島村楽器公式ブログ

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調律師の必需品大公開「第5回 整調工具特集1 定規編」

みなさん、こんにちは!
好きな音楽ジャンルは『ミクスチャー』系!!
カバンの中はいつも『グチャグチャー』!

ドラえもんの四次元ポケットと同じようにいつも肝心な時に肝心な物がなかなか見つからない。。。

整理整頓が大の苦手なピアノ調律師ナカウチです。

私の工具カバンの中は、自分以外は把握不可能なほどゴチャゴチャ、混沌としています(笑)
自分の整理整頓はしているつもりなんですが、ピアノの調整に必要な工具があまりにも多種多様で、上手く事業仕分け(?)ができていない感じです、、、。

そんな私と正反対な同僚の調律師ウチヤマは、整理整頓がとても得意なようで。。。前回のウチヤマの記事「工具ケース」でも、その片鱗が窺えましたね。

私も記事を読んで初めて「へ〜、工具の整理整頓ってこうすればキレイにできるんだ」と感心しました(決して仲が悪いわけではないですよ、、、笑)。
さらにそこからネタのヒントを貰いましたので、今回ナカウチからは『整調工具』についてご紹介させていただきます!
ところで、『整調工具』なんてサラッといってしまいましたが、読者のみなさんは、何のことだかさっぱりですよね?

カンタンにいえば、ピアノの弾き心地の調整作業(整調)を行う際に使う工具のことです。

調律は”音の高さ”、整音は”音質”、整調は”弾き心地”の調整を意味する言葉として使い分けけられています。

音の高さも音質も、見ることも触ることも出来ないものですが、弾き心地は触れますし、目で確認することもできます!
一般の方にとっては、調律や整音よりも理解しやすいピアノの調整作業かもしれませんね(笑)。

そんな『整調』ですが、ピアノの中のどこにどうなっていて、何をするのかを詳しく解説していくとあまりにも途方もなく長い記事になってしまうので、今回はあくまで整調「工具」の紹介だけにさせてください。m(_ _)m そのうち、整調「作業」についても詳しくご紹介させていただきたいと思います!!

さて、整調工具とひと言で申しましても、数はとにかく沢山あります!
形がユニークなもの、一見すると使い方の想像がつかないもの、調律師が自作、加工して作る工具、ただのゴミと見まごう工具などなど(笑)。

とにかく種類が多いので、今回はそんな整調工具の中から、

『定規』として使われる物だけを集めてみました!

極々普通のアルミ製スケール


上の写真は、誰もが一度は見たことのあるいわゆるフツーの定規です。長くなくても大丈夫です。大事なのは、丈夫で長持ちすること!『整調』では、毎回必ず登場します。目盛りが薄くなってくるまで使います!0.5mmまでしか目盛りがないのに、その間隔から0.1mmまで読み取って使うこともあります(笑)

ならし定規


目盛りもなにもない、ただただ真っ直ぐであることを要求する定規です。
鍵盤の上に添えて、鍵盤の高さを揃える時に使います。ちなみに、鍵盤の高さを揃え平らにならす作業のことを、「鍵盤ならし」といいます。

使用例 「ハァー( ´θ`)ノ 白鍵のならしは時間がかかるよなぁ〜」

黒鍵ならし治具


黒鍵ならしをする時にだけ使います。黒鍵は白鍵の上面から高さ12mmが標準となっているため、この治具も高さが12mmになっているんです。

元々は定規ではなく、ピアノのフレンジという部品だったのですが、黒鍵ならしをするのにちょうどジャストサイズだったので黒鍵ならしの12mmを測りたい時にだけ使っています。 

鍵盤ならし治具で作業中


あがき定規


ただの四角い木片ではありません。各辺の角度・厚み・素材まで考え抜かれた、究極の定規です。鍵盤の沈む深さを揃える時に使います。

あがき作業風景

上の写真のように使います。ちなみに、鍵盤の沈む深さを揃える作業のことを『鍵盤あがき』といます!
何故、あがきなのか、、。諸説ありますが、あがき調整をしている仕草が、カリカリと足掻いているように見えるからだという説もあります。

ストローク定規


普通の定規では測りにくい距離を測る時に使います。金属製(真鍮性)や木製のもの、使わなくなったピアノの低音を加工して自作したものなど、使う技術者によって様々です。
からハンマーの打距離を測る時にも使います!
変わった形をしてますが、一つのストローク定規にいくつもの機能が盛り込まれている、多用途定規です。

ピアノ調律師にとっての定規、そして一番大切なものさしとは。。。

いくつかの定規を紹介させていただきましたが、
世間一般の目盛り入りの定規の使い方と、ピアノの中での使い方とではちょっと違うことがお気付きいただけたでしょうか?

なにを何ミリ(基準寸法)にするかということより、作業効率や精度を上げるための道具として特化しているモノが多くあります。

そんな数あるものさしの中でも一番大事なものさしとは‥‥

ピアノを杓子定規に扱わない、曲がらない信念と観察力です。
ピアノは自動車などと同じように、工場で生産される工業製品のひとつではありますが、美術工芸と同じようにアトリエ(工房)で職人が1つずつ丹念に創りだす芸術品であるともいえます。
ピアノにも、人間と同じ様に1台1台個性があります。芸術品であるピアノという楽器をメンテナンスマニュアルに従って全て同じに調整するだけでは、ピアノの真の実力を引き出すことはできません。
1台1台としっかり向き合って、じっくり観察して、そのピアノにとってのベストな状態にまで仕上げていくという曲がらない信念が大切なのです!
あくまで、アナログに、そして、臨機応変にが重要です。
目に見えるマニュアルに刻まれた数値だけに捉われずに、ピアニストとそのピアノに最適な弾き心地を探求する‥‥そんなところがこの『整調』の醍醐味です。

整調工具として使われる定規たちはそんなピアノ調律師の手助けをしてくれるヒミツ道具なのです。

いかがだったでしょうか?
まだ紹介できていない整調工具がかなりたくさんありますので、引き続き次回も整調工具特集をお送りいたします。
まだまだ出てくる様々な工具たちの登場をお楽しみに!!

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