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音楽力をアップする「耳コピのすゝめ 」第四回 パンとイコライザー活用編

みなさんこんにちはサカウエです。

前回の記事では耳コピを行う為に必要な事柄を、大まかに4つに分けてみました。

  1. 機材
  2. 耳コピ方法(手順)
  3. 音楽理論・楽器の知識
  4. その他(情報収集力)

今回は「耳コピ方法(手順)」について。
「聴き取り易くする」ための機材の活用方法を紹介しましょう。今回は音資料満載なんでヨロシクね。

前回の記事はこちら

耳コピのコツ

前回ご紹介した耳コピのプロセスをもう一度確認してみましょう。

表1
A「目的箇所に瞬時に正確に戻る」
  ↓
B「再生」←聴く
  ↓
C「停止」
  ↓
D「楽器で確認」
(必要に応じてABC、ABCDを繰り返す)
  ↓
E「採譜(または打ち込み)」 

まず耳コピしたい箇所を聞いて再生を停止、楽器で確認、採譜の繰り返しですね。

上級者でないと「再生」中に「楽器で確認」というのはなかなか出来ないと思うので、上記のように、普通はB「再生」→ C「停止」して、音の記憶が消えないうちにD「楽器で確認」ということになると思います。

ここでの大切なポイントは、B「再生」と C「停止」の間隔はあまり長くしないってことですね。
欲張って一度に多くの箇所を耳コピしようとせず、コツコツ地道にやっていったほうが良いと思います。

じゃあどれくらいの長さ?ですが、要するに「記憶」がカバーできる範囲ということですね。
天才モーツアルトは曲を一回聴いただけで、すべて暗譜して演奏したという逸話がありますが、そりゃあ曲の難易度にもよるでしょーに。
映画「アマデウス」のワンシーンにあったように、凡人サリエリの行進曲くらいだったら確かに楽勝でしょうが、

たとえばこんなの

[file:shimamura-music:110905-01_SOLO.mp3:sound]

こーゆーのはまず1000回聴いても覚えられません(すくなくともワタクシは)
仮に覚えられたとしても時間がかかりすぎるので、こうした無調的フレーズなんかはコツコツ地道に採譜していった方が結果的にコピーは早く終わります。

なお、どうしても聞き取れない箇所が出てきた場合、そこに固執していると先に進みません。こういう場合はすっぱりあきらめて、とりあえず聞き取れた箇所を記譜していき、クロスワードパズルのように徐々に空白を埋めていく方法が良いと思います。

えーっと、一応正解を書いときますね

‥‥‥パトラッシュ、なんだかとても眠いんだ‥‥‥

このように「再生」→「停止」の間隔、すなわち耳コピしたい箇所の長さは、1小節だったり、1拍だったり、16分音符一個分、、とまちまち。これは耳コピしたいものが、単音のソロ、コード、ベース、ドラムの細かいフィル、、といった対象でも変化すると思います。

なお曲全体のコード進行をコピるのが目標の場合は、耳コピを始める前に必ず曲の頭から終わりまで、何回か聞いておいて大雑把な構成をメモっておくと良いかもしれません。

たとえば

イントロ(8小節)-Aメロ(8小節)-Bメロ(8小節)-Cメロ(サビ)(8小節)---エンディング

の様な感じで、五線譜に構成と小節数分をあらかじめ表記しておくわけです。

さてさて、とはいえ最初からキッチリやろうと思ってもなかなかできないと思うので、とりあえずトライ&エラーしながら気楽に地道にいきましょう。

セッティングの確認

ここからは機材の活用方法の話になりますが、セットアップを確認しておきましょう。

音ネタ(原曲)の再生装置からミキサーには、左右の出力信号が別チャンネルに立ち上がっている必要があります。再生装置が波形編集ソフトの場合は、パソコンとつないだオーディオ・インターフェースの左右の出力が同様にミキサーに「別チャンネル」で立ち上がっていればO.K.


ミキサーの1chは原曲の左チャンネル(L)、2chは原曲の右チャンネル(R)

ミキサーには各チャンネルごとに、ボリューム、パンポット、イコライザーといったつまみ(またはフェーダー)が付いていますね?

ボリュームは音量、パンポット(PAN)はステレオ出力する際の左右の定位をコントロールします。

イコライザー(EQ)は音の高域や低域を上げたり下げたりして音質を調整する機能です。
Hi(高域)、Mid(中域)、Low(低域)のような表記がされていてつまみを回すと各音域が増減するわけですね。この音域の区分けの数は機種によって増減しますが、数が多いほど細かい音質調整ができると思ってよいでしょう。

よく「ドンシャリ」といった表現を耳にすることがあると思いますが、あれはイコライザーで高域、低域を持ち上げ(ブースト)ている状態だと思ってください。
DJの方がグリグリやってるのはこのEQ(と同等の機能)の場合が多いですね。

さて、ミキサーに立ち上げた音楽ソースを聞く場合、通常は、ch1のパンは左、ch2は右にそれぞれ振り切って、ボリュームとEQのセッティングは左右同じ‥‥‥こうしておかないと正しく音楽を再生することが出来ませんので注意しましょう。

パンポットの活用方法

単に音楽を聴く場合は、パンポットは上記のセッティングにしておく必要がありますが、ここで紹介するのは耳コピならではのパンポットの活用方法です。

まずコレを聞いてください(まあ極端な例ですが)。
[file:shimamura-music:110905-05_TWIN SOLO_MIX01.mp3:sound]

