島村楽器公式ブログ

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ピアノ再生物語「ピアノはこうして生まれかわります」第8回「修理6 張弦」

皆さんこんにちは!島村楽器ピアノセレクションセンター ピアノ調律師のカワイです。
今回は力技!ピアノの張替えをご紹介させて頂きます。

前回の記事はこちらです♪

まずは張に使用する特殊な工具のご紹介です。

チューニングピンポンチ


チューニングピンを打ち込む時に使用します。

こき下ろし


の巻口を整えるのに使用します。

三つ割・こき上げ


の間隔を整えるのに使用します。

チューニングハンマー


チューニングピンを回す工具です。

コイル巻き


チューニングピンのを巻きつけるのに使用します。

それではを張っていきましょう!

ちょうど当ピアノセレクションセンターが誇るベテラン技術者がグランドピアノのオーバーホールの最中で、巻き線部分のを張る作業を行っておりましたので、その画像と共にご説明させていただこうと思います。
最後に私が行ったアップライトの張の様子(動画)もありますので、そちらもぜひご覧下さい。

の張ってある状態(完成形)はこちら。この仕上がりを目指します!

チューニングピンというを巻きつける部分(シルバーのピン)がフレームと呼ばれる鉄骨部分(ゴールド部分)に打ち込まれているように見えますね。
実際はフレームに打ち込まれているのではなく、フレームの下にある木の板(ピン板)に打ち込まれて固定されております。
チューニングピンは一見短いように見えますが、下の写真のように打ち込まれている部分も含めると結構長いのがわかります。
この見えない部分での張力を支えて音程を保っているのですね。



チューニングピン全身像。めったに見られません。



チューニングピンを打ち込む前の状態はこんな感じ。


まずを用意します。は直接手で触ってしまうと手の油が付着し、後に錆の原因となりますので必ず軍手を着用します。
そして、巻線の場合は片方が輪になっておりますので下写真のように引っ掛けます。


引っ掛かりましたらその延長線上にある駒ピンという部分にを引っ掛けます。


次にをそのまま手前(鍵盤側)まで持ってきて、アグラフという部分の穴にを通します。


通したらをちょうど良い長さにカットします。の長さはピンにを何回巻くのかによっても変ってきます。
又、まだがたるんでいる状態ですので、を張った状態で丁度良くなるようにここで長さを見極めてカットするというのは判断がとても難しいです。
しかしベテラン技術者は、今までの経験によって「ちょうど良い長さ」というのが感覚でわかるようになるのだそうです。
私も日々修行中でございます。


をカットしたらチューニングピンに巻きつけていきます。

次にの巻いてあるチューニングピンをハンマーで打ち込みます。
このハンマーがずっしりと重く、筋トレには最適です♪
打ち込んだ後に「こき上げ・こき下ろし」という道具を使用しての巻き口を整えます。


最後に調律をして完成です!!

を張ったばかりは音がとてもよく狂うので、落ち着くまで最低2〜4回はチッピング(音程を上げる作業)と調律を繰り返しおこないます。

こうしてピアノの張は完了になります。結構大掛かりな作業ですね。
必ずしも交換と供にチューニングピンまで新しく換えるという訳ではなく、チューニングピンは打ち込まれたままでのみを交換する場合もございます。
アップライトののみ交換の動画もございますので、ぜひご覧下さい♪


いかがでしたでしょうか。PSCの工房ではこのようなピアノの修理・オーバーホールも行っております。
タイミングが合えば見学もできますので、ぜひお気軽にご来店ください♪

次回は調律師ハラキが「修理7 ハンマーファイリング」をご紹介致します。お楽しみに♪♪

島村楽器ピアノセレクションセンターについて

ピアノセレクションセンターは、専用工房を併設したアコースティックピアノ専門のショールームです。
フロアには、新品・中古ピアノ、アップライト・グランドピアノを合わせて常時100台以上を展示しております。また、専用工房ではピアノの調整・点検・修理を行い、アフターフォローにもお応え致します。

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