島村楽器公式ブログ

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ピアノ再生物語「ピアノはこうして生まれかわります」第9回「修理7 ハンマーファイリング」

2010-08-04 追記
「ファイリング」の意味について、誤った内容が掲載されていましたので、修正致しました。


みなさん、こんにちは。5回目の登場となります、島村楽器ピアノセレクションセンター 調律師のハラキです。


さて第9回ピアノ再生物語、今回は修理7回目「ハンマーファイリング」についてご紹介させていただきます。

「ハンマーファイリング」とは?

まず「ファイリング」という言葉を調べてみました。

2010-08-04 追記

[名](スル)書類や資料、新聞・雑誌の切り抜きなどを、業務に役立つように分類・整理すること。

このように、形を整えるという意味を持っています。
つまり「ハンマーファイリング」とは、ハンマーの形を整える作業のことをいいます。

1 …をやすりでみがく;…をやすりで削り取る*1;…をやすりで削って作る;[V[名][形]]…にやすりをかけて…にする

このように「やすりをかける」という意味をもっています。つまり、「ハンマーファイリング」とは「やすりをかけて形を整える」作業のことをいいます。

ハンマーは弦を叩きます。ですので弦があたる部分に「弦溝」という弦の跡が付きます。

使用頻度が高ければ、この弦溝が深くなっていきます。あまりに深くなると、ハンマーのブレや雑音の原因となります。
それだけではなくフェルトの表面が潰れてしまい、こもったような響かない音になってしまいます。

このように、ハンマーフェルトはピアノの中で最も消耗の頻度が激しいパーツのひとつです。
そこで「ハンマーファイリング」という作業が登場するわけです。ハンマーフェルトを削り内側の面を出すことで弦溝を取り、新しい表面をつくります。

では、作業を始めましょう。

ファイリングには紙やすりを使用します。弦溝の深さによってペーパーの番手(目の粗さ)を換えて作業を行います。
これが紙やすりです。

紙やすりにも実に様々なメーカー及び種類がありますので、技術者の中には自分ならではのこだわりのペーパーで、という方もいます。
ペーパーはハンマーの幅に合わせてカットし、細長い状態で使用します。

まずは、粗い目の番手で深い弦溝を取り除きます。打弦点が1番高い位置となるように削っていきます。


ハンマーフェルトは羊毛でできていますので、削ると綿のようなふわふわの削りかすが出てきます。
そのため、ファイリングをすると鼻がムズムズ・・・ハックション!
こんなことにならないように、ファイリング時はマスクを着けるスタッフが多いのです。

上の写真、真剣な眼差しで確認中です・・・。
打弦点と位置がズレたり、平面が出ないとハンマーが同じ強さで弦に当たりません。そうすると、力がうまく伝わらず音が鳴ってくれません。
ハンマーフェルトの上下膨らんでいる部分のバランスも、均等にします。前・横など各方向から見て、角度や位置がずれていないか確認します。

次に細かい目の番手に替え、固定させたペーパーで形を整えながら仕上げます。

こうすると形だけではなく、触り心地も滑らか、色も真っ白で美しくなります。

仕上げにコテを当て、ペーパーで削ったときのケバケバした部分を取り除きます。
これによってツルンとしたハンマーとなり、摩擦が軽減されます。

この作業を88鍵分全て行うのですが、高い音域に使われているハンマーは、ハンマーそのものが小さく、フェルトの厚みも多くはありません。
そのため削りすぎてしまうと、ハンマーは綺麗になってもフェルトが薄く木の部分との感覚が狭くなってしまい、ハンマーフェルトの役割が果たせなくなってしまいます。
一旦削ってしまったらもう元に戻すことはできませんので、極めて慎重に行います。
全体を通して均一に仕上るためには、低音から高音までの状態を把握し、最初の段階でどの程度ファイリングを行なうか見極めて始めることが大切なのです。

そして88鍵分行い、完成です。


おしまい

いかがでしたでしょうか?
ハンマーは弦を叩き音を直接鳴らす部分であり、音色の決め手ともなる重要な部分です。

ハンマーファイリングをすることで、こもったように感じていた音にもハリが生まれます。
音が変わると、弾き心地も違って感じますよ。

次回の第10回ピアノ再生物語は、私ハラキに代わって調律師カワイが、修理の8回目「白鍵上面交換」についてご紹介させていただきます。
鍵盤はみなさんがピアノを演奏する時に1番触れる部分ですよね。ご存知でしたか?白鍵は交換できるのです!

では、また(・ω・)

島村楽器ピアノセレクションセンターについて

ピアノセレクションセンターは、専用工房を併設したアコースティックピアノ専門のショールームです。
フロアには、新品・中古ピアノ、アップライト・グランドピアノを合わせて常時100台以上を展示しております。また、専用工房ではピアノの調整・点検・修理を行い、アフターフォローにもお応え致します。

*1:through, away, off, down

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