ちなみにそうですイングウェイにインスパイアされてみました。ちょっとVOW WOW入ってるかなあ‥‥‥何言ってるかよくわかんない方、気配りは結構です無視してくださいお願いします。
ところでインスパイアって言葉は便利ですね。。。

・・さてこのサンプルではシンセのソロが左右でハモって演奏されています。通常の再生環境だと両方のフレーズが聞こえてしまいますので「どっちがどっち?」見たいな感じで間違ってコピーしてしまう場合が多いです。

こんな時はパンポットを活用しましょう。

ミキサーの1chと2chのパンポットをどちらも中央にすると、こうなります。

[file:shimamura-music:110905-06_TWIN SOLO_MONO01.mp3:sound]

これは左右の音が中央で混ざってモノラル状態になっています。
これだと音の分離がなくなってしまったので、ステレオの状態よりさらに聴き取りにくくなってしまいますね。

ではここで2ch(R)のボリュームをゼロにします。

[file:shimamura-music:110905-07_TWIN SOLO_Lch01.mp3:sound]

おーっ、左チャンネルの音だけが、中央で聞こえる状態になってでしょう?
シンセソロは片方しか聞こえなくなったので、ぐっと聴き取りやすくなったハズです。

今度は逆に1ch(L)のボリュームをゼロ、2ch(R)のボリュームを上げて聴いてみます。

[file:shimamura-music:110905-08_TWIN SOLO_Rch01.mp3:sound]

今度は右チャンネルの音だけが、中央から聞こえるようになり、シンセソロのハモリパートが聴きやすくなったと思います。

さてさて、最近の楽曲では、ここまで楽器の定位を左右に振りきってミックスされているというのはレアケース。
でも昔のビートルズの様に、ステレオ録音技術が誕生したばかりの1960, 70年代といった時代の音楽には「ドラムは左、ギターは右」のように極端な定位でミキシングされている曲も珍しくありません。
この手の曲の場合は非常に効果的な方法です。

こんなやつですね

※アコギは完全に右に振られてますね

いずれにしても、この方法で一定の効果は得ることができるので、ぜひ一度は試してみてください。

イコライザー活用方法

これは耳コピしたい曲をイコライザーを使って聴き易くする方法です。

これのコード進行を耳コピしてください。
[file:shimamura-music:110905-10_Dont Let it_03.mp3:sound]

どうでしょう?スゴーく気持ち悪いと思ったアナタは正常です。清々しさを感じた方は最近きっと何かありましたね?・・

さて、これは前回紹介したLet it Be風のピアノ・バラード・パターンに、ドラムとベースを加えてみたものですが、ピアノの右手は前回同様「C-G-C」と素直な和音を弾いております。
問題はベース音・・ここではわざと和音とぶつかる音に変えてみました。

この手の不協和音はあまり耳も慣れてないせいもあって、ベース音が聴き採りにくいんですよね。
しかもベースは6の超低音で弾いている感じにしてみましたからねよけいだと思います‥‥‥イヒヒヒ。

こんな意地悪フレーズにはイコライザーを使ってみることをオススメします。

イコライザーはパラメトリックとかグラフィックとか種類が色々あるのですが、ここでは面倒くさいことはすっ飛ばして今回はミキサーについている、つまみタイプのイコライザーを使います。
イコライザーについて詳しく知りたい人はwikipediaを見てくださいね。

DAW波形編集ソフトを使って原曲を再生している場合、プラグインと呼ばれるソフトウエア・イコライザーを使用することもできます。
でもコレって意外に即応性や俊敏性に欠けるので、ミキサー側のイコライザーを使ったほうが手っ取り早いと思いますです。

使い方のコツ

要は目的の楽器が目立って「聴きとりやすく」なればよいので、まあ「適当」ですねワタクシの場合。
ベースが前面に出るように、つまみをグリグリ動かしてみましょう。逆に言うとベース以外の音が引っ込んでもよいわけですね。

するとこんな感じになります
[file:shimamura-music:110905-11_Dont Let it_04.mp3:sound]

使っているヘッドホンとの相性もあるので一概には言えないのですが、ベースがぐっと前に出てきたと思います。
ここで左右のパンポットを中央にそろえると音はモノラルになりますが、さらにベースが聴き取りやすくなることもあるかもしれません。

[file:shimamura-music:110905-12_Dont Let it_05mono.mp3:sound]

というわけで、実はベースは C#-G#-C# と、右手のコードの半音上を弾いていたのですが、全体としては C(onC#) - G(onG#) - C(onC#) というへんてこなコード進行になります‥‥‥・
‥‥‥「意味を求めたってはじめらないよ」by チャップリン

いかがでしたか?先ほどパンポットの活用で紹介したシンセリードのハモりフレーズなんかも、イコライザーをかけるとさらに聴き取りやすくなったりするかもしれませんね。

次回は? あと予告編

というわけで今回はココまで。次回は1/2再生などのディープな耳コピテクニックなどをご紹介します。

先ほどのシンセソロがさらに聴き取りやすく‥‥‥
[file:shimamura-music:110905-15_TWIN SOLO_harf.mp3:sound]

ということでそれではまた、お楽しみに。

参考資料

イングウェイ・マルムスティーン

Odyssey

Odyssey

Vow Wow

サイクロン

サイクロン

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