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音楽力をアップする「耳コピのすゝめ 」番外編 耳コピ便利ツールとビートルズ

こんにちはサカウエです。

本年のNAMM Showでも話題となったいわゆる「耳コピツール」が耳コピギョーカイ(?)でもトレンドになっているようです。今回はこうしたツールとビートルズのお話です。

話題の耳コピソフト

耳コピ専用ということではないのですが、旬なのはローランドの「R-MIX」とCelemony Softwareの「Melodyne Editor 2」でしょう。


この2つのソフトに共通することは「音を解析、視覚化して自由に操ることができる」といった点です。ただしあまりに先進的なため、活用方法はまだまだ未知数。現時点では「耳コピ」ツールとしての使い道は、一つの可能性に過ぎません。

これから誰がどんな使い方を発見するのか非常に楽しみですが、先日著名なライターの藤本健さんがこの「Melodyne Editor 2」を使って興味深い記事を書かれていました。

いかがですか?Melodyne Editor 2の機能を活用した素晴らしいアイデアだと思います。

さてここから話は突然ビートルズ。

藤本健さんが取り上げたビートルズ「A Hard Days Night」イントロの「ジャーン」。実はこれにまつわるお話はとても有名なのでご存じの方も多いと思います。

音楽史上屈指の謎?

最近はNHKの「英語でしゃべらナイト」でも使われているこの「A Hard Days Night」誰しも一度は聞いたことがあると思います。

さてこの「ジャーン」というコードですが、これが(音楽史上屈指かどうかはさておき)一体どうやって演奏されているのか実は今でも謎なんです。

これまでも世界中でケンケンガクガクと論じられております。

  • あれはジョージ(ハリソン)の12ギター1本なのだよ。
  • いや、ジョン(レノン)のリズム・ギターとポール(マッカートニー)のベースも混ざってるに違いない
  • いやいやいや実はあとからピアノもダビングされてるんだ
  • でもライブでもこの音出してたでしょ?

、、等々。実際に多くの人が耳コピ・チャレンジしてYouTubeで披露してたりもします。


中にはおいおいと突っ込みたくなる方もいらっしゃいますが、「ジャーン」一つでこれだけ盛り上がるのは、さすがビートルズという感じです。

メンバーやジョージ・マーティン(ビートルズのプロデューサー&アレンジャー)のインタビューも記録も残っているみたいですが、なにぶん昔の話のことですから、本人たちの記憶も意外と曖昧だったりして真実は藪の中。

ところが、2008年11月こんな記事が話題になりました。

「ビートルズ名曲冒頭の音の謎」を数学者が解明?

英ダルハウジー大学[数学・統計学部]のJason Brown教授が、半年という時間と、高度な数理解析技術を費やしてついに解明した。音楽史上屈指の謎――ビートルズの楽曲『A Hard Day’s Night』の冒頭で鳴るあの「ジャーン」という音――のコードを解明したのだ。

「ビートルズ名曲冒頭の音の謎」を数学者が解明|WIRED.jp

高度な数理解析技術—コレなかなか面白かったです。

ところがこの記事に対してすぐさま異論が;

世の中マニアックな方が多いですねえ、ビートルズだとなおさらです。で、よけい謎は深まるばかり。

よーし!ここはやはりワタクシが耳コピして解明してやろう・・・と決意したら、先日facebook界隈でこんな動画が、

「The Beatles - The REAL First Chord of "A Hard Day's Night"」(静止画+音声)

「これが真実のハード・デイズ・ナイトのイントロ・コード」みたいな感じでしょうか。

これはCBCラジオのランディー・バックマンという人が、ジョージ・マーティンの息子ジャイルズ・マーティンに連れられてアビイロード・スタジオに行った際の話が元になってるみたいですね。

で、どんな話かというと、、、
ビートルズのレコーディング・スタジオとして有名なアビイロード・スタジオには、な、なんと「ビートルズのすべての録音ソース(!)」がProTools(DAWソフト)にインプットされているらしいです。

で、かのランディーさんが「ハード・デイズ・ナイトのイントロの秘密をおせーて」と頼んだところ、ジャイルズさんが聞かせてくれた・・というお話


なんだかとっても信ぴょう性ある感じですね。。。。

この説によれば「ジャーン」の構成は、

ジョージ・ハリソン(12エレクトリック・ギター) 低い音から G-C-F-C-F-G = Csus4(onG)
(1から 3 6 5 3 3 3 フレット)
ジョン・レノン(エレクトリック・ギター) 低い音から D-A-D-G = Dsus4
(1から 3 3 2 0 x x フレット)
ポール・マッカートニー(エレクトリック・ベース) D

上記のボイシングとフレット・ポジションはワタクシの推測です

これらを「one, two, three, four , ジャーン」と同時に鳴らしたのが「あの音」というわけです。

ちなみにこのサウンドに無理やりコードネームをつけると

Dm7(11) または G7(9)sus4 onD

となります。

さてこの話が本当に正解かどうかはわかりません。仮にアビイロードの話が真実だとしても、オリジナルのテイクからたまたまピアノだけがPro Toolsにコンバートされていなかったかもしれないし、別テイクが実際には存在していたのかもしれないからです。

やはり真実は神のみぞ知るなんでしょうか?

本当にピアノは入っていなかったのか、どなたかぜひ耳コピにチャレンジしていただきたいと思います。

耳コピの目的

さて、あと数年もすれば、音楽を瞬時に解析して、パートごとに完璧な楽譜とMIDIデータを生成してしまう究極の耳コピソフトが発売されてしまうかもしれません。耳コピを職業としている方にしてみれば大変な脅威でしょうね。

しかしそれは演奏力、表現力とは異なる次元の話です(それすらIT技術でどうなるのかわかりませんが、、)。例えばそもそも初めから楽譜があるクラシック。楽譜に記された音をどのような解釈で演奏表現するのかが演奏者の技量ですね。

究極の耳コピソフトの登場は、非常に素晴らしいことだと思いますし、素晴らしい活用方法も生まれるでしょう。でも「このソロのタメがいいんだよねー」といった「音楽表現」のエッセンスは、やはり何度も何度も繰り返し聞いて模倣することで身についたりするのではないでしょうか。

という訳で相変わらずこれからも耳コピは続けていくぞと決意をあらたにするワタクシでございます。それではまた。

R-MIX

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