップする「耳コピのすゝめ 」第13回 変拍子などのリズムについて その2

こんにちはサカウエです。

前回は変拍子やタイムチェンジ(メトリック・モジュレーション)などのリズム関係のお話でしたが今回は続編です。

変拍子はそんなに強敵ではない?

耳コピ観点からですと、変拍子自体は実はそんなに強敵ではないと思います。

「ドンタンドンタン」といった2,4拍にスネアのバックビートが強調される一般的な曲と比較すれば、それは確かに演奏するのは難しいですが、テンポ下げてとにかく数えればよいのです。

あとは表記の問題で、いかに演奏しやすい表記にするかを考えればよろしいのではないかと思います。

たとえばこういうのはいろいろな表記ができそうですね。

男と女
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いやーやはり良いですなーフランシス・レイ。

さて出だしの「コームーノー」に続く歌詞を

voix badabada | dabadabada | Chantent tout

のように区切れば「3/4 – 3/4 – 4/4」という表記になりますね。

これがオリジナルのようですが、でも4-4-2でも表記可能です(合計10拍)。

前者が楽譜としては読みやすい気がしますが、いずれにせよ表記の問題です。

ところでナイショの話ですが、ワタクシ小学生の頃はこれ「(ダ)バダバダ−ダバダバダ」だと思っておりました.

しかし正しくは前述の歌詞でして「動詞+バダバダ」で以降、韻踏んでいくのですね。
(おフランス好きの方はいつか役に立つ日がくるかもしれない豆知識)

え、これ4/4なの?

耳コピで最も強敵なのは、4/4なんだけど、そうは聞こえないような複雑リズム、シカケだと思います。
拍頭がワカラナイ、カウントできない、といった前回もご紹介したカテゴリーですね。

ではいくつかかいつまんでご紹介いたしましょう。どれも基本4分の4拍子で変拍子ではありませんよ。

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これはハイテクドラマーDave Wecklの 「Tower of Inspiration」という超トリッキーな曲です(この動画の演奏は別人の「演奏してみた系」)。


Aセクションの部分は、まあなんとかカウントできるのですが、Bセクションはかなり強敵ですね。
普通はまず裏返って聞こえる・・・というか何がどうなっているのかこのスピードではよくわかりませんね。

正解はこちら

本人お手本(Aセクション)

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スネアが2,4拍で演奏されていないというだけで急に難易度上がりますね。
基本2小節のパターンですが4拍にスネアの強打が来るのは最後の1回だけです。

本人お手本(Bセクション)

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ここはテンポ落としてもカウントするのが相当難しいです。8分ウラ入から完全に裏返って聞こえますが、前回のツェッペリンなんてコレに比べればお遊戯みたいなものですな。

なおこの動画をご覧いただいてお分かりの通り、左手のスネアが16分音符で終始細かくビートを刻んでいますね。これは「ゴーストノート」といって通常スピードではおそらくほとんど聞こえない音です。

以前も書きましたが、こういった場合はスロー再生して耳コピするのが効果的ですね。下記記事を参考いただければ幸いです。

さてさて、なんだかドラム・マガジン的様相が漂って参りましたが次に行きましょう。

かつてDave Wecklを発掘したチックコリアのキメ・フレーズ

Samba song / Chick Corea (1:10過ぎに注目)
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1:10過ぎからの壮絶リズム・アレンジは、下記のように16分3つ取りとなっておりまして3拍でひとまとまりの形態です。

ソロ演奏中に口裏合わせたバック・メンバーにコレやられたらたまんないですね。一発撃沈です。

続いて「キメ」といったら前回も紹介しましたリー・リトナーのダイレクト・カッティング版。1:55過ぎのユニゾン運動会に注目してください(なんと一発録りですよ!)。

Lee Ritenour - Captain Fingers (Direct Cut Recording Ver.)
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「いったい譜割りどうなってるんかいな?」という壮絶ユニゾンでございます。

いかにもギタリストが作りそうなフレーズでして、キメの頭16分音符14個中、E音がなんと2オクターブに渡り3コあります。音の跳躍が半端ありませんので鍵盤で弾くのは激ムズ・フレーズです。

なおこの曲信じられないことに、16分音符単位の半端な変拍子はありません。基本は4/4!

・・・あーあのころは皆若かったんじゃよ。

次にプログレは変拍子ばかりじゃないよ、という例を御覧ください

The Only Thing She Needs – UK
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イントロのドラムは「奇数連」など多用しておりますが(とても親切なことに)バックにカウベルの4つ打ちが入っておりますので、テンポ落として聞けば意外に耳コピしやすいと思います(R-MIX最強)

・・が、よく聞いたら同じ演奏を2回重ねて録音していますね。恐るべしテリー・ボジオ先生!!

問題は5小節目以降ですね。一転して不親切。今度はカウントなしの16ビートのユニゾン・フレーズが出現します。

これカウント数えられる方はかなり凄いとおもいますよ。

ベースとオルガンのユニゾンをキープするだけでも大変なのに、なんと途中からまったく左手とは脈絡のない右手のコードワークが加わるという超難易度高いフレーズですね。

恐るべしエディー・ジョブソン先生


耳コピしてみました(音程は無視してください)

とまあ、複雑なリズム、キメは枚挙にいとまがないので今回はこれくらいにしておきます。

メトリック・モジュレーション(タイムチェンジ)とは?

かなりお疲れかと思いますので、最後にちょっとおもしろい「シカケ」をご紹介します(もっと疲れるかなあ・・)

それはメトリック・モジュレーション(タイムチェンジ)という、曲の拍を分割する単位を変えることで、その結果テンポを変えるという手法です。

えーワタクシ言葉ではうまく説明できませんので実演します。


あのプログレッシヴ・ロックの雄 Pink Floyd には、あるモチーフをメトリック・モジュレーションで変化させ、複数パートで構成した「Shine On You Crazy Diamond」という壮大な組曲があります。

長いので全部聴くのは時間のあるときにどうぞ(4:00のフレーズがモチーフ)。
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4:00辺りに出てくる「Bb-F-G-E」というギターのフレーズがこの曲の重要な鍵です。

Gm7(6)というコードですけれども、この組曲ではこのモチーフから派生したフレーズがいろいろなリズムで演奏されていきます。

というわけでその部分だけを抜き出して実演してみました。

Pink Floyd Shine On You Crazy Diamondギターのアルペジオをシンセで弾いてみました。
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いかがでしょう?音列を何音符として切り出すかでリズムとテンポが変わるわけです。

単に雰囲気でテンポ・チェンジするのではなく、音符の切り取り方に基づいてビートを決めるという手法がメトリック・モジュレーションです。

アドリブへの応用など、他にも色々なネタがありますがこれらについてはまた次回以降ご紹介します。


というわけで今回も長くなってしまいすみません。次回はインタープレイ等のさらに奥深い世界へ足を踏み入れて見ようかとおもいます。

それではまたお会いしましょう。

参考CD

Master Plan

ドラマーのリーダー作らしく、ありとあらゆるリズムのギミックを堪能できます。2曲目は6連シャッフルの4つ取りで16ビートになったり戻ったり、というすごいメトリック・モジュレーションやってます。

Master Plan

Master Plan

Pink Floyd 炎 あなたがここにいてほしい

炎 あなたがここにいてほしい

炎 あなたがここにいてほしい

U.K. Danger Money

Danger Money

Danger Money

Chick Corea  / Friends

Friends

Friends

スティーブ・ガッドがいなかったらこのアルバムは作れなかったでしょうね。名盤です。

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